〜私は道具じゃない!〜
護衛の者に連れられて朝早くローブで顔を隠して祖国を人知れず出発してから速くも4日たった
ケルダンとは同じ商国として強固な関係を築かなければからならない
そのためにもレナお前にも頑張ってもらわなければならない
そう父に言われて来たものの…
ジウタールの中枢に携わる政治家一族タール家
歴代の当主はほぼ必ず宰相として国民選挙で選任される
それは国民に善政を引いてきた実績がある家柄に加えて
前身の旧ジウタール王国の継承者ということが大きい
現在宰相を務めるジ・タールの四女として生まれた私は
今まで政治的なことなどを任されたことはなかった
家族みんな政治に関わっている具体的には
長男と次男は父の秘書としてゆくゆくは宰相として手腕を磨く
長女と次女はそれぞれ名門貴族に嫁ぎ
三女はアースカムの皇帝候補のお妃となった
そんな中で私は学校に行ったり家で母と裁縫をしたり平凡な日常を送っていたのに
ジウタールとの関係を良くするためにと私を遣わした
…とは言うが実際には政府側の人間で会ったのは商工省副大臣ただ一人で会話も
「お父上様はご息災ですか?」
「えぇ近頃は釣りにハマっているそうですよ」
といった具合に短い世間話程度で終わった
恐らく実務者協議として船に同船していた
事務次官が裏でがんばっているのだろう
実際は父の名代などと言うが私はただのお飾り
父の本当の狙いはここで未来の旦那を見つけてもらって
周辺各国にパイプを作る事で…
所詮女は政治の道具くらいにしか見てないのか…
晩餐会でお酒が入ったこともあって
そんなことを思いながらボーッと窓を眺めていると
「あの…大丈夫ですか?」
タキシードを身に着けた若い紳士が声をかけてきた
「はじめましてレナ様私は税関長を務めている…」
お読み頂きありがとうございます
次回は別視点からの物語です
今後もお読み頂けたら幸いです