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闇夜のカラス

小説自体にスピードがあり特定できない知能犯を描きたい!?

カラス1

[真夜中のカラス]

 都会の暗闇も薄れ明け方には少し間がある頃、私は帰宅するのである。何時もかなり遅い夕食をコンビニで買い求め、部屋に駆け込むのが日課であった。その日も私はコンビニで弁当を買い求めると外へ出る。私の自動車と隣り自動車との間で、何にか黒い物が動いた様に見えた。

何となく探して見たが何にも気になる様なことも無く、ただ自動車が整然と並んで居るだけである。日頃この辺にはカラスがいっぱいたむろして、コンビニから出る食べ物を漁っている。しかし夜中に食べ物漁りでもあるまいし、暗闇の烏?いや私の目の錯覚では無いのか、私は目を擦りながら再度確認してみたが何も捕らえる事が出来なかった。

「上村尚哉三十歳」T自動車の企画部に勤務している。仕事内容はお客様相談室に勤務しており、帰宅の遅いのは仕事柄である。そのうえ一人暮らしではコンビニ弁当が主であり仕方の無い事であった。

「尚哉おきなさい!」「々!」と大声で目覚まし時計が騒ぐ。4~5回位繰り返すと、眠い目を擦りながらベッドからはい出る、時計を見ると4月23日AM8:00時を回って居た!大急ぎで会社に向かうが今日も街中は混雑しており、思うように車が前へ進まない。やっとの思いで会社前に着くと、もう9時を大きく回っていた。

 「上村」さん!大声で里中が呼んでいる。「大変よ!モニターが変なの」里中は少し強引に私の手を引きながら企画部お客様相談室に入って行った。早速モニター画面見るとそこには一羽の鳥が映っていた。その鳥は画面いっぱいに飛び回り、何も語らず、我が物顔で飛び回っている。

 なぜメッセージが無いのか?なぜ鳥の映像だけなのか?私は何回か画面をリセットしたのだが、すぐに立ち上がり映像はそのままである。「里中!何時ころから映像が続いているの」尋ねると「はい、朝出勤してすぐに」と答え心配そうに「あの~先方のアドレスが無いんです」と里中が言う、

 「アドレスが無い!」「そんな事があり得るのか?」私はつぶやきながら、何回かキーボードを打ち込んだのだが画面が動かない。コンピュータが何者かによってコントロールされて居るのだ。

 我々の騒ぎを知ってか向田課長がやって来た。「上村君どうした!トラブルか!?」話をかけて来た。私は少し間を置くと「何処の誰かは分からないが、コンピュータに侵入して来たのです」と話し「相手が去って行くのを、持つしか有りません」と答える。また無理やり操作するとコンピュータが壊れやすく、今までのデータ-が消えてしまうとも話し、課長に納得して貰ったのだった。

 課長はうなずき「相手が分からないのではしょうがないか」と言い何か変わった事が起きたら連絡する様話すと部屋を出て行った。私たちはいつもと変らない仕事に戻り、里中だけがデスプ-レを見ながら窓口担当業務を行っていた。T社では御客様の窓口としてインタ-ネット利用の大型デスプ-レを設置していた。 「はい、T社お客様相談室の里中です」と映美の快調な対話が快く辺りを包み込んでいた。里中映美、N大を卒業して3年目の25歳である。色白の美人で背も高く、女優の上戸彩ちゃんに似ていると思っているのは私だけだろうか。

 「あ!」と映美の叫ぶ声がした。私は何事かと映美の顔を見ると、手でデスプ-レを指している。デスプ-レには先ほどの鳥が映っていて、何やらメッセージをくわえて飛んで居るのだ。私は画面を拡大して文面を読むと(お台場に出向き、観覧車へ乗れ)と書いてあった。

 何だろ、私たちは何か狐につままれたような気持ちである。しばらくしてメッセ-ジが変った。今度は(24)と書いてある。何がなんだか解からない?いたずらかもしれない?私が言葉にすると同僚の山岡が「とにかく出向いて見ましょう、行けば何か解かるかも知れません」と私に呼びかけた。山岡は同期のライバルで学生結婚している。家には二人の子供がいて幸せ家庭を築いている。わたしと違って考えもしっかりして居て、頼りがいがある一番の友人だ。

