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1 , 一花

投稿するのが、初の新人作家です。


元々はゲームのシナリオとして、考えておりましたが、1つの思い付きで、投稿する運びとなりました。


小説としての試みが初ということもあり、色々と稚拙な部分があるかと思われますが、どうかご理解ください。


 放課後のチャイムが鳴る。フェンスに掴まりながら、下を見降ろすと、下校中の生徒たちが規則性を持つように散っていく。生徒たちの声に煩わしさを感じながらも、私は目を瞑り、高鳴る自身の心臓の鼓動を落ち着かせようとする。


 私は、人生に飽きていた。いつの間にか過ぎていく時間、いつの間にか消えてゆく人間関係。この世界は、私にとってあまりにも出来過ぎていて、あまりにも退屈な空間だった。


 はじめは、死にたいなどと考えることはあれど、行動に移すだけ無駄だと考えていたのに、いつの間にかここに立っている。衝動性とは、恐ろしいものだと、改めて実感してしまう。


 もう一度、自身の気持ちを落ち着かせ、気持ちの整理をする。気持ち悪いくらいの優しいそよ風が、撫でるように私の髪をなびかせる。


 私は、雑念を払うように、目を瞑る力を入れて、覚悟を決める。



 その時だった。



 背後から強い力でドアを開ける音がした。


 ここは学校の屋上である。放課後に来る人間などごくわずかであり、この学校ではそういったうわさを聞かない。また、大きな音を立てたということは、それすなわち急いで来たということなのだろう。つまり、おおよその目的は分かったつもりでいた。


 一花「誰?私のことを止めようとしに来たのだと思うのだけれど、生憎、私はもう腹をくくり終わってるの。」


 相手は、私の言葉を無視して、カツカツと足音を立てて近づいて来ては、男の声で口を開く。


 ???「大丈夫ですよ、貴方が死のうが死なまいかは、さほど重要なことではございません。ただ、わたくしは貴方との契約を迫らせていただきたく、こちらに参った所存です。」


 私は、相手の言っていることに対して、困惑をしてしまった。この状況で自殺が重要ではない?契約を迫ってくる?


 相手は、話を続ける。


 ???「単刀直入に申し上げさせていただくと、貴方には、魔法使いなるものになって頂きたいのです」


 何が何だか分からなくなってきた。仮に、私が飛び降りるのを止めるにしても、打つ手段が少々強引すぎるのではないか。思わず私は、振り向いてしまう。


 一花「あなた、ふざけるのも大概に...」



 振り向いた先には、誰もいなかった。



 いや、いなかったというのは少し語弊があるかもしれない。正しくは、そこに一つの飴玉が落ちていた。


 先ほどから聞こえる声は、続けて話をする。


 ???「その飴玉を食べると、契約は成立となり、貴方は晴れて魔法使いの適性を得るわけです。」


 声は淡々と言葉を発している。そんな状況に、思わず私は、声の主に質問をする。


 一花「魔法使い?それって、所謂魔法少女ってこと?というかこれ、何かの撮影?それとも...」


 声は私の話を遮るかのように、口を挟んだ。




 ???「それに、貴方今、殺されそうですよ。」




 途端、背後から寒気がした。


 このままでは殺されると直感する。いや、元々は死ぬためにここにいるのだが、自殺と他殺では訳が違うし、何か癪に障る。そんなくだらない理由だが、私にとっては重大なことだ。咄嗟に足が動き、フェンスの内側へと戻り、手は飴玉に伸びる。


