第74話:古代生物
「これは魔物ではないようだね…しかし野生動物とも違う…」
うーんという感じで首をひねるロッサ先生。
検査薬が入ったガラス容器の中、夢幻ウサギたちがボコり倒した巨大ヘビのウロコが入ってる。
ウロコは木の年輪のように、それを持つ生き物が辿った年月を示す。
「何か、今ではない時を生きてきたようなウロコだね」
ロッサ先生がそんな感想を述べた。
検査薬はそれを調べるものだそうだけど、読み取られた情報が現代とはどうも違うという。
「ちょっと図書館行ってきます」
声掛けして、俺が向かうのはもちろん禁書閲覧室だ。
「タマ、古代の魔物か生き物の本ある?」
「そうくるだろうと思ってたよ。はいこれ」
行ってみたらすぐ本を渡された。
校内の騒動は、タマも気付いたらしい。
───古代生物。
ニンゲンの時代に存在したモノ。
いくつかは洞窟の壁の中で化石になって休眠している。
化石に魔力を注ぐと目覚める。
その一種である蛇を、魔王の側近が好み使役していた。
古代蛇は成長と共に巨大化してゆく。
大きさに見合う獲物として、鳥や獣を捕食する…───
「やっぱりこれか~」
パタンと本を閉じて確信した。
校内に潜んでいるという、魔王の側近トゥッティ。
ダンジョンの終点ボスを捕食したのも、夢幻ウサギを襲って返り討ちになったのも、そいつの使役するものだと思う。
「ついでにこの本のここも読んでおいて」
と、タマが別の本を開いて見せたページには、魔王の側近に関する事が書かれていた。
───蛇将軍トゥッティ。
知性を持った蛇の化身。
魔王ウーダの側近で、普段はニンゲンに似た姿をしている。
多くの魔法を魔王から授かり、使いこなす。
蛇としての攻撃スキル「締め付け」は、蛇の巨体で巻き付いて締め上げる。
締め上げられた者は窒息するよりも、圧迫で心臓が止まって死に至る事が多い。
大きなダメージを受けると蛇に戻り、「脱皮」する事で回復する…───
「こいつも蛇なのかぁ…」
「普段はニンゲンの姿だから、転移者が多い今のアサケ学園では見つけにくいかもね」
パタンと本を閉じる俺に、タマが言った。
「元イベントチームか、交流のある部署だった人しか顔が分からないよ…」
「知らずにすれ違ったりしてるかもね」
社員旅行みたいに異世界へ来ちゃった我が社。
その人数は765名、当然ながら顔を知らない人もいる。
そんな中に人間の姿をした者がいても、誰も分からない。
「魔王の側近は何が狙いなんだろう?」
タマに問いかけたところで、通信魔道具にメッセージがきた。
「女子寮にヘビ! すぐ来ておくれ!」
ジャミからだ。
…なんで女子寮に…?
とりあえず行ってみよう。
「ワープさせてあげる」
「ありがと」
タマの神霊の力で、足元に小さめの魔法陣が現れる。
お礼を言った直後、周囲の風景が変わった。