 観覧車はかなり大きく離れ場所からも良く見え、また私たちの来るのを予感して待って居るようにも見えた。早速観覧車の前に立ち問題のメッセ-ジに値する物を探し始めた。辺りを見渡したがそれらしい物も見あたらない、山岡がたぶん(24)は観覧車の号車でなかろうかと言う。

 それにしても観覧車に乗り何をさせようとして居るのか? 私たちはともかく観覧車へ乗り込みメッセージを受けようとした。観覧車の中には椅子が二つ並んでおり、不細工な男二人で乗るような物では無いように思えた。

私しとしては里中と一緒に乗り将来に付いての話をしたい。しかし里中は私のことをどの様に見ているのか、自分だけの思い込みかもしれない。

 「上村、何も無いようだ、メッセ-ジも無いし変った事も無い。」山岡が言う「やはり悪戯か!」と言いながら私は観覧車を降りた。山岡が何か不思議な事でもあったのだろうか、一生懸命椅子の裏を見ている。 「上村!これは何だろう」と言いながら椅子の裏側を指差した。「何だろゴムホ-ス?いやブレ-キホ-スだ。」山岡が私に向かって得意そうに言った。最近まで工場勤務があり部品関係に強く何処の部品かすぐ解かったのである。「何故ブレ-キホ-ス?」私は手に取りブレ-キホ-スを見てみると、ホ-スの中程に異常があるように見えた。それはホ-スの内部に何か柔らかい部分があり、その部分が問題になっているのだろうか? 問題でもあるならクレーム処理?しかしクレーム位でこの様な手の込んだ事をするだろうか?私はいささか疑問に思った。

 「上村、生産技術の宮本係長に相談して見よう」山岡が言い出す。「宮本係長」と言いかけ私はうなずいた。私たちは生産技術には時々訪問しては、お客様からのクレーム等を相談していたのである。会社へ戻った私たちは向田課長に話すと、生産技術で調べてもらう事にした。私たちの依頼したブレーキホースを手にした宮本係長は、快く受け入れてくれ早速仕事に掛かったのである。

       [ブレ-キホ-ス]                         

企画部へ戻った私に「上村さん、メッセージが」と言いながら里中が駆け寄って来た。「メッセージが変ったんです。」と里中が心配そうに話す。デスプ-レ-を覗き込むとそこには先ほどと同じ鳥が映っていて、メッセージをくわえて画面の中を飛び回っていた。メッセ-ジの内容は(痛んだブレーキホースを使って走っている車があります)との内容である。そして何と登録ナンバーは私の使っている社用車である。

 PM2:00が過ぎた頃「上村君は居ないか」宮本係長が血相を変えて部屋へ入って来た。「これは何の悪戯だ、こんな事が許されない」と言いながら私に向かって、先ほどのブレーキホースを差し出した。宮本係長は尚も「ブレーキホースの内側に傷があり、このまま使用すると重大事故につながる。」何か得意な物を釣り上げた様な出で立ちで、私達へ得々と説明したのである。

 ホースの内部をスキャナーで調べて見ると、内部に傷があることが分かった。その傷はホース内部を一周する様リング状に薄く成って居た。外部からの傷では無いのだ。内部を調べるためにホースを裂いて見ると、何と傷では無くリング状に溶け込んで居た。この様なリング痕はどの様にして作った物か、宮本係長も解からなかった様である。でも外側に異常が認められずホース内部がリング状に溶けている。もしもその事を知らずに使用したら、そしてそんな車が町中を走り廻っていたら、大変危険な事態に成るだろうと説明したのであった。

 早速私は自分の使用している社用車を、宮本係長へ届け調べてもらう事にした。もし私が狙いなら何のため?それから何時この様な状態に成ったのか?私は真剣に考え込んでしまった。昨日は会社から出掛けていない。通勤に使用しただけで特別な使い方をしていなく全く心当たりがない。