 私は、飴玉を口に転がした。仄かに甘味があり、結構イケるな、などと考えていたら、一瞬、目の前が真っ暗になり、再度、目に景色が飛び込んでくる。


 目の前には、巨大な目玉の化け物がいた。


 一花「うげっ!!」


 思わず、声を発してしまう。


 瞬間、この目玉の化け物がさっきの寒気の正体だと気づく。化け物は、まるで食べ物を嗜めるかのように私を見る。


 一花「ちょっと!?飴玉を食べたけど、この後どうすればいいの!?」


 ???「内なる希死念慮を放出するように、貴方様の身体から、血液をお出しください。以上の手順を踏むことで、貴方様は魔法使いと変身することになります。」


 えらく抽象的な表現だが、何故だか意味が伝わった。飴玉を食べた影響だろうか。しかし、今は考える余裕などない。


 私は、授業終わりに筆箱にしまうのが面倒でポケットの中に入れておいたシャーペンを取り出し、手の甲に突き刺した。


 その瞬間、吹いた血飛沫が、身体に纏うように張り付いてきた。熱いようで、寒いようで、全身から鳥肌が立つような感覚に取りつかれる。


 気が付くと、私の服が、ピンクのドレス、所謂魔法少女といったものに変わり、手には武器であろう大剣サイズのガラスペンが握られていた。


 一花「うわぁ...。えらくゴテゴテとした服だなぁ...。」


 そんなことを呟いていると、隙をつくように、化け物は私めがけて攻撃を仕掛けてきた。


 一花「うわっ!?」


 私は、反射的に攻撃を避けるため、ジャンプをした。それは高く、これまでに類を見ないほどに。


 感動しているのも束の間で、次の攻撃が飛んでくる。


 けれど不思議なことに、相手の攻撃が見える、見切れる、それほど痛くない。


 ???「やはり貴方を見込んだのは、間違いなかったようですね...。」


 外野が何か言っている声が聞こえるが、今はただ、化け物を相手にする。


 避ける、避ける、刺す...。

 避ける、避ける、蹴る......。

 避ける、避ける、刺し乱れる.........。


 ペースは乱さずに、ただ、この戦いに集中をする。


 いつの間にか、相手はかなり弱っている。もう一押しで倒せるのかもしれない。そう考えると少し頬が緩んでくる。


 思えば、自身が優勢になるといったことは、この方初めてだったのかもしれない。


 だからこそ、私は今までにない優越感に浸るように感じた。


 楽しい。ずっとこの時間が続いてほしい。だからこそ、もう少し生きたい。



 "生きたい"



 そう考えたとき、急に体が重くなったのを感じた。


 ???「しまった!?生きたいなどと考えてはなりません!希死念慮を考え続けるのです!」


 紙のように宙に浮いていた身体は、急に鉄球のごとく重力を感じ、落ちて行く。地上には、化け物の触手で生成されてる針山ができており、これは流石に助からないかな、と諦めたその時だった。


 「危ないっ!!」


 途端に私の身体は抱きかかえられ、抱擁されながら学校の屋上へと着地する。


 助けてくれた人物は、ボブカットのエメラルドグリーンの髪色と目、純白のドレスに身を包み、手には金色に輝く剣と禍々しく紫に輝く剣を、両手に携えていた少女だった。


 一花「...ってて。...ありがとう...ございます...。あの...あなたは...?」


 少女「...この状況での突出した個人の模索は好ましくない、今は戦いに集中するんだ。」


 そういうと、彼女は腰を抜かした私に手を差し伸べて、私を立たせる。


 そして、彼女は右手の剣の剣先を、相手に突き出して言う。



 少女「さあ、セカンドステージを始めようか!!」



 そんな、恐らくは決め台詞だろうことを言うと、彼女は目にも止まらぬ速さで化け物に近づき、予測できない軌道ながらも、適確に切り付けていく。


 少女「昨日は仕留めそこなったが、今日こそはケリを付けさせてもらうッ!」


 私も負けじと、周りの触手を不器用にも破壊していく。


 何も考えないように。ただ、死を受諾するように。


 淡々と攻撃しているうちに、時間と比例するように化け物が弱っていくのは明白だった。


 化け物は自身の重心を保てなくなったかのように、弱点であろう目をかっぴらく。


 その隙を逃がさないかのように、彼女は声を大きくして言う。



 少女「とどめだッ!輝剣・セイクリッドエクスカリバーッッ!!」



 そう定番のような謎の呪文の言葉を発すると共に、彼女の持つ剣に神々しい光が宿り、それを化け物の目玉に力いっぱい突き刺す。


 途端に、化け物は光の粒子となって、風に乗せられ消えていった。


 一花「終わった...?」


 溜まった疲れが一気に現れ、その場でまた腰を抜かしてしまう。


 そして、一瞬視界が暗転し、気が付くと衣装がいつもの制服に戻っていた。


 そして、周りを見上渡しても、助けてくれた彼女らしき影は一つもなかった。


 ???「お疲れ様です。貴方様なら、この力を使いこなせると信じていましたよ。」


 後ろからは、一番最初に聞いた、まだ顔も知らぬ男の声がする。


 私は思わず振り返る。


 ヨウセイ「初めまして、契約を結んだことにより、今日から貴方様をサポートさせていただきます、ラルドシア様の使いの妖精である、ヨウ・セイと申します。」


 そこには、中年太りをした、スーツ姿のおじさんの姿があった。しかし、そんなことはどうでもよい。そんなことよりも...


 一花「いやっ、名前ダサすぎない!!??」


 ヨウセイ「何を仰いますか!?この名前はわたくしの主人である、ラルドシア様が直々に下さった名前ですよ!?」


 一花「...だとしても、そのまんま過ぎるっていうか...そのラルドシアとかいう人、絶対二秒くらいで考えた名前でしょ。」


 ヨウセイ「パッと出てくるような名前。つまり私のことを身近な存在だということの裏付けになるようにしたということですね。」


 ああ言えばこう言う。なんだかこの話題を続けることが、面倒くさくなってきた。というかそんなことはどうでもよい。それよりも...


