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 背景用の巨獣のメイキング。……と、言うのは簡単な訳だが、小型で模型を造り、それを拡大したら描写的に正しい物が必ず出来る訳では無い。例えば蟻は体骨格がそのままで巨大化したら自重で潰れる。まあ、そう言う事は独自種族をベースとした巨大な奴なら体骨格のエアプで有ろうと無視出来る話では有る。

 戦闘でガンガン動かすタイプの奴を造るなら体の動きも重要だろうが、今回は其処までは求めないので、大体で良い。ベースと成るのは、何が良いだろう。羽根が有る物は却下なので鳥系、龍系、ドラゴン系等は却下として、シンプルに超巨人系?かなり昔の世界地図をベースにするなら、世界を支える巨大亀とか、世界地図の外側に書かれる超大きな奴。……三つとも有名タイトルに既に存在するな。さて、どうした物か……。

巨人と言うにしても、……うん、そうだな、昔やった事が有るしヘカトンケイルで行ってみようかな。そしてシミュレーターの中で大型化した際のデータを元に小型のヘカトンケイルを生成してペンタクルさんに渡すと。


「ヘカトンケイル、ですか。五十の頭に百の腕。造形バランスも問題無い。……ゲーム内部で緻密に動くこれを動かすと、ゲームエンジンがアレに成りそうなので、少しデチューンして貰えませんか?」

「巨人を背景用にぶち込む案を出して来るぐらいなのにそれを気にするのか?」

「と、言いましてもね。腕を二十くらいに出来ませんか?」

「……それだとなんか名前負けしそうな感じがするが」

「腕の切断をされても百回まで欠損から回復する巨人、みたいな感じで」

「百腕を同時出ししていた方が良いだろうし、通常の戦闘の範疇だけをやるなら、ヘカトンケイルの名出しが無しのゲーム内部では戦闘で欠損が無駄なタイプの敵扱いされる奴だと思いますがね。百回も腕切断される前に勝敗が付くか逃げるかすると思うので」

「駄目かな?」

「やっても良いとは思いますが、情報開示無しに出すと絶対作り手の意思に反する別物扱いされる奴だと思います」

「それでも使いたいのだけどな」

「その設定が活かされる状況と言うのも実力差が付きすぎて居る状況でしょうから、雑魚狩りで検証してやると言う人が出ないと多分設定の意味が……」

「ワールドレイドで、サーバー内での腕切断回数は共有するとか」

「いやいや、敵モブ扱いの実装はお断りですよ?」

「何とか成らない?」

「鑑定系や事前開示無しにやったら意味不明な展開に成る奴ですよ、それ」

「じゃあヘカトンケイルモチーフのでかい奴を造るのと、眷属として、腕や頭の少ない奴をモブとして実装して、其方は設定を開示するとか」

「それなら、腕十、に欠損回復十、くらいですかね。それなら強い奴が部位破壊しながら戦えば設定の意味も出そうですし」


 蘇生能力よろしく腕が全部一回だけ治る塩梅だし、自己蘇生能力が有りならそれくらいならゲームバランス的にも問題無いだろう。


「なら、それで早速お願い」

「なら、こうやって、……こうですね」


 そして小型の人形を造ると。


「見た感じ、造形は阿修羅をベースに、体に顔と腕を二セット足した感じ、ですね」

「大型化していいなら頭部の位置はもっと趣向を凝らせる気もしますが、モブ実装なら、大型化し過ぎてもアレですしね」

「良いでしょう、採用です。でかい奴を造ってください」

「解りました。百万円どうも」

「アイディア料も有るから、何か追加で希望を出しても良いですよ」

「では対価はちゃんと払いますし、直ぐにじゃ無くて良いので、こないだ連れて来た女性用に飛びっ切りの美人の見た目の物を頂ければ」

「あの女性用に、ですか?あの女性はそれが必要無いくらい十分に美人だと思いますが……」

「職業柄、別の見た目を持つのは悪い事では無いので」


 職業柄敵が居ない訳でも無いので、別人を装える手段が有っても良いとは思うのだ。……ま、正直、部位破壊したら、敵を楽に倒せる……と言うシステムの有るゲームで部位の回復能力とか、部位破壊し無くても倒せるレベルの奴が運用するのでも無ければ少なくと雑魚ではないよなぁ……。使い手が雑魚なら雑魚能力だし、使い手が強いなら強能力。使い手が雑魚でも能力の否定には成らない。能力が強い弱いではなく、評価が使い手に依存するのだからな。

