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サーチ & ドールズ6.0

 「ねえ。」

 「なに?」

 「状況を説明して。…まさか、スタンバってたわけじゃあないよね?」

 

 まさか。ととぼけた顔で依馬は言う。その割には手放さないスマホが、どうにも道化を演じているようにしか思えない。だがしかし彼も又、慣れた調子でショットガンを担いでいる。彼の趣味はサバゲーやら山登りやら、科学実験やらだ。手広くあるそんな趣味を持っている彼が、実はどこかに所属する兵士だった。と言われたら、俺は納得をせざるおえない。

 少なくとも、それが、灯よりはあり得る。


 「お察しの通り。って言ったら。……怒る?」

 「怒りはしないけど幻滅してる。…さっきのそれは、作戦名?……まさか、ここまでやって、ドッキリでした。……じゃあないよね。…メディック。という事は、国境なき医師団か?お医者さんが銃を持った時代になったとは思えないんだけどな。」


 グリップを握る手が少し滑る。

 いつのまにやら、汗をかいていたらしい。背負い込んでいた後輩のせいか。それとも、変異緊張しているからか。俺は汗を簡素に拭う。彼はそんな様子を見て、少しわらった。


 「お医者さんは銃なんて持たないさ。これを持つのは、僕らが兵士だから……だよ。」

 「…何時ものジョークはどうしたんだよ。」

 「あいにく、ジョークで場を和ませる時間は終わりだ。…本題に入ろう。僕らはね。……重要人物の保護に来たんだ。……っと。ちょっと待って?……CP。CPこちらグレーテル。避難誘導は?」


 インカムに手を当て、そんな事を口走る依馬。


 「………おk。お仕事の開始だ。現在地は、初期地点ヘブン横。ベータ3-1。ヘンデルと合流。装備の受け渡し後。ベータ1-5に移動する。…アウト。」

 

 手慣れた調子で口走り、そういって通信を切る。

 彼はそれ以外にも、大きなリュックサックを背負っていた。登山用にも見えるそれは、依馬がいつも浸かっ営るそれに似たデザインだが、所々違うことが見て取れる。その中でもやはり目立つのが何かしらのロゴが入ったそれだ。それには、肩の部分に縫い付けてある部隊章と同じようなマークが入っている。


 「はい。灯。サイドアームとおニューのチョッキ。インカム。……というか、インカム持ってたはずでしょ?なんで付けないの?……規則違反だ!!!!って怒られるの僕なんだから。チャンとしてね?」

 「めんどくさくて忘れてしまってな。」

 「……まあ、いいや。さて、諸君。現状の話の続きとしよう。…とその前に。状況を始めたわけじゃあないのに、いくらなんでも早すぎる。……って顔かな?」

 「……そこらへんも含めて説明してくれる?」

 「いいとも。……まずは、僕たちの話から始めればいいかな?」


 灯たちがどのような軍隊に所属しているのか気になるところではあるモノの、今の状況はそんなことを悠長に話せる場合でもないだろう。そんな事は知っているので、話の内容を手短にしてもらう方が助かる。曰く、どんな内容の作戦で、何故、こんなにも早く即応できているのか。


 「どんな作戦?」

 「人質救出作戦。」

 「…いくら何でも、展開が早すぎる。大体、そういうモノは、警察の仕事だ。」

 「軍隊もするだろう?」

 「どんな軍隊だよ。テロを未然に防ぐ目的だとしても雑すぎる対応。民間人のいない場所で秘密裏に処理する部隊もいるだろうけど、こんな状況化の中で動く部隊なんて聞いたことがない。もしお前たちが名前通りの衛生兵分隊だとして、なおさらだ。意味が分からない。……今の情況を考えて、来るとしたらテロリストに対応する即応できる特殊部隊だとしても。まあ、そう…だとしても。…思えば、避難誘導の指示も早すぎた。先生方々も迅速な行動だった。……迅速すぎていた。情報を掴んでいたとしても妙だ。だって普通の特殊部隊には見えない。」


 ここまでを早口で言いつつ。この言葉でまとめる。


 「…だから、本当のことを言って。」

 「さあ、どうだろか。」

 「何より、決定的に思うんだけどさ。」

 「…何?」

 「灯。乗り気じゃあないでしょ?」


 人質の救出作戦だとしたら、灯の性格を考えるにそんな顔をしない

 苦虫をかみ殺したような彼の表情は、その作戦に喜んで参加しているようには見えなかった。何せ彼は医療人だ。自身で書籍を読みふける程度には、医学そのものに思い入れを含んでいる。自身でマイ医療キットを部室においていたり、所持しているくらいにはバリバリの医療人だ。彼rの性格と任務の内奥はあっているのに、彼は乗り気に見えない。