 一花「......ところで、結構滅茶苦茶に暴れちゃったけど、周りにはどう説明するのよこれ。」


 ヨウセイ「ご心配なく。貴方様が戦っている間、私は周りへの認知操作を施しました。」


 一花「へぇー。って、サラっと凄いことしてない!?」


 ヨウセイ「ご安心ください。貴方様のような魔法使いに対しては、この能力は機能いたしません。だからこそ、貴方様のような適正者が必要だったのです。」


 一花「そう、それならアンタは戦えないわけなの?」


 ヨウセイ「わたくしには能力こそありますが、力はありません。こういう時こそ、適材適所という言葉がお似合いでしょう。そのための役割が貴方というわけです。」


 確かに理にかなった考え方だ。人それぞれに役割があるとは、まさにこのことだ。それに、私ほどの希死念慮が溢れ出るような、適材人物はそうそういない。そんなことを考えていると、不意に体の重心がふらつき、倒れそうになる。


 一花「なんか、今日は色々あり過ぎて、疲れた。帰ってもいい?」

 ヨウセイ「魔法使いに関しての質疑がなしということは、契約成立ということでよろしいでしょうか。」

 一花「もうそういうことにしていいわよ。...まあ、能力についても、粗方理解はできたし、自殺前の退屈凌ぎにしては面白そうだしね。」

 ヨウセイ「では、今後とも度も、よろしくお願いいたします。明日も期待してますよ。」


 明日も、この調子が続くとなると、想像だけで疲れがドッと来る。だが、悪い気はしない。少なくとも、今までの平凡な日々と比べたら。







 帰り道は、普段と変わらず、いつも通りに道をたどる。

 そしていつものように、家に着き、家のカギを取り出し、ドアに差し込む。

 しかし、何か違和感がある。そう、家の鍵が開いているのだ。私は恐る恐る、ドアを開け、家に入る。


 「ああ、帰ったか。お帰り。」


 一瞬私はその場に凍り付く。そこには父がいた。いつもは私がいないときに帰ってきては、私が帰ってくる前に家を出る。父の姿を見るのも、声を聞くのも、何年かぶりだ。


 そう、私が返しに困っていると、父は無表情で続けて言う。


 父「...風呂と飯は用意してある。好きに食べてもいい。俺はもう出る。」


 そういうと、父はスーツ姿で家から出ていってしまった。何が起こったかわからなかった私は、その場にへたり込んでしまった。


 ヨウセイ「...お父様とは、関係が良好ではないのですね。」

 一花「良好かどうかって言われたら...まあ、そうね。私が物心つく頃には、お母さんはいなかったし、お父さんと顔を合わせたことがあったのは、数えられるくらいしかなかった。いつの間にかお金やら、冷蔵庫に食べ物が補充されてたりして、面向かって話したことがない。それが私の日常よ。」


 ヨウセイは、同情からか、無言で私の話に付き合ってくれている。


 一花「...ごめん、今まで誰にも打ち解けられることがなかったから。けれど、スッキリした、ありがとう。......ていうか、何さらっと家に居座ってんの!?」

 ヨウセイ「ツッコむタイミングにしては、少々遅すぎじゃありませんか?ですがご安心を、私の姿は魔法使いへの適性のある人物にしか見ることはできません。」

 一花「ああ、なら安心かぁ。じゃなくて!そんなこと認知操作ができるんだから、そういったこともぬかりないだろうとは分かってたわよ!」

 ヨウセイ「そうでしたか。さすがは貴方様、理解が早くて助かります。」

 一花「そうじゃなくて!着いてくるにしても、部屋の中まで着いてくるのは違うじゃん!それに、私は少なくとも高校生だよ!?」

 ヨウセイ「ご安心を。わたくしには性別の概念がありませんので。それに貴方様の年齢や性別については、微塵も興味ありません。」

 一花「アンタがどう思おうがどうでもいいわ!問題は私のプライバシーをくれってこと!」

 ヨウセイ「貴方も大概、面倒な性格していますね。しかしながら、貴方は魔法使い、いつ奴らに襲われるかなんてわかったものではありません。どうか、お近くに留まらせてください。」

 一花「あー、それなら仕方がないかぁ。...あ、じゃあお父さんの部屋を使いなよ。どうせ私がいるときは帰ってこないんだし。」


 ヨウセイは少し悩む仕草をしたが、すぐにこちらに向き、笑って言う。


 ヨウセイ「了解しました。それでは、何事もなければ、また明日。」


 そう言い、彼は部屋を出ていき、隣の部屋の開閉音が聞こえる。


 なんだか、今日はこれまでに類を見ないほどに疲れた。しかし、楽しかった。これから、私の生活に色が出ると考えると、好奇心で胸がドキドキしてくる。


 ベットに飛び込むと、疲れによって、金縛りにでもあったかのように体が動かなくなる。そのまま自然と瞼が閉じてゆく。


 私は久しぶりに頬が緩んだまま、就寝した。

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