第1話 帝国よ、永遠なれ
王国歴1563年ーカルジス王国王都リネンの大聖堂にて聖女がある神託を授かった。
『黒き天使目覚めん時、世界は再び破滅せん、その力取り戻さん時、世界は血に染まらん』
【黒き天使】それは神代のおとぎ話に出てくる天使である。ただ力を求め天界を壊し自らの主である神を殺し力を奪った反逆者、欲望のために幾つもの国を滅ぼした殺戮者、自らの野望のために1つの時代を終わらせた破壊者【堕天使ルシファ】、【魔王ルシファ】と畏怖された大天使である。
そしてその知らせはすぐに広がり、周辺諸国を震え上がらせた。
そこは人々に【瘴気の大陸】と呼ばれ恐れられる場所、常に瘴気が発生し常人では1時間もせず死に至るだろう。この大陸は神代の古戦場とされその影響で大陸全体が高濃度の瘴気に覆われ光の届かない闇の世界が広がっていた、その大陸の中心部そこにそれは広がっていた、それは『穴』そう表現するにはあまりに深く大きな『穴』だった、巨大隕石が落ちたとしてもこうはならないだろう、この穴は冒険者たちに発見されてからこう呼ばれていた『世界の果て』と、あまりに広く果てのない大穴、見る者を恐怖させ冒険者たちからはこの穴の底に世界の果てがあるのだと信じられそうつけられた。
そこは『奈落の底』そう表現するのがふさわしい場所だった、光の届くことはない闇だけが存在する場所、そこにそれはあった、時の流れで至るところがボロボロになった街、崩れた城壁、崩壊しかけの城、それは忘れられし伝説の国、世界を一つに統一しようとした帝王が眠りし場所。
その古城の地下、そこには古びた地下聖堂があった高い天井には『神話の神と悪魔の軍勢が激しい戦いを繰り広げている戦場の様子』をモチーフにしたような絵画が描かれ、その下には至るところに豪華な装飾を施された祭壇があった、6枚の翼を持つ天使の石像が祭壇の左右に2体ずつ置かれ、そしてその上に『十字架に磔にされた罪人』をモチーフに彫刻した装飾などが施され黒く輝く何かの金属で作られた、4メートル程の古びた『パンドラの箱を模して作ったような』棺桶があった。
棺桶の全体がさびつき古びてもう開けることができなさそうな棺桶だった。
そこに『それ』は眠っていた。
(…)
それは唐突な目覚めだった、ずっと悪い夢を見ていて突然起こされたような最悪の気分だった。
(此処は何処だ……)
私は声も出せず、しかたなく私は固まっていた思考を回転させて今の自分の状況を考えた。目を開こうとして開けず、身体は石のように固まり身動きできなかった。
(身体がまるで動かない)
私は身体を動かそうと必死で力を入れた。
(ん…)
しかし筋肉が硬直し、まるで動かなかった。
(駄目か……)
私は硬直した身体の細胞を元に戻す方法に心当たりがあった、それは身体に魔力を流し込むという方法、魔力それは動物や植物など生のある全て者が持つ力の根源である。それを身体に流し身体の細胞を活性化させようとしたのだ。
(くっ……魔力を込めすぎた。)
しかし私はなぜかまったく魔力の流れをコントロールできず、魔力の込めすぎで魔力暴走が起き、私の身体が爆発した。
(まったく面倒なことだ……)
私は魔力暴走で全身の肉体がボロボロになったが、私は身体を魔力を使い自己再生することができたので結果オーライだ。
(此処はメゾニスの城か、酷い荒れようだな……) 私は動くようになった腕で棺桶を力ずくで開き、魔力で回復した目を使って周囲を見た、私の目は特別で暗闇でも問題なく見ることができた。
この古城は私の国アポロン・ニクシスの帝都メゾニスの皇城だったものだ、かつては美しくかった城も街もすっかり荒れ果てていた。
「あの忌々しい神どもめ」
城の外に出た私は、荒れ果てた街並みを見てそう呟いた。
かつて大きな戦争が起こった。多くの国がその戦火に巻き込まれた。始まりは2柱の神たちの争いによって、その戦争の火種は神たちの気まぐれだった、神とは人々に信仰されることで力を得ることができる力を持つ、そうしてより高い力を得るために神どうしが争いを始めたのだ、その戦いは天使たちから人へ国へどんどん増していった。