 「あ!そうだ。昨日の夜コンビで!」私は声を出して独り言を発した。あの時ブレーキホースに悪戯(加工)されたのでは無いのだろうか?あの黒色の物体はカラスでは無く人間なのか?少しだけ謎が解けて来た様な気がした。デスプ-レに映っている鳥はカラスではないか?そう言えばデスプ-レの中で鳥の部分が、何時も黒く塗り潰されて居る。「これはカラスだ!鳥はカラスなのだ」何度か独り言を繰り返すと確認を急ぐ為に企画部へ戻った。

 部屋に戻ると叉中里が騒いでいた。「上村さん大変よ、叉鳥が映っています!」私を呼んで居る。言われるままにデスプ-レを覗くと、鳥が大きく羽ばたき画面いっぱいに飛び回っていた。その鳥が何やら口にくわえこんで飛んで居る。やがて正面に向かって飛んで来ると「ブレーキホースだ」山岡が言う。画面を拡大し良く見ると、確かにブレーキホースをくわえて居るのである。そして画面中を飛び回って居る鳥は間違いなくカラスであった。

 私は皆の前で、昨日コンビニでの出来事を話した。「カラスなん~だ」中里が言う、山岡がうなずいた。その後、向田課長がデスプ-レを覗き込みながら「これがカラスか?何でブレーキホースをくわえ飛んで居るのだ」と少し怒った声で話す。その後それを聞き入れたのか?カラスが画面から消えたのである。

[ 狙われた100台の自動車]

 再度カラスが画面に現れたのは、PM5:00を過ぎた頃である。今度はメッセージをくわえて飛んで来た。画面を大きく拡大し文面を読んで見ると、何と!とんでもない事が書いてある。この事が私たちを恐怖のどん底へと引き込んだのであった。(このブレーキホースを装着している自動車が、日本全国で100台走り廻っている。)との文面である。何の目的でこの様なとんでもない事を?私は部屋を飛び出ると生産技術へ向かって走った。

「宮本係長」大きい声で叫ぶと、私が運んだ社用車の中から顔をだし「上村君、大変な事が解かった。ブレーキホースは、ある一定の時間が来ると自然に破損するように出来ている」なおも私に念を押した!「このブレーキホースは、ブレーキを踏むたび少しづつ破損し、何回か踏んだ後でホースが破裂し大事故に陥る」のだと言う話だ。私は全身が強張り血が引いて行くのが感じられ、途方も無い事に巻き込まれた思いがした。 

 企画室へ戻った私は、向田課長にブレーキホースの欠陥に付いて話し、途方もない出来事が発生した事を告げたのである。また至急の対応策を求める為、向田課長はメッセージの件とブレーキホース破損内容を、急ぎ根元常務へ相談を持ち掛けた。その話は緊急を要し、私たちは企画部会議室へ召集された。

 出席者は、企画部から向田課長を初めに山岡と私、生産技術は河合部長と宮本係長、それに根元常務に中島副社長であった。話の焦点は(ブレーキホースの耐久性と時間、ネット発信先の特定、それから何の目的でこの様な事を引き起こしたのか)の3件である。話し合いは中々進まず午後11時過ぎても結論に達しなかった。

 第1にブレーキホースはどの程度耐えられるか?それは宮本係長が担当し、耐圧力性能のテスト中であった。次はネット送信である。警察の協力で科学捜査班が、企画部のコンピュータに逆探知機を接続し調査中でもあった。しかし何と言っても謎なのが、3番目何の目的でこの様な(悪戯)をするのか、何処の誰なのか?かいもく解からず、それぞれが犯人像を描いていた。

