第43話:鑑定結果は…
「とりあえず今はオーク真珠を売らなきゃね」
名乗りで大きく脱線した後、チッチが本題に戻してくれた。
「では、こちらの鑑定機の上に置いてみて下さい」
と言ってファミさんが棚から取り出してテーブルに置いたのは、球状の物を嵌め込めるように真ん中が凹んだ丸い板。
凹みを囲むように描かれているのは、鑑定魔法の魔法陣かな?
「お願いします」
と言って異空間倉庫から取り出した黒真珠をそこに置くと、ファミさんが目を丸くした。
「なんと、黒真珠ですか。しかもかなり状態が良い…まさか一撃で倒したんですか?」
「はい」
「さすが転生者さん、見た目は子供の姿でも戦闘力が高いですね」
聞かれて答えたら、感心されてしまった。
一撃で倒せたのは俺が転生者だからじゃなくて、禁書で身体強化を覚えたからだけど。
禁書なだけに今日会ったばかりの人に言うわけにはいかず、転生チートだと思われたままにしておく。
「では鑑定をかけてみましょう」
ファミさんが片手で魔法陣の端をトンッと軽く叩くと、魔法陣はポウッと白く光り始める。
白い光は魔法陣から離れて空中へ浮き上がり、白く発光する数字に変わった。
…なんか、桁が多い気がするよ?
「良かったねイオ、所持金ゼロから一気にお金持ちだよ」
驚くかと思いきや、チッチは割と冷静だ。
もしかしたらチッチにとっては珍しくない額なのかな?
「やはり、このくらいにはなりますねぇ。買い取りはこの額で納得頂けますか?」
って聞かれても相場が分からないので、俺はチラッとチッチを見た。
「それでいいんじゃない?」
「買い取りお願いします」
チッチのアドバイスを受けて、買い取りを承諾。
「ではお支払いしますので、しばしお待ちを」
と言ってファミさんは一旦部屋の外へ出て、すぐに袋を持って戻って来た。
「ではこちら、お確かめ下さい」
確認の為に袋から出してテーブルに積まれたのは、日本ではほぼ見る事は無い金貨。
俺は貨幣コレクターだった祖父から外国の硬貨をまとめたファイルを貰った事があり、金貨としてはメープルリーフの1オンスなら見た事がある。
テーブルに積まれた金貨はクローバーの葉に似た四つ葉が描かれていて、サイズは直径3cmくらい。
メープル金貨の1オンスと同じ大きさだ。
メープルリーフでこのサイズなら50ドル、日本円にするといくらになるかは外国為替市場を見てね。
今目の前にあるのは異世界の金貨だから、日本円に換算出来ない。
そもそもこの世界で初めて貨幣を見たので、イマイチ分からない。
でも多分かなり高額なんだと思う。
さっきの鑑定額と同じかどうかは、チッチが確認してくれた。
「うん、枚数に間違いないよ」
と教えてもらったので頷いて、袋の中に戻された金貨を受け取った。
「街で買い物しようと思ってるんだけど、これで買えるかな?」
「店によるよ。武器屋でちょっといい物を買うなら金貨で、食べ物を買うなら銀貨か銅貨」
「パンなどの食料品を買う予定なら当店で両替しますよ」
と言われたので、一部両替してもらう事にする。
「ちなみに屋台の串焼きは銀貨?銅貨?」
「銅貨2~3枚で充分。銀貨だと小銭ないか?って言われちゃう」
「銀貨は銅貨100枚、金貨は銀貨100枚です」
説明を聞き、物価高騰の日本とは違うだろうと推測したりして、なんとなく日本円に換算してみる。
多分、銅貨1枚が100円くらい、銀貨は1万円、金貨は100万円…かな?
オーク真珠の買い取りが金貨50枚だったから、5000万円くらい?!
庶民には驚きの値段だ。
また黒オーク見つけたら狩ろう。
とりあえず、金貨1枚を銀貨95枚と銅貨500枚にしてもらった。
ベルトポーチに銀貨と銅貨を10枚ずつ入れて、あとは異空間倉庫に収納する。
「ありがとうございました。是非またお越しくださいね」
ファミさんに見送られつつ、俺とチッチは店を出た。
「チッチ、案内とアドバイスありがとう。もしも何か俺に出来る事があったら手伝うよ」
「じゃあ、今度ヒマな時にダンジョン付き合って」
「いつでもいいよ」
そんな会話を交わしつつ、中央広場の屋台に向かう。
とりあえず、チッチに何か美味しい物をご馳走しよう。




