剣(おれ)は抜けません
俺は菊池史郎、ひょんなことから、異世界『セルラント』に行くことになった。今俺はセルラントでの一歩を・・・踏み出せなかった。なぜなら・・・俺は剣になっているからだ。
なんで?なんで俺剣になってるの?女神様の嫌がらせ?そんなのないだろぉーーー。
ん?待てよ?俺あの時。
「俺を最強の武器に」
あっ。これ俺のせいだわ。助動詞間違えるなんて俺、アホだわ~
剣なので当然動くこともできない。どうやらここは森みたいだな。女神様、どうせなら城とかに転生させてほしかったな。最低でも村の近くとかにしてほしかったよ。ここじゃ誰にも見つけてもらえそうにもないし。俺なにでできているんだろう。鉄とか銅なら嫌だな~だって錆びるし。錆びない素材がいいなと思っていると人の声が聞こえてきた。
(だれかきた。俺を抜いてもらおう)
きたのは男3人だった。3にもガラの悪い風貌だった。
(なんかいやな連中だな。でも今は贅沢はいってられん)
「あのー。すいません。俺のこと抜いてくれませんか」
「あ、兄貴こんなところに剣がありますぜ」
「あのー。すいませんー」
「本当です。どうしやしょう?」
「そんなの決まってるだろうが」
どうやら俺の声は聞こえないらしい。
「そうですよね。見たところかなりの上物っぽいですし」
「ああ、売ればいい金になるだろうしな」
俺を売るだと・・・。俺を使うのではなく売るなんてひどい奴らだ。前言撤回、俺こいつらには抜かれたくない。
「気をつけろよ。パッス」
「わかっているぜ。ふんっ」
パッスとよばれた男は俺の柄を掴み引き抜こうとした。
抜けるな俺、頑張れ俺
「ふぬぬぬ。この剣抜けねえ」
「情けねえな。どれ俺がやってやる」
「たのんたぞ。ピッグス」
パッスが諦めたので、もう一人の男が柄を掴み引っ張った。
しかし、俺は抜けなかった。
「くそ。俺でもだめだ」
数分間、チャレンジしたがピッグスに抜けなかった。
「やれやれ、お前らなさけないな」
3人の中で一番ガタイのいい男が引っ張り始めた。
しかし剣は抜けません。
「おい、3人でやるぞ」
「「へい」」
(これはさずがにやばい・・・)
俺は不安になったが、3人がかりでも抜けなかった。
「くそ。なんなんだこの剣。びくともしねぇぞ」
「たしかに、これは無理ですぜ」
「この剣重すぎて、捨てられたんじゃないですか?」
「たしかにこんな重い剣振るどころか、浮かせられる人間も少数だろう」
「もう、諦めましょうぜ」
「そうですぜ。俺達の目的はこの剣じゃないんですから」
ピッグスとパッスに窘めれられ、ハッとなった兄貴(仮)は、
「そうだな、俺達はここに楽しみにきたんだったな」
「速くいきましょうぜ」
「おう」
3人はいやらしく楽しそうに去っていった。