支えたい理由
厳かな店に1人の男が入ってきた。30代後半くらいに見える男はカウンター席に座った。
「マスター、おすすめのやつを」
「わかりました」
「あんた、ここは初めてかい」
となりで飲んでいた男が話しかけてきた。
「ええ、人を探していまして・・・」
「おお、なら俺にまかせてくれ。俺の得意分野だ。なあに金はいらねぇ。酒をおごってくれればいいぜ」
「ロキットという方です」
「・・・悪いが知らない男だな」
「そうですか・・・それは残念ですね・・」
「すまねえな。お詫びに酒を奢らせてくれ」
「よろしいのですか?」
「いいって、気にすんな。マスター、スペシャルなやつをこのお方に」
「・・・はい」
「この日の出会いに乾杯」
「乾杯」
数刻後
「zzz・・・」
「よし、よく寝ているな」
ロキットは男が寝ている姿を確認し、そそくさと店を出た。
(しばらく、身を隠そう)
ロキットが路地裏を歩いていると
「ロキット様ですね」
立ちふさがる人物が現れた。
(今日はいろんなやつがおれを探しているな。この前受けた仕事のせいか?)
「何の用だ?」
「私を殺すように依頼した人物について知りたいのですが・・・」
よく見たらターゲットの女だった。
「悪いがそれは教えられないな」
ロキットはナイフを投げた。が、女は剣に防いだ。
(なっ、どういうことだ。箱入り娘と聞いていたが・・・)
ロキットは形勢不利と思い引き返そうとしたが、眠っていたはずの男がいた。
「ね、寝ているはずのあんたがなぜ?」
「ああ、それは私が睡眠薬が入っていない酒を出すようにお願いしていたからですよ」
(こっちの仕込みがばれていたのか・・・ならば)
「わかった。話すよ」
「ちなみにこちらにはこれがあるので、正直に答えていただけると助かるのですが・・・」
男が取り出したのは、自白剤だった。
「・・・わかった」
ロキットは正直に話した。
「大丈夫ですかお嬢様・・・」
「・・・」
「オリヴィアさん・・・」
オリヴィアさんは、あの男の話を聞いてからずっと無言だった。
「では、私はここで。例のものは手に入れてみせるので、少々お待ちください」
セバスと別れる際も、無言で帰宅した。
「オリヴィアさん、お風呂に入れてよかったね」
「・・・」
だめだ。でも仕方ないよな。あんな話を聞いたら。信じていた人に裏切られるのはつらいよな。
「オリヴィアさん、俺は君を絶対に裏切らない」
俺なんかがこんなこと言っても、嬉しくないよな。
「今日は疲れたので・・・」
「あっごめん、おやすみ」
「・・・おやすみなさい」
オリヴィアさんさっき言ったことは嘘じゃないよ。だって俺はオリヴィアさんのことが―――好きだから