 <4月24日>朝眠い目を擦りながら出社すると、ブレーキホースの持久性能が判明したとの話しである。早速宮本係長の説明を聞くと、ブレーキの踏み込み回数が約2万回位に経っすると破損するとの話しであった。向田課長に呼ばれ会議室へ出向くと、メンバーは昨日と同じである。各自はブレーキ性能を知ってかすこし緊張した表情である。話しは技術部の河合部長より行われ、次のような事が判明したのである。  「約2万回のブレーキ踏み込み回数で、ホースが破損し事故に遭遇します」と話し「通常2万回と言うと10日間位かと思います」と話を結んだ。根元常務が「10日間とは何と短期間だ、また100台の車を探し出す事が可能なのか」と話すと、向田課長へ「100台の車は何処に有るって言って居るのか!」と話を持ちかけた。「はい、今のところ全国で100台走って居るとしか聞いておりませんが」何かすまなそうに話したのである。

中島福社長が重い口を開け「日本中走廻っている自動車の中から、その100台の車を探すと言うのか?当社扱いの自動車だけでも2000万台位あるのだぞ」と話すと、続けて「2000万台の車輌全部を点検するとしても何ヶ月も掛かるのでは無いか?」私たちを見廻し口を閉じた。まったく途方も無い話であり、対策も立てられない事が実態でもあった。

 警察科学捜査班の調査に変化が見られたのは、私たちが会議室へ詰め掛けていた午前10時頃である。デスプ-レにカラスが現れ飛び廻ろうとして居たのだが、こちらのコンピュータの異変に気づくと素早く姿を消したのである。「相手が気づいた!大変な事に成ってしまった!今後メッセージを受けられなく成ってしまう」と誰もが感じた。一方的だが今までは何がしらの連絡があったのだ、このままでは100台の暴走車両が走り廻り多大な被害が出てしまう。暴走した車はどの様な犠牲を出すのであろう、いずれにしても大変な事に成ってしまったのであった。

 本日2回目の対策会議が始まったのは昼の12時を廻った頃で、今度は警視庁本部からの出席者があった。捜査係長の黒岩幸夫と言う男で、何か鋭い目をした獣の様な男である。中島副社長は100台の車両がターゲット(標的)が捲き込まれた事の大きさを重視し、何も手を下す事も出来ずただ待って居る事は出来ないとして、警察の介入を支持したのである。向田課長が現在までの経過を事細かに説明して、黒岩係長に事の大きさと危険の度合いを確認してもらった。

 対策会議で1番の問題に成ったのは、犯人カラスからの連絡待ちである。科学捜査班の逆探知機では探知出来なく、逆に探知機を察知されてしまったのです。もう二度とネットには送信が無いものと全員で落胆してしまったのである。

 2番目はブレーキのトラブルに気が付かず走り続けている車輌。ブレーキテストでは約2万回で破損する事が判明しているのであるが、全国で走っている自動車の中でT社扱いの自動車はどの位走って居るのか?日本中には約4000万台の自動車が走っており、その約半分がT社扱いの自動車である。2000万台分のブレーキホースを点検するしか方法が無い。

 日本中に整備工場がどの位有るのか?仮にお願いし交換作業を開始してもいったい何時まで係るのか?また全国で走っている半数の自動車が、何ヶ月間も運転出来なく成るのです。日本経済は如何なる?今まで考えた事のない破綻が日本中に襲いかかる事であろうと思うと、我々はまんじとも出来なく討論に激を極めていた。

 私はブレーキホースの交換には何日位かかるだろと考えて居た。協力工場を含め全国の稼動出来る設備は約2000件とした場合(2000万台÷2000件の工場=1万台となる)1万台を1工場での作業としていったい何日で消化できるか?ブレーキホース外観から見ては全然判明出来ず、外して1本づつスキャナーで検査したのでは時間が掛かり1万台も消化出来ない。

 それなら新品を交換すれば1台当たり約1時間で完了するとして。1工場当たりの作業消化量はどの位か?平均してリフト3台を使用出来るとして、1日で何台完成出来るのであろう。作業ばかりが仕事でなく引き取り納車も仕事に含む、意外と時間が掛かるのではないのか。24時間フルに作業するとして、リフト3台×24H=72台である。1日で72台。10000台÷72台=約139日で、約4ヶ月半の期間が要いる事に成ります。問題のブレーキホースは4ヶ月間も無事であろうか?期限が2万回としてきっと10日間位で事故に見まわれるであろう。

