出発
「付きましたよ」
男がそう言った瞬間
開いたドアから見えたのは
「ここは、空港?」
そこから見えたものは大型とは言えないもののかなり大きな飛行機や
赤いカーペットが続いた先にある2,3人乗りの小型のジェット機など
どこから見ても空港にしか見えないものだった。
「ええ、ここからは飛行機にて移動します」
そういって男は扉を開けた
開いた扉の先には、大きな通路があり
一般人が使うようなものではなく、芸能人が使いそうなものだった
「こ、この通路で間違いないんですか」
「はい、間違いありません、時間がありませんのでお急ぎください」
そういって扉の先へ進んでいく
まるでハリウッドスターにでもなったかのような気分だ
「すごいところですね、俺こんなところ始めてきました」
俺が本気で感心していると、
「浮かれていられるのは今のうちだけだと思いますけどね」
男の人は意味深な感じで、不敵な笑みをこぼしながら言った
俺は深く考えないようにしてさっさと飛行機まで行ってしまおうと思い
早足でレッドカーペットの上を歩いていく
「そんなに慌ててもいいことはありませんよ」
「こんなところに長くいたら気がくるってしまいそうなんです」
これは本心からの一言だった
本当にこんなに自分の住んでいた価値観と違うところに長時間いたら
頭がどうにかなってしまうという、絶対的な自信があった
「分かりました、では急ぎましょうか、少々予定より遅れていますので」
そういって、男の人も歩くペースを上げていく
俺は置いて行かれないようにペースを上げて必死についていく
「付きました、ここから、飛行機に乗り込んでいきます」
シャンデリアや高そうなツボなんかで装飾された通路は思っていたよりも長く
飛行機の乗り込み口につくまでに、意外と体力を消耗した
「これでも毎日トレーニングしているので、そこそこ体力はある方だと思ったんですがね」
「この程度の移動で疲れているようではこれから先、一瞬で死にますよ」
その言葉で、俺はこれから何が起こるか
大体悟ってしまった、これから俺、地獄に行くんだなっと
「今から帰らせていただくことはできませんか」
「すみませんがそれはできません」
帰りたい俺に対し、無慈悲な言葉で即答される
仕方なく、男に続いて歩く
「この扉から飛行機に乗り込んでいきます」
そういって目の前の扉を開けていく
男の人に続いて扉の先へ進んでいく
飛行機に乗り込むと静かにあとをついてきていた少女に水と薬を渡された
「これは?」
「酔い止めです、飛行機での移動なので念のために」
酔い止めだといわれた薬と一緒に渡された水を飲み、指定された席に着く
窓際の席だったため、たいつくはしないだろうと思いながら
朝早くに起こされてから、特に説明もなくこんなところまで連れてこられた
理由を聞こうとしたが、精神的疲労のためか先に強烈な眠気に襲われた
今から帰ることはできなさそうだし、休めるうちに休んでおこうと
俺は自分の上着を布団代わりにして寝ることにした。