第七十一話 黒武者と道化
「ニョロニョロニョロー♪」
とある島の薄暗い森の中、道化は愉快にステップを決める。アメリカの殺人ピエロの如き珍妙で恐ろしい姿で歩くその様はヤケに似合っている。花柄の研究服のせいなのだろうか、景色に同化して見える。
そんな道化はとある場所にて立ち止まった。
そこは血の海
あたり一面に広がった、真っ赤に染まった鏡のような血のとごった生々しい死体の数々
「うっわー血でいっぱいやなー怖いニョロー」
その光景を見て立ち止まった道化に声がかかる
「何のようだ」
「なんや、そんなとこに居ったニョロね。黒武者さん、ワイは宿依死男っちゅうんやが、黒武者さんのお手伝いがしたいんや。」
道化はふざけた内容をひょうきんな声で黒武者へと提案する。
「無用だ。既に使いを一人遣わしている。お前のような部外者が介入する余地などない。早々にここから立ち去れ、でなければその面妖な仮面もろとも首を断つ。」
血の鏡から黒武者が鞘に手を置きながら身を乗り出す。
「怖い事言い張りますな。黒武者さんのやりたいことは割れとるんやで?その手伝いをしたいそんだけなのになー」
相も変わらず道化はそこを動かず、ただ平然と黒武者の前に立つ
「しつこいぞ道化……」
黒武者はその鞘に手を置き、居合斬りを行う。
その刃が当たりかけるその瞬間。その刃を親指と人差し指で挟み込むように掴み取ると、ドスの効いた声で道化は語る。
「黒武者、お前の目的は不老不死やろ?ワシを殺したところでお前の目的は叶わへんで。それにや、今のワシならこうやって、簡単にお前の攻撃止められるんやで?」
黒武者は掴まれた刀をしまい込む
「この前お前が出会ったあの四人組も同じや。今のお前じゃ勝たれへん。お前の刀も術も搔い潜られて負けるのがオチや。」
「何が言いたい」
「せやから、ワシがお前のことを手伝ったると言っとるやろ。安心しろや、ちょっぴりお前の体をいじくるだけや。お前の術を使わんでも不死になれるくらいにはなァ…」
「我が身を妖に堕とせと…?…断る」
「なんでや?術を使うてる時点でお前はもうカタギやない。しっかり妖の部類へと堕ちとるんやで??」
黒武者は再び刀を構えて宿依へと向ける
「勝敗はさっきので決しておるのが分からへんのか?素直に体いじらせろや。」
「先ので理解したのはこちらもだ。」
「あ゛ァ?」
「道化…いや、宿依死男。貴様との手合わせを望みたい。貴様が勝てばその策に乗ってやろう。」
「ギョーギョギョギョ!!ワシと戦ろうってか?ええで、やったるわ!」
「では、行くぞ!」
[黒武者
日本刀(80)→成功(50)]
如月の放った居合が宿依の首元へと向かうが
[斧(70)→成功(65)]
斧のようなもので居合を受け流す
「それは、西洋の…」
「ほーん、気づき負ったか。せやけど、気づいたとしてももう遅い。ワシはお前を殺したくはないからなァ、こいつを使うかァ…!」
宿依はその斧らしきものに紫ががった液体を満遍なく、べっちょりとつけて黒武者へと切りかかる。
[斧(70)→成功(60)]
「!?」
[回避(40)→失敗(89)
ダメージ判定1D8+2+1D4=11
対抗(55)→成功(38)]
その斧に付着した何かを警戒し、回避を行うが、黒武者はその斬撃を受けてしまう。その際に液体が体の中に入り込む。そうすると、黒武者は少しよろめきながらも姿勢を直しながら宿依へと問いかける。
「なるほど、何を塗っていると思っていたが蛇毒か…」
「ようわかったな。こいつはけいれん、呼吸困難を引き起こすコブラ毒や。いくら対抗しても、呼吸困難とまでは行かんでも、けいれんは起こるでェ!ギョギョギョギョ!!」
道化は笑う、しかし、黒武者は受けた毒を顧みずに攻撃を続けた。
勝ち目などなくとも
終わりなどなくても
それでも黒武者は戦い続ける
あの時のように
あの頃のように
ただ妖を葬る、一人の戦士のように




