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魔王だけど勇者たちほんと怖い。  作者: 暑季常夏
第1部 今日から魔王(他作品様とは一切関係ありません)
4/13

天使はブラック企業より黒い。

我らの偉大で気高い神よ。

あなたはどんな時でも我々、迷える子羊を見守っていてくれていることは深く理解しております。


生まれてから家族に恵まれ、環境に恵まれ、才能に恵まれて幸せに暮らす無数の人々。その全てが自分の力だと勘違いしている愚か共たちに、それ以上の幸せを与えて人生イージーモードなのだと見当違いなことを思わせて対処しようとしない神様はきっとその者たちを哀れんで笑っているのでしょう。


反対に。生まれた時から悪しき環境に命を与え、碌でもない親の元に子供を与えて苦労と苦悩の日々を送らせる神様はきっと我々に試練を与えているのでしょう。


生まれた瞬間から決まってしまうその人生。なんの苦労もせず生きる者もいれば、苦労の連続で体を壊してまで生きようと努力する者。中には耐えきれず自ら命を絶ってしまう人に、他殺されてしまう人。この圧倒的な差は、きっと神様のいじわるや見放した訳じゃあなく、ずっとずっと見守り試練を与え続けてくれているのでしょう。


なんて深いお方なのだろうか。

不肖私には理解できないような考えを持っているのでしょう。私はそんな慈悲深く、聡明な神様にどうしても言わなけれないけない言葉があります。


「神さまほんと死ね」


純白の清らかなワンピースを着て、眩しい光のような金のブロンドヘアー。背中には小さく少女の手のひらサイズの羽がちょこんと生えている。ワンピースの胸元には黄色のカーネーションを飾り、髪には白いリボンを意味もなく飾る少女は、イヤホンから流れる曲が「くたばっちまえアーメン」と流れると同時に吐き出した。


第三者からみたら耳を疑うだろう。一体誰がそんなことを言ったのだろうと。

少女は十代前半。それもまだ小学校を卒業したてぐらいの見た目に身長だ。その顔も天使のように可愛らしく可憐。穢れなぞ知らないであろうまだ純粋であるはずの少女が放つ言葉にしては暴力的すぎた。


だが、その言葉は間違いなくこの少女が使った言葉だ。その証拠に、この寂れた教会には少女しかいない。

彼女は自分の羽をぴょこぴょこと動かすと、教壇に顔を伏せながら大きなため息を吐いた。


「あーマジやってらんねーですわー。天使っべーわ。辛いわー。ブラック企業より黒いわー」


その後もぐちぐちと無駄に暴言を吐き、気が休まるまでそれは続く。


「マジ神様死ねよ。頭おかしいでしょ?なんで優劣とか付けちゃうんですかねぇ?生まれた環境だとか天性の才能だとか。次の候補者探すこっちの身にもなりやがれってんですよ」


彼女の思考的には不幸な人間と幸運な人間で分けてしまう神様なんか必要ないのである。

が、まあ居るわけねーか。と続く。

そう、神様なんかこの世にいない。全て人間たちが作り出した都合のいい存在で、そんな人知を超越した存在がこの世にいるわけがない。


もしいたならば、不幸な人間なんていないし、途中で理不尽に事故で命を落とす輩だって存在しないはずだ。てかもしいたら私が殺す。優劣なんていう固定的概念を作った神様なんかいない方が世の為、人の為だ。


あ、神様はいないけど天使はいるんですよ?

ほら、この私がそうですし。こんな可愛らしく見た目だけで天使なのに中身も聖母のように心が広いやつはいない。


なんて思っている天使だが、今すぐ全信仰者に土下座して詫びるべきだろう。

だが悲しいかな。彼女の言う通り、見た目だけは天使なのだ。よく人間たちが、「まるまるちゃんマジ天使!」と比喩で表現するが、彼女の場合はそんな必要がない。

誰もが認める。その容姿に、どこまでも完成された壊れそうなほどに美しい華奢な体は千人が、いや。何億人といようと彼女を天使だと一目で思うだろう。


そう、見た目は。

中身を知らなければ大天使。


「本当に天使辞めたい、なにこれ。天使ってもっと気高い存在じゃないんですか?なんで人間たちに紛れて四方八方走り回って有能な人材探してるんですか。右の大陸は全滅ですし。よく私も我慢した方ですよ」


そう、彼女は天使としてのお役目を果たすために、世界中を回った。

様々な国に行き、自分のお眼鏡に叶う人物を探しているのだ。だが結果は散々だった。


どの国に行っても、周りが持ち上げたに過ぎない土台で我が物顔でいるようなやつに、家の権力や地位を利用して登ってきたやつしかいない。所詮、政治と同じで親の七光りを利用として高い場所から見下ろす狐仮虎威ばかりだ。どこまでも役立たずばかり。

どれだけ回っても天使には糞食らえな人しかいない。


「はぁ……。もういいでしょう。今日が最後です。今日ダメでしたら諦めましょう。あっちの世界の魔族や人間たちには悪いですが私はもうゴールしてもいいはずです」


そう呟くと嫌々ながらに身支度をする。

と言っても黄金でできた双眼鏡のみなのだが。


「じゃじゃーん。天使的アイテム、『貴様見ているな?』。この道具があれば人間の性格、今までの人生の汚点に美点経歴を一瞬にして映し出し数々の眠る才能を一発で明らかにします。すげーですよ?ちょーすげーですよ?」


誰に説明しているのかは分からないが、こちらの説明する手間が省けたというところか。

彼女の言った通りのアイテムである。


これを使って彼女は探さなければならない。


「今日こそ見つけてみますよ。八代目魔王様」


天使は笑顔で「えいえいおー!」と右手を高く上げると、小さな羽をパタパタとして空へ飛んだのだった。

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