 3番目としてはカラスの犯人像である。悪戯なのか?恨みなのか?恨みだとしたら何が原因なのか!今回の出来事に対して何か心当たりはないか!お客様とのトラブルは解決しているのか!その他、社内外のトラブル等を究明する事が必要であった。黒岩係長は「犯人の特定は出来ないのか?」それから「業者間でのトラブル等は無かったのか?」叉「社内でのトラブルは無かったのか?」ひつように聞きに入った。向田課長が「お客様には、そこまでこじれた事もなく、まして話がこじれそうな場合は、お客様担当室の担当者が訪問し、納得して頂く事に成っています」と話し全員に促した。

そのあと根元常務が「業者間で!この様な大げさな事ないが!?、たとえトラブルに陥ったとしても、話し合いで決着がつかない事は無かった」と話した。その後、黒岩係長は社内での問題を促した。社内で起きた問題としては特に無く心当たりが無かった。また全国の販売店を通しての話であるが、あまりはっきりと報告されて居ない状態であり特定出来ない。

      「Eメール」

 突然中里が会議室に飛び込んで来た。あの美人の中里が振り乱して走って来た!ただならぬ事だと皆は直感した。「大変です。犯人からEメ-ルが入ったんです。」今にも泣き出しそうな素振りで話したのである。向田課長が飛び出し「犯人か?犯人からのEメールか!」と尋ねる。中里は大きくうなずくと「はい、犯人だと思います。カラスが現れました」と答えた。

上村は会議室を飛び出すと、駆け足で走りデスプ-レの前に立った。「カラスだ!前回のカラスと同じだ!」少しだけ安堵感に見舞われた。それは、あのまま犯人と連絡が取れなかったらとの思いが有ったからである。多分100台の暴走車で日本中はパニックに陥った事であろう。

ところでEメ-ルは何処から発信されて居るのか、警察の科学捜査班が早速く調べて所有者を特定した。

持ち主は江戸川区内に住む女子高校生、その携帯電話は昨日自転車の籠から盗まれたもので、まだ警察へ届けて無く探し廻って居たところであった。我々は犯人を特定することは出来ないが、携帯電話から発信されたJPSの電波で、発信者の居場所が大まかに解かる様になったのである。前回のコンピュータと違い逆探知しても、相手から発見される心配も無く大歓迎であった。

 その後、カラスからのメッセ-ジが届いたのは、Eメールが最初に届いてから約2時間経った午後3時頃である。何時もの様にカラスは、メッセージをくわえ飛んで居るのです。今回の内容は(私は傷着いた!インタネットが使えない。今後はEメールで連絡をする)との話しである。

 そしてメッセージは続けてデスプ-レに映し出された。(今回の様なことが起きた場合い、今後は連絡を取らない事にする。私を特定しようとした場合100台の自動車も消息不明に成るだろう)と言い出したのであった。

 Eメールは尚も続いて発信されて来た。(100台分の身代金を要求します)の文面である。その後もメールは続き、身代金の金額が判明したのであった。犯人の言い分では100台全部の身代金として10万円との話である。何と100台分の身代金が10万円、犯人は事の重大さを解かっていないのか、1台1千円しか成らない身代金である。捕獲した車両をこんな危険な状態にしながら、身代金はかなりの低額でありいささか不思議であった。

     「身代金の受け渡し方法」

 犯人は身代金の受け渡しを告げてきた。1日10台分として1日当たり1万円を受け取りたい話である。保釈台数は、1日10台として10日間で100台を確保出来るのである。うまく行けば全車を無事に確保出来るかも知れない、しかしどの様な方法で車輌を確保するのか、叉どの様な方法で身代金を受け渡すのか、私たちはその様な事から一抹の不安があった。

 PM7;00時頃カラスから再度連絡が入る。捕獲中(車輌のブレーキに異常きたした物)の車輌受け渡しは、登録ナンバーを1日1回10台分をメールで流すとの話しであった。私たちはその登録ナンバーを基に全国の販売店へ連絡し直ちに車輌を回収させ、ブレーキホースの交換を促す事に成ったのである。

