雨と陽光
しとしと雨が降っている。
私の頬を伝い、滲む汗と混ざり、酸化する。
降る雨に心地良く体を委ねたままで居られればどれほど良かっただろう。
私はすぐさま意識を取り戻し、後悔する。
しとしと雨が降っている。
その「雨」は赤黒く、少々鉄の匂いがした。
私の体に痛みは無く、その雨が私に降りかかったものだと気づく。
握り締めた悪意、憎悪、嫉妬、無力...
そういった物を洗い流すかのように。
雨がしとしと降っている。
私は恍惚としていた。
緋色に染まった彼女の骸は、まるで私の想い焦がれた理想の人だった。
「あぁ、やっぱり君は赤が良く似合う。
無垢な白いドレスも良いが、君が君をさらけ出せるのはその色だけだ。」
辺りに散らばる臓腑を掻き集めながら、私はワルツでも奏でるように意気揚々と彼女の骸を火に焚べる。
雨が止み、日が出てきた。
燦燦と降り注ぐ陽光は、歳老いた私には少々きついものだった。
皮膚に張り付く雨は乾き、徐々に熱を持つ。
己の罪を懺悔するように、日は徐々に私を呑み込む。
あつい、暑い、熱い。
皮膚は爛れ、もう暫く経てば彼女と同じ。
地獄の業火は、私と彼女を永遠に繋ぎ止める火種となるだろう。
その熱すらも...
「あぁ、なんと愛おしいことか」