 「んで?本当の目的は?」

 「…ん~。まあ、言った方がいいかな?たぶん、ウルイ反対するだろうけど。これは作戦だからしょうがない。ウルイが怒らない。って言ってくれるなら、話してもいいよ?」

 「…言う前に一つだけ言うよ…。……どんなことをするか分からないけど止めるよ?」

 「目標の殲滅。又は回収。」

 「……誰を。」

 「誰だったら、ウルイは困る?」

 「誰なんだよ。」

 「我が学校の、生徒会長。」


 生徒会長。

 綾見石あやみせき。成績優秀で、可憐な彼女は生徒会長という役職にふさわしい人物だ。学校関係の人事評価に対して、一定の苦言をのせることがすきな依馬が、手のひらを反すようにそう言葉を吐くほどには、彼女との付き合いもあっただろう。しかし、彼はそんな彼女を目標とし、何より、殲滅という言葉を使う。元凶が彼女であるなら、その言葉に意味があるだろう。

 だが、生徒会に詳しいわけでもないおれでも、彼女がこんなことを企画したとは思えなかった。…なにせ、意味がない。意味が合ったとしても、理解ができない。


 「この人形たちは、彼女の仕業だと?」

 「これ以上は言えないな。…秘匿義務でね。……ただ。」


 いつものように、いたずらっ子のような顔をして、彼は口先に指を当てる。この会話自体、ナイショな話という事は誰でもわかることだが、彼はそれをわざわざ伝える。そしてそれには、これ以上話せないという、彼が言った意味そのものもあるのだろう。

 ポンプアクション式のショットガンを担ぎながら、彼は俺の今現在の装備を見て、アサルトライフルは似合わない。と言葉を吐いた。確かに、サバゲーでもサブマシンガンの類しか使用していなかった俺は、アサルトライフルが使い慣れているとは言えない。…まあ、それを言うのなら、実弾を使用したサブマシンガンも同義なんだけど。


 「自分は何をしなければならないのか。君は…もう少し、広い目線で見るべきだ。」

 「お前がそんなものを持って、何と戦っているのか知れ……か?」

 「そんな事は知らなくていいよ。ただ、きみは、自分がするべきことを考えなくっちゃあいけない。それが自分の望んだことになるか分からないからね。出来る限り、後悔はしたくないでしょ?」

 「……どういう意味だよ。」

 「僕らは多少なりとも後悔していることがあった。……だから、友達として、助言したかった。……じゃあ、駄目?」

 「……依馬に後悔はないだろ。」

 「あるんだよ。…少しばかりだけど。…んじゃ、行くよ。……僕たちはね。」

 「…ん。わかった。」


 先行する。そういって依馬は行こうとする。

 行こうとしたから、声をかけた。


 「ねえ。」

 「…何?」

 「俺も行く。」

 「……民間人は、連れていけないんだけど?」

 「民間人が、こんなところで居られるか?だから、俺も一緒に降りる。…ついでに、お前たちの任務とやらもお釈迦にしてやる。」

 「……どうやって?」

 「”お前がそれを考えていないわけがないだろ?”だって、”お前はそういう奴だ。”…付き合うよ。」

 「…本気?」

 「マジ。おまえが裏切ったとしてもやる覚悟だから。心配するな。」


 そう言ってやったんだ。

 長年の友人として、部活動の仲間として。取り残されるのが嫌だった。というのも少しあるのかもしれない。だけどもそれよりもあぅたのは、こいつらが望むことをしている時に、役に立てるとしたら、手伝わない理由がない。…そんな小さなことだった。


 「依馬だって同じでしょ?嬉々と祖手人を殺す奴じゃあなくて、研究室に引きこもりたいタイプの科学者が。そんな事、認めるわけがない。」

 「…どうかな?」

 「何年友人やっているんだよ。」

 「…まあ、いいか。……思っていたのとは少し違うんだけどね。」


 諦めた。というよりも、こうなると知っていたように

 やっぱり、こいつはこいつである。その在り方は、何時もの依馬と変わらない。……だからこそ、こいつはそんなことはしない。何せ、それは依馬の趣味じゃあないのだ。友達だから。という理由も多少あるというのも認めるけど、やっぱり一番の理由はこれだ。


 「…行くぞ。依馬。……そろそろ時間だ。」


 短く、端的に灯は言って、M4を構える。

 それに呼応した依馬は、自身のショットガンを鳴らした。民間人は、跡に続くようにと答える彼に、こちらも悪態をつきながら同意をする。俺は、息が切れ切れのミヤを背負い。その跡に続く。


 「ついてきな。ルーキー。」

 「うるせえ。変態科学者。」


 どこか笑みを浮かべてそう零す友人に、俺は悪態で返した。

 








 

_____________________







 

 「クリア。」

 「クリア。」

 「……オールクリア。CP。CP。接敵5。こちらの被害なし。目標エリアに到着。今から突入する。……ヘッドブレイカー。室内の様子は?」

 『……室内はターゲット以外人影なし。』

 「了解。これより突入する。……GO!!!」


 ショットガンを構え。アサルトライフルを構え。彼らが突入を開始する。


 「右クリア。」

 「正面クリア。ターゲット発見。……行くぞ神様。…時間がない。」


 灯は、そういって彼女の手を取ろうとした。


 「残念。」


 彼女はそう答える。


 「おそかったね。」


 瞬間。

 部屋は光に包まれた。

 



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