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太陽神話  作者: いるか印
2/2

天啓

 それは、イズが2人の子を産み落とし、立ち上がり始めた頃、ある天啓が太陽神アグゥより伝えられた。

「2匹のうち、最も愛しい者を捧げよ。さすれば、お前達の仔とその仔供達は森に入れば必ず木の実を見つけ、狩にでれば必ず獲物を仕留めるだろう。」

「嗚呼、どうかお許し下さい。偉大なる父の息子達の中で最も輝かしい貴方様に口答えしようとは思っておりませんが、私共は平等にこの子達を愛しているのです。どちらか一方を捧げることなどできません。もし捧げろと言うのならば、どうぞ、どうぞこの私を捧げましょう。」

と、モロイが言うとアグゥ神は3日の猶予をお与えになった。

 その日の夜、月が消え失せ、2人の前に月神ヌンが銀色の一匹の虫になって現れられた。

 2人は、その美しい銀の透き通った羽と、己の手よりも小さな存在であるにも関わらず、神々しい有様に息を呑み、ヌン神が天啓を与えられ始めるまで、一本の木が根を張った様に動けなかった。

「メアセムとヌアの仔らよ。お前達の仔等から1匹、私に最も愛おしい者を捧げれば、お前達の仔とその仔供達は夜に迷うこと無く、星々に害される事なく健やかに育つでしょう。」

 今度はイズが言った。

「嗚呼、どうかお許し下さい。偉大なる父の息子達の中で最も美しいお方である貴方様に逆らおうなどと思いませんが、私達はこの子等を同じく愛しております。もし捧げなくてはならないのならば、どうぞ、どうぞこの私を捧げましょう。」

 イズがそう言うと、ヌン神もまた、3日お与えになった。

 2人は困り果て、ヌン神が帰られた後の星々の悪戯など気にも留めず、嘆き続けた。

 しかし、その3日を更に伸ばし、一周期が過ぎ、モロイがサナテマの鉤爪で歩けなくなり、イズが子等に食べ物を与えられなくなり、遂には下の息子が星々に攫われ、ようやく2人は決心した。

「おお、おお、偉大なる父の息子達よ。どうか私共の願いをお聞き下さい。」

「おお、おお、偉大なる父の偉大なる息子達よ。どうか、どうか、長きに渡り考えた私達の答えを聞き入れ、私達の子に、その偉大な力より加護をお与え下さい。おお、おお、どうか、どうか。」

と、2人が3度祈り、アグゥ神がこう言われた。

「どちらを捧げるのか。」

 また、ヌン神が言われた。

「どちらに捧げるのか。」

「私共の一番目の息子を偉大なる父の偉大なる息子達に捧げます。」

 二柱の神はその強欲さに呆れられたが、その願いを聞き届けた。

 すると、2人の一番目の息子ズアは召し上げられ、イズの腕には星々に攫われた二番目の息子アズムが抱かれていた。


 こうして我等は子のうち、一番目の息子を偉大なる息子達に捧げる様になったのだ。子らよ、忘れるな。忘れるな。忘れるな。

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