君は、僕は、私は、
孤独にならない為の代償は、自由だった。
その日私から自由は消えた。
行動範囲が狭まって、話す言葉も限られた。
みんなに甘い言葉を吐いて、周りを笑顔にさせるのが義務となった。
いつからこうなったのか。
わからないね。わからないよね。
君にはわからないよね。きっとそうだ。
◯ ◯ ◯
そうだよ。僕にはわからないよ。
君の嘆きも、哀しみも、慈しみも、なにも。
でもね、君は、君は、
「君は、優しかったよ。苦しい程に。」
煙突から出ていた煙に向かって、僕は言った
次の日、君の席には、黒い百合が手向けられていた。
嗚呼、君は、誰からも弔われなかったんだね。
僕は黒い百合を、片付けないで見つめているだけだった。
刹那、秋風が靡いてカーテンがふわりと舞った。
その儚さが、君のようで。
嗚呼、もう帰ってこないのね。
そこで僕は初めて、君を想い出して泣いた。
「私はね、それでも幸せだったのよ。」
そんな自分勝手で幸せそうな声が、聞こえた気がした。