これは私の古い記憶、その戦争が始まった頃私はナシアスとカルジスという国の国境沿いの小さな村に住む子供だった、私は父、母、姉の4人家でその村に住んでいた、母は私が眠るまで誕生日に町まで行って買ってきてくれた本をよく読んでくれた、父は私が独り立ちしても生きて行けるように剣術や魔術の使い方や文字の読み書きなどを教えてくれた、姉は私が森で足を怪我したときに(バカね)と言って笑いながら家まで私をおんぶしてくれた。私はそんな家族が大好きだった、私はまだ子供でこんな日がずっと続くんだと思っていた。
だか全てはある日に崩れた、カルジスがナシアスに攻めて来たのだ、私の村はカルジス軍によって蹂躙された、父は村の義勇兵として戦った、村は38人の小さな村で圧倒的な数の差により父は為す術がなく殺され異教徒として木に磔にされた、私の母と姉は私を家の床の物置に隠し、目の前で捕まり『神にはむかう異教徒』という理由で辱しめられ、兵士たちに犯され泣きながらなぶり殺された。それを隠れて震えて見ることしかできなかった私は心の中で何かが崩れていくのを感じた、私は村で並外れた剣術の才能を持っていた、父は私の剣術を(将来王都で騎士になれる)と誉めてくれた。
だかそんなこともうどうでもよかった、私は兵士の一人を奇襲した。兵士の鞘から剣を奪い、兵士の首筋を斬り裂いた。そしてもう一人の兵士の鎧の隙間を狙い、片方の足の腱を斬り動きを止め、首を斬り落とした。
私に『恐れ』は無かった。ただ自分から家族を奪った敵を殺したい、それともただ自分の心が壊れていただけだったかもしれない。私はその時全ての兵士を相手に戦う力は無かった、だが私はあたり一面を敵の血で染めあげるまで戦った自分の命の炎が消えるまで、そして多くの敵兵を道ずれにして死んだ。
私は死んだはずだった、私は気がついときに私の前に一人の女が立っていた、彼女は自分は神だと言った。だか今は力を失い過ぎ、自分の代わりになる魂の器を探していたと、それが私だった私は生まれつきとてつもない高い魔力を持っている、だから選ばれたのだと、私は(光栄に思います。)と言い自分の器を差し出した。
神は私に代わりの器をくれた。自分の配下の天使としての肉体を白銀に輝いた銀髪に空を模したような碧い瞳、シミなどない白い肌、高い鼻に美しい輪郭を持つ、背の高い青年で背中に3対6枚の白い翼を持ったまさに神の使徒のような肉体をだかそんなことはどうでもよかった。
その時私の中にあったモノは、ただ『この世の理不尽を覆す』だけの力が欲しかった。私は待った神の力が最も弱くなる時を神への信仰が減り力を失った時を、そして私は神を裏切った。神とは肉体ではなく概念でできた存在である、概念を殺すには概念で作られた武器を使わねばならない。私は天界の神殿の宝物庫からある神剣を盗みだし、神の不意を打って概念でできたその心臓を貫き殺した、私は神の持つ特権能力の権能の一部の力を奪った。
神すなわち自分の主に背信した天使は堕天使へと堕ちる、髪と翼が黒くなり、目が紅く染まる。そして二度と光を浴びることができなくなる呪いを受ける。光を浴びると翼が焼け落ち、肉体が死に、目を失明させる呪い。だが私は神から全ての光を扱うことができる『神光』という名の権能を奪ったことで私は光を浴びることができなくなる呪いを抑え、髪と翼が黒くなるだけですんだ。白い髪の色はどんな闇よりも深い黒に変わり、碧い瞳は血のように染まり、白い翼は光を飲み込むような漆黒の翼へと変化した、そうして私は堕天使へと堕ちた。私は神殿に居た他の天使を殺し、紅く染まりゆく空へ翼を広げ飛び立った。
その時の私には1つの夢があった。
『この地にもう私のような存在が生まれなくてもいい世界、戦争や紛争でかつての私のような子供が生まれない平和な世界を、未来永劫そのようなことが起こらない永遠の理想郷を築き上げる。』愚かな支配者はあのような悲劇を生むなら、誰もが幸せに暮らせる世界、そんな夢のような理想郷はこの世界に存在しないだろう、ならば私が作ればいい、たとえ血で雨を降らせようとも、人々に恐れられどんな汚名を背負っても、誰かが止めなくてはならない、その悲劇の連鎖を。
私がその夢を叶えるために神のような理不尽な存在は邪魔でしかなかった。私はその理想のために全ての神を滅ぼし、世界を1つに統一する、そして永遠の理想郷を築く、その為に私はどんな犠牲を払っても前に進む覚悟を決めた。
『たとえそれが破滅への道だったとしても』
表現力が足りない所があるかもしれません、でもよろしくお願いいたします。m《._.》m