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赤髪の少年

 一人の少女がオリベル村にやって来る五年前、このオリベル村に一人の少年がハンターになるため、向かっている時の事だった。


 ◇ ◇ ◇

 

 薄い茶色の髪と顎髭を整えた行商人が手綱を取る馬車はガタガタと揺れて、荒れた山道を抜け、平原を走っていた。


「坊主、もうすぐ着くぞ。オリベル村だ」


 手綱を取る行商人が後ろを向き荷台に乗ってフードを被った少年に声を掛ける。


「あの村に行くってことはハンターになるためか?」


 そう行商人が尋ねると、少年は返事をし頷いた。


「そうか、俺の息子もオリベル村でハンターをやってるんだが、かなりの腕前みたいでな。もしかしたら、世話になるかもな」

「ああ、そうなればいいですけど……」

「……っ!」


 突然、行商人が馬車の手綱を思いっきり引き停止させた。そのためか、少年は荷台で頭を打ち付けた。


「痛いじゃないですか。急に止まって何なんですか?」

「いや、前のあれだよ」

「あれ? ……っ!」

「あれは確か、飛竜種とか言うヤツか」

「ええ、そうですけど、なぜこんな開けた平原に?」

「……坊主、奥の方をよく見ろ」

「あれは、小型のモンスターを捕食してるのか」

「仕方がない。ここはゆっくりと音を極力立てないように慎重に行くとしよう。坊主、気配を消せよ」

「分かってます」


 行商人は、手綱を静かに取り、馬車をゆっくりと走らせた。しかし、そう上手くは行かないものである。

 飛竜種がこちらに気付き、けたたましい咆哮を轟かせる。


「すげぇ咆哮だな。坊主、しっかり捕まってろ。一気に駆け抜けるぞ」


 手綱を引き、勢いよく馬車を走らせ、飛竜種の脇を通過して行く。


「後もう少しだ。持ってくれよ!」


 逃げる馬車を後ろから追いかけてくるように、飛竜種は地上を猛スピードで駆けてくる。


「まずい。このままじゃ追いつかれちまう」


 その時、馬車の上を超えて飛竜種の両眼に二本の矢が突き刺さった。それに続くように、火薬式のボウガンの銃声が聞こえたかと思うと、飛竜種の頭上に散弾が当たるのと同時に爆発し飛竜種がよろめいた。その隙を見逃さず足元を一人が太刀で切り崩して、倒れ込んだ所に一人が大剣を振り下ろし、飛竜種を仕留めた。


「取り敢えず、討伐か」

「はい、ですが、最近よく飛竜種が村の近くの平原まで来ているようですね」

「確かに変だな。一応、ギルドに調査依頼を出しておこう。それと飛竜騎士隊に周辺の安全確認に出てもらおう。何が起きてるのか、すぐに分かるだろう。それは、これから村のギルドに討伐報告と併せて俺が報告しておく」

「では、私たちは飛竜種から素材になりそうなものを剥ぎ取っておきます」

「頼んだ」


 太刀を携えた青と白が混ざり合った兜と鎧に身を包んだ男は、村のギルドへと向かっていった。残り三人の内、火薬式のボウガンを使っていた赤い帽子と洋服に身を包んだ男と、大剣を携えた真っ黒の兜と鎧に身を包んだ女は飛竜種から武器や防具などの素材を剥ぎ取る。


「剥ぎ取りは二人に任せる。俺は、馬車の奴らを村に送ってくる」

「分かった。後で、剥ぎ取ったものを届けに行くよ」


 弓を使っていた黄色と翠が交互に合わさった帽子と洋服に身を包んだ茶髪の男は、馬車の方に向かっていった。


 ◆ ◆ ◆


「誰かこっちに来ますね」

「ああ、俺の息子だよ」


 馬車の方に向かってくる男は、馬車の手綱を握る男に近づいた。


「……親父、来るならギルド間の連絡網を使ってくれ」

「すまんすまん、急いで来たもんだからな」

「誰か荷台に乗せてんのか?」

「ああ、一人だけな」

「ハンター志望者か?」

「そうらしいぜ」

「横に座らせてもらうぞ。取り敢えず、村にさっさと入ってくれ」

「おお、そうだな」


 馬車の手綱を勢いよく引くと、ゆっくりと動き出しオリベル村に入った。しばらく進んだところで、馬車は止まった。


「さて、坊主。ここからは俺の息子について行け」

「親父……」


 荷台に乗っていた少年は荷台から降りると、フードを下ろした。その下からは、赤い髪で所々に薄い黄金色の髪が混ざっていた。その右肩には大事そうに何かが入った包みを掛けていた。


「そういや、名前言ってなかったな。俺は行商人のムーベルだ。月に三回、オリベル村で武器や防具などを売っている」

「俺は、この村でハンターをやっているククルだ。で、お前の名前は?」


 ムーベルとククルが簡単な紹介を終えると、赤い髪の少年に名前を聞いた。


「俺は、スザクです」

「スザクか……お前は、ハンターになりたいんだな」

「はい。俺は、誰よりも強いハンターになりたいんです」

「そうか、ならついて来い。お前のハンター登録の保証人になってやるよ」

「……ありがとうございます」

「坊主、正式にハンターになったら俺の店に来い。俺の店は、この馬車が目印だ」


 スザクは、頷いた後、先を行くククルを追いかけた。ククルは、何も言わないままギルドへと向かっていく。その後で、村の様子を見ていたスザクがククルに話しかけた。


「あの、ククルさん」

「なんだ?」

「村の皆さんが忙しそうですけど、何かあるんですか?」

「ああ、そう言えばもうすぐ豊穣祭だったな」

「豊穣祭って何ですか?」

「この村に昔からある伝統的な祭りの一つだ。今年の豊作とこの地にいるとされている豊穣神を讃える祭りだ」


 それ以降、会話することなく二人は歩いて行く。


「さて、着いたぞ。ここがオリベル村ギルド支部だ。さっさと登録を済ませるぞ」


 ククルが先に入り、後からスザクが続いて入った。


「スザクだったか。付いて来てくれ」


 ギルド支部内にはクエスト受付所に道具屋、ハンター登録所がある。まずは、ハンター登録所で仮登録をする。その後、クエスト受付所で幾つかのクエストを受ける。受けたクエストを全て完遂した後、ハンター登録所に報告する。これが終われば、正式にハンターとして登録される。


 スザクは、登録所で指示通りに仮登録を済ませた。


「さて、仮登録は終わったな。次は、クエストに出てもらう。受付所で討伐、調査、採取の3つのクエストを一つずつ受注して来い。俺は先に、飛竜船乗り場で待ってる」


 ククルはそう言いギルド支部から外に出て、飛空船乗り場に向かった。その後、スザクは、討伐、調査、採取の3つのクエストを受注しククルの待つ飛竜船乗り場に向かった。

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