 と言うか触手を出している間は本体にダメージが通らないので、大量の触手を撃破してから本体を叩け。但し、その触手は撃破後一定時間でリスポーンな、と言う能力の奴ならゲームの大型ボスで居るのは知っている。今回造る奴は腕が治るだけだから、それに比べりゃ雑魚だが、回復と言うか扱い的には体内に格納している腕を出し入れしているだけみたいな物だから、傷口焼かれるとかの回復封じをされても見た目的には元通りに成るけども。件のボスと比較した上での勝る利点と言えばそれくらい。……まあ、回復封じなんて件のゲームのボスにはゲームの仕様上そもそも存在し無いから使えないけど。


「うーん、余所に明確な上位モデルのボスが居るのがね」

「そもそも量産モブの構築の話で余所のゲームの大型ボスと比べて如何するのですか?」

「それもそうか。……まあ、大型のヘカトンケイルの方はまともに造んないとなんだがな」

「ヘカトンケイルは百腕五十頭の巨人で山レベルの巨岩をぶん投げる怪力持ち、ですが、……五十も頭が有るので、一つ一つの頭がシングルタスクだとしても、五十の思考を並列が可能です。魔法を覚えればヤバイ事に成る奴ですね」

「盛りすぎじゃ?」

「昔……と言っても貴方の嫁の内の一人が産まれる前にルド様がそれ造っていましたよ」

「冗談キツイな」

「正確には魔法を使える者にヘカトンケイルモチーフの姿を取らせた奴、ですけどね」

「ああ、そう言う事ね……それはえげつなさそうだ。ならそれをモチーフにしては如何だろう?」

「なら因子獣ですか?それとも因子神?」

「すまん、初聞きだ。なんだそれ」

「ざっくり言えば、世界に満ちる能力エネルギーの塊が意思を持った物、ですね。人の魔法や能力が起因の精霊みたいな物と解釈すれば速いかと」

「……それ、攻撃としての魔法や異能とか効く?」

「それらのエネルギーを得て活動している類いなので、そう言う物を使えば強化されるだけですね」

「何で今まで俺は知らなかったのか」

「因子起因の能力が普及している場所にまだ一度も行っていないからかと」

「……其処で魔法や能力を使えばそいつらを自動的に強化する仕組みって事か?」

「只、そいつらを倒してエネルギーの塊を取り込めば能力を得られます」

「お、マジ?なら何で普及しねーの?」

「得る能力の種類次第ですが、取り込んだ上で得る条件に精神汚染が有る物が有るためです」

「うわぁ……何でそんな物が許されて居るのか」

「能力を無理矢理奪う奴に呪いが掛からないとでも?」

「ああ、要するに意図的に毒を取り込んで食ってきた奴に毒が行く様にする事で食われない様に自衛している類いの奴って事ね。それ無くしたら確かにアレに成るわな」

「話を戻しますね。因子獣や因子神には色々な姿の奴が居ますが、流石に彼らに喧嘩を売りたくないので、因子獣や因子神モチーフは勘弁してください。……知りうる限り数万個単位で能力を持つ奴も居ますので、水掛け論的にも大抵の奴には勝てないレベルの奴が居ますので」

「……数万個、か。世界から膨大なエネルギーを取り込み、それから能力を得る、……と、考えるともっと盛っても良い気がするが……万能神レベルの奴ってどれくらい居る?」

「さあ?眉唾の噂だと数億や数兆持つ奴も居るそうですが関わって無いのでなんとも」

「本当に眉唾だなと言いたいが、前提の理屈上、世界中の魔法や異能とかを網羅するレベルの奴が居ても一応可笑しくはないのはまた何とも言えねーな」


 ……例えば因子獣や因子神と仲良く成れば再入手が簡単な能力の一つや二つくらいリスクを避けた形で簡単に渡してくれそうではあるが、……下手を踏むと所有能力の数的にどうしようも無さそうなのが何とも。悪用前提だとヤベー奴と事を構える事に成るだろうし。


「原理上、一番能力を持っている奴だろうと原理が覆されて居ない限り、問答無用で全魔法や全能力を持っている訳では無いとは思います。例えば歴史上一度も使用された事の無い能力とかは未所持だと考えられるので」

