プロローグ
――闇の中で、一人の少年が膝をついていた。
彼の肩は絶え間なく震えている。手のひらに伝わる冷たい土の感触は、胸に渦巻く激しい怒りを、微塵も和らげることはなかった。
「どうして……」
少年は拳を握りしめた。力を入れるたびに爪が手のひらに食い込み、痛みが少しだけ現実に引き戻す。
「どうして……父さんも、母さんも……あんな……」
少年の隣に静かに佇む女性は、彼の問いに一切応じなかった。無機質な瞳に感情の色はなく、ただ震える彼を見つめ続けていた。
「復讐してやる……」
震えた声には、深い憎悪が込められていた。その言葉が、まるで闇に溶け込むように響く。
女性の声が、静かに闇の中に響いた。
「ユミト様……」
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カルタナス王国は、喜びと希望に満ちていた。
首都「カルタス」の空は高く澄み渡り、降り注ぐ陽光が王城の白壁をまばゆく照らしていた。王と王妃の待望の第一子誕生を祝う鐘の音が、街中に鳴り響いていた。
「王子様が誕生されたぞ!」
歓喜の声が街中にこだまする。市場では色とりどりの花が飾られ、音楽隊が街角で陽気な調べを奏でていた。人々は互いに笑顔を交わし、酒場では杯が高く掲げられる。老若男女が国の未来を担う王子の誕生に心からの喜びを分かち合っていた。
王城の中では、誇り高き王と優雅な王妃が、生まれたばかりの小さな命を大切に抱いていた。王妃は、微笑みながら赤子の小さな手を握り、その柔らかさに目を細めた。
「この子はきっと、カルタナスに繁栄をもたらすでしょう」
王の深い声が静かに響き渡る。彼はそっと赤子を見下ろし、愛情を込めてその小さな顔に触れた。小さな息遣いを感じながら、未来への希望を胸に抱いた。
「ユミト……希望を意味する名前だ。この子が、我が国の未来を照らす光となってくれるだろう」
王と王妃は視線を交わし、二人の間に温かな空気が流れる。彼らの瞳には、未来への期待と共に、家族を守りたいという強い意志が宿っていた。