男と少女
「朝早くからご苦労さまです」
開けたドアの先には小さな少女と大柄の男が立っていた
「えっと、これはいった
「いきなりで申し訳ないのですが、旅行の準備をしていただきます」
大柄な男が1歩前に出て言った。
こんないきなり、旅行の準備をしろ?
おかしい、なぜ俺のところなんだ
いやきっと間違えて来たんだ、そうに違いない
「えっと、それはお隣さんか誰かと間違えていませんか」
「いえ、あなたで間違いありません水無月 雪夜様」
なぜ俺の名前を知っているのか、いや、それよりも今は
「確かにそれは俺だけど」
「なんでこんなに朝早く、しかも寝起きで旅行の準備をしなくちゃいけないんですか」
「いえ、今はお答えすることはできませんが、最悪の場合は強硬手段で」
強硬手段?やばいやつだこいつら
「分かりました、とりあえず上がって少し待っててください」
そういって家の中に謎の2人組を招き入れた。
今はとりあえず近所の人たちにばれないように
そして少しでも時間をかけて準備するしかない
「とりあえず旅行っていってもどのくらいの準備が必要ですか?」
今はとりあえず時間を稼ごう
「そうですね、3日分もあれば足りると思います」
「分かりました、3日分ですね」
3日間もの間何をする気なのか分からないが逆らわない方がいい
「それと衣服だけでなく、ライターや非常食もあったほうがいいかと思われます」
「ライター?」
非常食ならまだ分かる
船なんかの移動で長い移動になるとき用意されている食料がアレルギーなんてことがあるかもしれないし
でもライターなんて何に使うんだよ
タバコは吸わないし、ライターなんて使ったことはをほとんどない
でも今は下手に質問ばかりしないほうがいい
刺激して、殺されたら最悪だ
とりあえず言われた通り
3日分の衣服と非常食、ライター、歯ブラシセット、スマホとPC、くらいかな
「スマホはかまいませんがPCはもっといけません」
「あ、そうですか」
そういわれ、しぶしぶPCをリュックから出す
「そういえばなんであなたしか話さないんですか、そちらの少女はいったい」
「今は気にしないでください、いずれ時が来たらお話しします」
「分かりました、今はこれ以上聴きません」
と言うか聞けません
「これくらいでいいでしょうか」
「はい、大丈夫だと思います、では行きましょうか」
2人が立ち上がり玄関へと向かう
「これからどこへいくんですか」
「行けばわかりますよ」
一緒にいた小さな少女が、俺の服の裾を引っ張った
「珍しいですね、あなたが自分から人に触れるとは」
(過去に何かあったんだな)と俺は解釈した
「分かりました、行かなくて後悔するより、行って後悔した方がいいですもんね」
その選択が、取り返しのつかない事態へと巻き込まれるきっかけになるとは
この時の俺はまだ知らなかった。