 しかし問題は身代金の受け渡しである。犯人側はどの様な方法で受け取るのか、意外と簡単に犯人が出て来るのかも知れない?もしも簡単に犯人が捕まれば、捕獲中の車輌はもっと早くに判明すると思えた。私たちは息静かにメールの到着をまつ事とにした。

 捕獲車輌の引渡し方法の後に、身代金の受け渡し方が言い渡された。何と全国のT社販売店で毎日(10日間)来場者へ現金で1万円を100名の方に配る様にとの事である。犯人としては全国の販売店を周り、1日1万円を回収するとの事である。それは特定の場所での受け取りで無く、全国の販売店がターゲットに成り特定出来ないからであった。

 それから金額の提示方法としては、販売店で特別利益還元セールと言うイベント行い、100名の方に毎日1万円づつ配ると言う按配である。(販売店の前に毎日並んでもらい100名の方に配るのである)全国の販売店数×100万×10日間=合計で約100億円にも成るのであった。何と犯人の請求額は10万円で無い。100億円である!しかし犯人側には10万円しか渡らない、何と皮肉な受け渡し方法である。犯人を特定しようにも人数が多く全国で100万人にも登るのであった。 

      「登録ナンバーを探せ」

 私たちは犯人カラスから登録ナンバーを知らされる事に期待し、即座に所有が判明出来る様に、手配を進める事にしたのである。全国の陸運局へ直接捜索出来る、ホットラインの作成を依頼し、登録者名がその場で判明出来る様にした。それから全販売店へ手配し、使用者への対策を実施して頂く事にしたのであった。

 「上村さん!最初の登録ナンバーが、送られて来ました。」と里中が私に呼びかけたのは、<5月25日>の朝であった。私は昨日から会社に泊まりこみで対策を練っていたのである。第1回目の保釈車両10台分の登録ナンバーが発表されたのと同時に。全国のT社販売店で一斉に利益還元セールを行い、1万円の大入り袋を100名の方に配ったのである。昨夜利益還元セールを行うと振れ込んだ為であった。その効果が現れトラブルない状態でスムーズに事が運んだのであった。AM10:00第1回目の保釈車両が発表されT社お客様相談室は、てんやわんやの大騒ぎである。

 「福井ナンバー○○○です、宜しく願います。」と山岡が大声で電話中である。その他にもメンバー全員で電話の応対をしている、大阪、長野、群馬、福島、帯広、練馬、多摩、品川、札幌、以上10台である。まさに全国区である!各陸運局の協力にて次々と登録ナンバー(車両の持ち主)が判明して行った。

 販売店では登録名義人へ連絡を取り車両の引き取りを行い、ブレーキホースの交換がスムーズに行われて行った。私と山岡は10台の保釈車の中から都内で使用している、多摩ナンバー車輌(T社多摩支店)へ訪問してみる事にした。

 その車輌は都内のタクシー会社が所有して居る。訪ねて見ると何とタクシー会社では1日で500Kmも走るのです。10日間での走行距離は5000Kmである。ブレーキホースの耐久踏み込み回数は2万回との事であり、とても5000Kmも走れない。せいぜい2000km位であろうか。

日数から見ても4日間位で、とても10日間など走れたものではない。手配の車両はちょうど配車待ちで、待機中であり車庫に保管してあった。私たちは直ちにブレーキホース交換を促し回収したのである。

 社に戻って見ると大半の車両は回収され、ブレーキホース交換が進められていた。宮本係長が「どの車もブレーキホースは、ほとんど同じ位のダメージであり、何か工具を使用したのではないか?」との見方である。「工具ですか?何ですかね?」私は尋ねた。「ホースの内部だけ溶かす特殊な工具」と呟くと工場へ戻って行った。その宮本係長と入れ替わりに、捜査係長の黒岩が企画室へ入って来た。

