第4話:茶道部の奥義
私立のアサケ学園には立派な茶室があったりする。
普段そこは茶道部が活動に使用するのみだが、文化祭の時には部員以外の生徒を招いて茶会を催す。
作法が命の畳の部屋に入るには、注意しなきゃならない事がある。
「お邪魔しまぁす」
何も知らずに入った一般生徒。
茶室の中には着物姿の色白美少女が上品に正座して茶の準備中。
美味しいお抹茶と和菓子を楽しみに、畳の間を歩いてゆく一般生徒。
土間で靴を脱いで揃えたところまでは良かった。
しかし畳の無い家で育った彼は、畳の歩き方を知らない。
「………」
歩いて来た一般生徒を、和装美少女がキッと睨んだ。
次の瞬間…
「畳のヘリを踏むんじゃないっっ!」
スパァンッ!
…茶道部奥義「畳返し」炸裂!
めくれ上がった畳に、フッ飛ばされる男子が1人。
「…な…何するんスか~っ」
見事にひっくり返り、抗議の声を上げた彼は、美少女の顔を見て沈黙した。
「無作法な奴に出す茶は無い」
見る者を凍り付かせそうなオーラを漂わせつつ、彼女は言う。
「帰れ!」
ぴしゃりと言うのは、雪女より怖い茶道部の部長。
「あたしは茶道部のY根ってんだ。覚えときな」
Y根さんは、陸上部のマネージャーであり、茶道部の部長でもある。
その睨みは、絶対零度。
睨まれた男子生徒は震え上がった。
「…失礼しましたぁぁぁ!」
慌ててスゴスゴ逃げ出してゆく。
こんな調子で、毎年何人かが追い返される茶会なのでした…