「だとしても、原理的にそれをそいつらを倒す武器には成らないだろ?例外措置扱いに成るように能力の構築に細工しても意味有るか解らんし」

「まあ、要は使用したとしてもエネルギーを一切場に残さなければ良いのです。彼らと事を構えても使わないのは絶対ですが」

「膨大に魔法や能力を持つ因子獣や因子神と事を構えても対処に魔法や能力を使ったらコピーされて負けって事か」


 ……アレだな、余所の奴がテリトリーに最強能力で侵略して好き勝手しようとしたら嬉々としてそいつらが来そうだな。縄張りから出はしないだろうが……。


「まあ、他人が使うと問題に成る仕様の魔法や能力だけで何とかするなら、ミラー戦闘は無いのでは無いですか?」

「そもそも精神汚染の副次効果の有る能力を普通に使っているのに、そう言う副次効果に意味が有るかは疑問だがが……」

「それは所有能力次第ですね」

「一応魔法や異能とか使って暴れない限り無視で良いのだろうな。名前すら初聞きレベルだし」

「一応所有能力数が少ない奴は能力数を補う為に貪欲に色々とするそうですがね」

「それが二桁の範疇なら、能力内容が細分化されているゲームなら余裕で持っている奴は居るレベルだろうし、何とか出来る奴は居そうだが……と、この話はもう良いやモブの話だったな。如何する?」

「青塗りに血管が大量に表面に浮かび上がった感じの装飾の巨人で行きましょう」

「血管が丸見えって攻撃される弱点丸見えでは?」

「飽くまで見た目だけです。だから装飾と言いました」

「ふむ。なら普通に巨人造ってペイントすれば良いのな」

「はい、お願いします」

「で、何処で造る?ゲーム内部で実装したい巨人が大型なら現物を造るのは、な」

「巨人として不都合が無い見た目なら通常の大きさの人を造るだけで良いですよ」

「解ったなら、早速造るか。腕は、とりあえず二十本出しで、体内格納八十、で、良いよな」

「はい、そうなります、只、それだとモブの格納腕を全部出しているだけに取られるので、イベントムービー用に百腕出しても問題無い感じでお願いします」

「何時も出しているのは二十腕なのに百腕出しているのにも対応だから、装飾とか載せるのアレでは?」

「ボディペイント的に皮膚の色が違う事でなんとか」

「解った。じゃあ造りますよ、と」


 そして、造形し、見せると。


「はい、良いでしょう。モデル動かすのが大変なので多用したくは無い奴ですけどね」

「そう言う見た目に注文されたから造ったのだが……」

「まあ、そうですねでは、追加の二百万です」

「……確かに。じゃあ今日の所は帰るわ。……次は何時来れば良い?」

「直ぐに納品が有る様な物は粗方終わりましたので、必要な時は此方から連絡させて貰います」

「あーはい、じゃあその時は連絡してくれ、連絡先は解るよな?」

「問題無いです」

「解った。じゃあそう言う事で」


 そして今度こそ帰宅した。ぶっちゃけると別の見た目を被る職業を否定したい訳じゃ無い。無いけど、化粧した顔しか見せてないのに見せても無い化粧付けてない私の見た目を評価してって言われても困るよね、って話では有る。

仕事でキャラ造ってそれに沿ってしか行動してないのに、本当の私を解ってくれないとか言われても、そいつの脳内全部を見られるエスパーじゃ有るまいし……。


 ……察しの良い奴や長く付き合って居る奴なら解るだろ?って?そりゃ繕われた部分のみを見ているだけのファンにはワンチャンも有りませんわ。

……そう言う娯楽は二次元のキャラが受肉したコンテンツとして見たいのに仕事以外で現実としてそのキャラと仲良くしたいなら、中身側を好きに成れ……言いたい事は解る、解るけど、何か最初にそのキャラを好きだと思った理由からは主旨が外れている事をしなければ成らない形に成る気がする。

 確かに中身側もそのキャラを構成する物では有るのだけど、アニメで例えるならキャラと仲良くしたければキャラだけで無くキャラの声優もセットで好きに成らないと無理ですって話だし。……なんか、始点の感情の主旨からずれている物を要求されているって言うか、なんて言うか。

 いやまぁ好きな人の親戚とも良い関係を築けって言うのは解るよ、解るともさ。……解るのだけど、キャラが好きで見ている人に中身側が好きだから見る方針に改宗しろと言われている様な物な気がする。なんかこれじゃ無い感じが凄い。


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