 黒岩係長は眼光鋭く、疑いの目で私たちを見て居るように思えた。向田課長へ面会を求めると、私と山岡を呼び話し始めたのである。黒岩係長の話は、以前会社に勤めていた元社員を調査して居たのである。不審者は3名で、聞き込みを行って居るとの事で話しを進めた。その不審者は、村井俊治、今野誠一、烏 京平の3名である。

 [村井俊冶]、昨年K大学の情報処理科を卒業し入社したのだが、担当課長と仕事のことで喧嘩になり、3ヶ月で退社して行った。特技としては、コンピュータ-等のハッカーはお手の物である。

 [今野誠一]、埼玉県春日部で当社工場勤務していた時に、集金トラブルが発生し自分で責任を取らされ辞めて行った。

 [烏 京平]、神奈川県掛川市の当社販売店へ努めていたが、販売先である専業者との間で金銭トラブルが発生し、2000万円の弁済金をT社へ返済しその後に解雇になって居た。

       [残された一台の保釈車]

 「上村さん大変よ!長野ナンバー○○○が見つからない様です」里中が電話の前で私を呼んでいる。急いで駆け寄り「長野で不明車が出た」と尋ねた。里中は電話を手渡しながら心配そうな表情で私にうなずいた。長野販売店の話では車の所有者が3日前スーパーで買い物中、カギを付けたままにした為に盗難に遭ったとの話である。もちろん警察へ盗難届も出ており、販売店でも3日前から町中を巡回し、探し廻って居る話であった。

 私は事の重大さを向田課長に話し、不明車が出たなら先方へ出向いて捜索活動を行う事を促した。「すまない、上村これから長野に出向いてくれ」課長は私を一番に名指したのである。その後、私は急いで長野行きの新幹線に飛び乗ると、長野県の地図を広げ販売店からの行動範囲を確認していた。

 長野駅に付いたのは午後6時を過ぎていた。急ぎ足で販売店に訪問し車両の有無を確かめたのであるが、依然として不明であった。販売店では警察の協力を得て、本日はまだ誰1人とて帰らず懸命に探しまわって居る様である。所長の三上さんが「今日は朝から全員で探し廻って居るのです。」と話すとコーヒーを私に勧めた。

 長野販売店には県内に12の営業所があり、それらも同じく不明車を探し廻っていた。「ヒュルリ-ン♪ヒュルリ-ン♪」私の携帯が成った。「上村俺だ、長野はどう成りました?」と山岡が促した。「山岡か今着いたばかりだ。まだ発見されて無い様なんだ」と話すと、山岡が「今日の保釈車輌の中で9台が確保出来た」と話し長野の1台だけが、不明に成って居るとの事であった。

 「また明日から90台、どの様な事が待って居るかも知れない」と山岡がつぶやく「分かった、何としても全力で探す」と不明車の発見に勤めることを約束した。その後、私は寝ないで電話当番を駆って出た。全員で不明車の発見を努める長野北町販売店、夜は長く深く静かに沈んでいった。

 待つ事12時間。<4月26日>朝6時頃けたたましく電話が鳴った。山岡さん電話が!巡回中のサービスカーからの連絡である。「不明車が川へ落ちて居るとの事です。」と一報が入ったのである。発見場所は長野市内から白馬方面に向かう道路(以前のオリンピック道路)その道路と一緒に流れている川があり、その川へ車輌前部から落ちたものであった。

 私は何か頭を強く殴られたような衝撃が走った。ブレーキホースがと何回も頭の中で繰り返し、足が震えて言葉が出ない、私はやつとの想いで口を開き「あの~けが人は、出たのでしょか?」と尋ねた。「いや、居なかった様です。何でも17歳の少年2名が盗んで乗り廻した様です。」その少年達は自動車が必要でなくなった為、川へ落して隠そうとしたのである。

 川へ向かって投下したのだが途中で木に引っ掛かり、隠すところがかえって目立つハメになってしまったのであった。現場は前部ばかりが川中へ突込み、近くを走る自動車からははっきりと見え、少年2名を補導したとの事である。とにかくブレーキトラブルで無かったのだ、やっと私の身体に安心したのか血の気が戻って来た。



