第六十一話 我、人の最高到達点なり。
悟「これが、仮面ライダー…」
不思議と全身に力が迸る。まるで今なら人間の範疇なら何でもできそうな全能感と直感的にわかる最善の行動。
腰に備え付けられていたカードホルダーから一つのカードを取り出し、ドライバーの上へとかざす。
《スキャン!アプールヴ!SMC:治療!》
ドライバーがそう告げると、月島獣子を中心とした薄緑色の魔法陣が展開され、それが下から上に通り過ぎると、通り過ぎた個所から徐々に傷口が治療されて、人間態の状態になる。
[回復 2D6→9
月島 HP6→15]
悟「伊角、月島ちゃんを頼む。」
伊角「ああ。変身できたんだ、しっかり使いこなして見せてくれよ?」
治療が完了すると同時に月島は目を覚ます。
それを見た伊角はすぐさま月島のところに駆け寄り抱えて戦線を離脱し、火が燃え広がっていない少し離れたところに月島ちゃんの身を置く。
月島「う…うーん……ここは…?あれ、私傷が癒えて…る?」
伊角「どうやら、悟は上手くいったみたいだね。」
月島「上手くいったって…?」
動こうとする月島を伊角は止める。
伊角「だめ、今は悟に任せるんだ。」
そう言って二人は悟たちの方を見た。
悟「さっきはアレだったが、最初に言っておく。俺はかーなーり、強い!行くぜ行くぜ行くぜ!!!」
俺はグールに接近して思いっきりぶん殴る。
グールは反応が遅れ、ガードが間に合わずにそのまま被弾し、後ろに飛ぶのを抑えていた。
悟「なるほど、パンチ力も上がってんな。というか、人間の時とそこまで変わらないのか?」
そんなことを口走っているとグールが炎を纏った拳で殴りかかる。
俺はとっさに腕を前にクロスさせてガードする。
拳に纏わる炎の熱がこちらまで伝わってくる。
悟「熱っ!?でも、何だ?この感じ?確かにノックバックはするけど、痛みが少ないというかほぼ無いぞ?これなら!オラッ!」
俺はグールに蹴りを入れると同時に距離を離す。
「それじゃ次はこいつを試してみるか!」
俺は音器を取り出して、カードホルダーから白紙のカードを取り、音器にかざすとカードの中に音器が吸い込まれカードになる。
《スキャン!アプールヴ!WMC:ミトスガンブレイド!》
そして再びそれをドライバーにかざすと、全体的に大きくなり、銃剣というより、銃口が付いた大剣のような形へと変わった。
悟「おお!すっげぇ!」
俺はガンブレイドを手に取り、グールへと向かう。
グールは応戦するように火炎弾を飛ばして牽制する。
だが、グールの火炎弾は弾くまでもなく、体で受けても支障が出ないほどに威力が減衰していた。
グールの至近距離まで近づき斬りかかる。
一撃一撃と入れていきグールも手が出せないと思っていたがしかし、いくら攻撃しても、その攻撃はやつにはあまり効いていないように感じた。というか、剣自体が届いていないように見える。
悟「あれ?グールには火器と飛び道具の耐性ぐらいしかなかったはず、何故効かない?こいつは……肉体の保護か!?厄介なことしやがる!だけど、今の俺なら突破できるはずだ!オラオラオラオラ!!!」
肉体の保護は消費したMP×d6分の物理装甲を得る呪文。なら!そのMPが尽きるまで、斬って斬って、斬りまくってやりゃぁ!
