第71話:捕食者
四季の森にある全ダンジョンの終点ボスチェック。
まずは、異変があった氷雪の洞窟がある冬の森から。
借りてきた通信魔導具のマップを見ると、この森には東西南北に1つずつと中央に1つの合計5つのダンジョンがある。
最初は氷雪の洞窟で、さっきは通らなかったルートを見に行こう。
氷雪の洞窟は、ルートによって出現する魔物に偏りがあるみたいだ。
同じ洞窟内でも気温に違いがあり、水が凍らずに川が流れてるルートもあった。
水辺だからか、そのルートには蟹系が揃っている。
美味そうだけど、今は狩ってる場合じゃない。
蟹ルートの終点ボスは、某蟹料理チェーン店の看板みたいな巨大タラバガニもどきで、健在だった。
通信魔導具で見られるダンジョンボス情報によれば、このボスは生でも加熱調理しても、とても美味らしい。
巨大蟹を通信魔導具で撮影して、ダンジョン攻略グループ通信に送って完了。
他ルートも見て回ると、いずれも健在。
熊ばっかりのルート終点ボスは、他ボスに比べて圧倒的にデカくて、なかなかの迫力だ。
この熊ボスの情報には、食用よりも薬の素材として価値が高いと書いてある。
地球の熊も「熊の胆」と呼ばれる胆嚢が、消化器系の薬に使われるので、それと似た物かもしれない。
熊ルート終点ボスも画像を送信しておいた。
…その後…
最後にもう一度、チキルートの終点ボスの有無を確認に行った時、異変はあった。
みんなで来た時はいなかった、大きな鶏がいる。
中ボスよりも一回り大きいから、あれが終点ボスだね。
再出現したのか。
つまり、狩られたのは昨日って事だ。
でも、通信魔導具で調べた結果、昨日ここに来た学生や教師はいない。
巨大鶏を撮影、グループ通信に送信していたら、更に異変が起きた。
終点ボスの背後、壁から巨大な氷の蛇が出てくる。
終点ボスとの大きさの比は、ニシキヘビと普通の鶏くらい。
巨大蛇は口を開けて、巨大鶏を飲み込もうとしてるみたいだ。
岩陰に隠れて様子を見よう。
通信魔導具の撮影を動画に切り替えて、巨大蛇の行動を記録する事にした。
「ゲェッ?!」
驚愕の表情に変わった終点ボスは、バクンと食われて巨大蛇の口の中に引き込まれてゆく。
獲物を完全に飲み込むと、蛇はスーッと壁の氷と同化するように消えていった。
一部始終を撮影した動画を送信すると、すぐにジャミから指示がきた。
「このリストの終点ボスを先に見ておくれ」
それは、四季の森のダンジョンの中から、優先して見てほしい幾つかのルートをピックアップしたリストだった。
鶏しかいない筈のチキルート終点に、蛇の魔物の出現。
ダンジョン内で、魔物が魔物を食った。
図書館で読んだ魔物情報の本には、ダンジョン内の魔物は森にいる魔物とは異なり、魔石を食ってエネルギー源にすると書いてある。
あの巨大蛇は、一体何だろう?




