第8話:社内みんなで異世界転生
「カジュちゃん、いつからここに?」
「来たのは2人と多分同時だよ」
聞いてみたら、カジュちゃんもここに来て間もないらしい。
「っていうか、うちの会社の人たち、みんな異世界来てるよ」
「「マジっスか」」
何度目かのハモり。
まさかの、社内まるごと異世界転生?!
うちの会社の業務は大丈夫???
「みんなそれぞれ部屋にいるよ。ついて来て」
と言って駈け出すカジュちゃん。
廊下、走っていいのか?
とりあえずモチと俺も後に続いた。
カジュちゃんは軽やかな足取りで階段を駆け上がる。
元々小柄だったのが子供になったから更に身軽になったんだろう。
モチと俺も元の姿より体が軽い。
俺は元々足は速い方で、終電ダッシュで他のリーマンぶっちぎりで先頭を走り、座席を確保するくらいは出来る。
今はもっと走れそう。
モチはそこまで速くはなかったけど、今はかなり速く走れるっぽい。
2階へ駆け上がったカジュちゃん。
何をするかと思えば、廊下を駆け抜けながら両側のドアをコンコン叩いてゆく。
ピンポンダッシュならぬコンコンダッシュだ。
扉が次々に開いて、どっかで見たような顔ぶれが姿を現す。
モチと俺がいた部屋もあるこの階は、男子部屋が並ぶエリアか。
部屋から出て来るのは男子ばっかりだ。
カジュちゃん、男子エリアに乱入していいのか?
「じゃ、後は男の子同士でお話してね」
そう言って、カジュちゃんは廊下の向こう側にある別の階段を上がって3階へ去って行った。
「お、モチとイオも目が覚めたのか」
「これで全員起きたな」
廊下に出て来た見覚えある顔の男の子たちが言う。
どうやら眠ったまま同時に異世界に来て、起きた時間に差があるっぽい。
他の人々の姿を見て、ふと気付く。
…あれ?
みんな黒髪?
赤やら青やらピンクやら、元の姿とは違う髪色になってるのはモチと俺とカジュちゃんだけ?
顔立ちの変化の仕方も違う。
他の人は元の姿から若返っただけみたいな顔。
俺たち3人だけ元の面影が残りつつも洋風な顔の子供になってる。
「お前ら、なんでステージ用の髪色なんだ?」
「なんで外人顔になってんの?」
「「知らないよ、転生させたヤツに聞いてくれ」」
聞かれたけど、むしろこっちが聞きたいくらいだ。
この集団異世界転生、誰の仕業?