連続して斬り続けた結果、肉体の保護による壁は消え去り、グールは逃げようと後ろに下がる。
悟「やっぱ、ライダーと言えば最後決めるのはこいつだよな!」
一枚のカードを取り出し、ドライバーにかざす。
《スキャン!アプールヴ!AMC:ライダーキック!》
ドライバーがそう告げるとともに、グールの足下に魔法陣が展開され、そこから無数の触手が手足を拘束し、グールの身動きを封じる。そして、キックまでの軌道を作るかのように空中にも魔法陣が展開される。
そこに俺は助走を付けて、一つ、また一つと魔法陣を潜り抜けながら、空中前転して遠心力を付け、グールに向けてキックを放つ。
悟「「セイヤー!!」」
キックはグールに直撃すると、グールは完全に意識が無くなり無気力な状態となった。その後魔法陣から出てきた触手たちがグールを魔法陣の中へと引き寄せ触手共々姿を消した。
悟「ふぅー。」
ベルトからスマホを取り出す。そうすると自然と鎧は離れ、消えていく。
それと同じくしてドッと疲れが全身を駆け巡る。
悟「アイム、たいあーど……」
意識が朦朧とし、俺は地面に倒れ込んで意識が闇へと落ちていく。
伊角「どうだい?悟の容態は?」
晩野「別に特段と悪い訳では無い。シナリオ案件ではないと聞いたからな。であるのなら、ただの疲労ということになる。」
マリク「オイオイ、死んじまうんじゃねぇのか??」
狭間「マリク!お前は黙ってろ。」
マリク「そうカリカリするなよ、主人格様。」
月島「悟さん、大丈夫でしょうか……」
狭間「確かにもう一日くらいは寝てるし、体調は良さそうだけど……」
などと周囲で誰かが話している感覚が徐々に芽生え始める。
目が覚めると、自宅の自室の天井が見えた。横を見ると伊角と狭間に晩野、そして月島ちゃんがいた。
悟「えっと……ぐっどもーにん?」
月島「悟さん……良かった……」
月島は悟に抱きつく。
悟「よかった、月島ちゃんも怪我治ってて。伊角あれ凄かった。でもちょー疲れる。」
伊角「大丈夫、あの後データを元に最適化しておいたから。今度からはこんな状態にはならないさ。」
狭間「心配したんだぜ?お前、一日中ずっと寝てたんだぜ?」
悟「え!マジ!?道理で腹が減るわけだ。」
月島「だったら何か作りましょうか、リクエストとかありますか?」
悟「そうだな、カレーが食べたいかな。」
月島「任せてください!よかったら皆さんも食べていきますか?」
狭間「じゃ、お言葉に甘えて。伊角も食べていくよな?」
伊角「もちろんだとも。」
晩野「私もお言葉に甘えさせてもらおう。」
月島「それじゃ決まりますね!みなさんリビングで待っててください!」
みんながゾロゾロと部屋を後にするに対して、伊角は俺の部屋に残っていた。
悟「どうした伊角?行かなくていいのか?」
伊角「この前の、ンガイの森の件でちょっと話したいことが。」
悟「なんだ?」
伊角「私のドローンの一体が、奇妙な写真を撮ってね。」
そう話し、伊角は手元のタブレットを手渡して、俺に写真を見せる。
そこに映るのは、無気力そうな顔をしたのっぺりした白い仮面は持ち、髪は緑、服は黄色と白のピッチりとした横ボーダーの上に毒々しい色をした花柄の研究服のようなものを着用し、そしてさながら道化師の様におどけている。
悟「すっげぇ異質だな。てか、なんでこいつシャンタクコースターの一番高いとこに突っ立ってんだ?なんだ?バカなのか?」
伊角「ただの馬鹿じゃない。この男こそ、今回のンガイの森炎上事件の犯人だ。」
悟「こんな変なやつが?」
伊角「ああ。悟が寝ている間の時間、私はただベルトの調整をしていたわけじゃない。このドローンに映った男に探りを入れていたんだ。」
伊角は続けてタブレットで監視カメラの映像らしきものを見せる。
悟「これは…!?」
伊角「ンガイの森にある監視カメラをハッキングして得た映像記録の一つだ。」
映像に映し出されているのは、先の仮面の男が試験管を地面へと垂らし、呪文のような何かを詠唱している様子が記録された映像だった。
悟「こいつがンガイの森を……」
伊角「まだ続きがある。」
そう言うと同時に、仮面の男の隣に門が開き、そこから大量のグールと統率個体のグールが現れる。
伊角「推察するにこれは何かの実験のように見える。あの特殊なグールを運用するために行われたのか。それとも、今以上の規模でのテロ行為を行うためのデモンストレーションだったのか。この男の目的は不明だが、今後また君がこの男と何らかの形で接触する可能性は高い。十分気を付けたまえ。」
悟「伊角、あの特殊なグール。ニャルは統率個体って言ってたアイツ。感覚的な話だが、戦ってみて少し妙だったんだ。」
伊角「妙?」
悟「ああ。戦ってみた俺個人の意見だけど、あのグール。グールであってグールじゃないような気がしたんだ。何が混ざってる感じがしたんだ。」
伊角「混ざってる?」
悟「いくらグールでも、あそこまでの炎の操作は不自然すぎる。それに月島ちゃんを見た時に生気を吸い取られている感じもした。炎を操り、生気を喰らう。この特徴、COCのルールブック準拠になるが神話生物:炎の精に似過ぎだ。もしかしたらの話、あのグールは炎の精とグールからできたキメラなんじゃないかって思うんだが。そこら辺、伊角はどう思う?」
伊角「確かに、私の研究分野の一つでもあるけど、神話生物と神話生物を掛け合わせるなんてバカな話だよ。それこそ手がつけられなくなる可能性がある……だからンガイの森で試したのか?」
悟「手がつけられなくなる可能性があるなら、何でわざわざ、それを試すようなことしたんだ?あの時は俺が変身して何とかなってたけど。俺がいなかった時、誰があのグールを止めたんだ?」
伊角「仮面の男が、あのグールより強い可能性あるということか。ますます調べる必要がありそうだ。ま、今はともかく休もう。悟も早くリビング来なよ?」
悟「そうだな、そうするわ。」