 帰ろうとして、新幹線に乗り込み東京駅へ向かっていた。AM8:30頃突然携帯が呼んだ。中里からのメールである(大至急連絡ください)と連絡文が書いてある。私は車掌室へ駆け込むと事情を話し、携帯で中里へ連絡を入れた。「上村さん大変よ!」が第一声である。「昨日始めたばかりの利益還元セールの事で、群馬県で大変な騒ぎになり怪我人まで出ているのよ!」と半分泣き顔で話している様で聞き取る私しとしても事の重大さを感知した。

「話は分かった、課長を出してくれ」すこし冷静に話し中里へ頼む。「上村か、困った事に成った。全国で大反響なんだ」と話すと、利益還元セールでの経緯を話し始めた。全国各地の販売店へ人が押し寄せ、大入り袋を取り合し怪我人まで出たのである。中には社員ともみ合いになるケースも発生している。そんな騒ぎである為か販売店から苦情が出ていた。

 その中でも群馬県の高崎市でとんでもない事件が発生した。販売店が火事に成ったのである。社員の半数が怪我をして、店内にあったサンプル用の自動車全部12台が焼失したのである。向田課長は上村へ「とにかく行って確かめるしかない、直ぐに向かってくれないか」と頼み込まれた。私はまた新たな問題に遭遇したのであった。

 東京駅から高崎へ向かうと、昼の12時を廻っていた。販売店まではタクシーに乗り向かった私は自分の眼を疑った。販売店は何か爆弾でも破裂して焼け焦げになった様で、近づくのが怖いように思えた。ショーウインドは粉々に割れ、中に有ったはずのサンプルカーは焼け焦げスクラップである。いったい誰がこんな事をしたのか、半信半疑で私は販売手に入った。

 警察と消防が検問中であったが事情を話し中へ入れてもらった。所長の話しでは、昨日の朝約100名の方へ大入り袋を配ったところ、夕方には明日の配布を期待して約300人が押し寄せたのである。その中に居た数人が自分の順番が、明日の大入袋を受け取れる順番に、自分達が入らない為腹が立ち店内で暴れ廻ったのである。最初はサンプルカーを叩く程度であったのだが、群集心理とは途方も無く恐ろしく最後には自動車に火をつける事や、社員に暴力を加える事までやって退けたのである

 帰ろうとして、列車に乗り込み東京駅へ向かっていた。AM8:30頃突然携帯が呼んだ。中里からのメールである(大至急連絡ください)と連絡文が書いてある。私は車掌室へ駆け込むと事情を話し、電話を借り受け中里へ連絡を入れた。「上村さん大変よ!」が第一声である。「昨日始めたばかりの利益還元セールの事で、全国で大変な騒ぎになり怪我人まで出ているのよ」と半分泣き顔で話している様で、聞き取る私しとしても事の重大さを感知した。「話は分かった、課長を出してくれ」すこし冷静に話し中里へ頼む。

「上村か、困った事に成った。全国で大反響なんだ」と話すと、利益還元セールでの経緯を話し始めた。全国各地の販売店へ人が押し寄せ、大入り袋を取り合し怪我人まで出たのであった。中には社員ともみ合いになるケースも発生している様で、そんな段階である為か販売店から苦情が出ていた。その中でも群馬県の高崎市でとんでもない事が起きていた。販売店が火事に成ったのである。社員の半数が怪我をして、社内にあったサンプル用の自動車全部12台が焼失したのである。

 それにしても大入り袋を、あと9日間配り続けなくては成らないのである。私は所長に話し焼け跡の隣へ紅白の幕を張り、利益還元セールは続ける事とした。その日はさすがに遠慮したのか、多くの客は集まらなくこちらからお願いして貰って頂いた。その後、私はT社の置かれている事情を所長へ話し、事の重大を分かってもらう事に専念した。

 大体の話は聞いて知って居たのだが、所長としては自分達の販売店が犠牲に成っている事が不満であった。また全国でも同じような小競り合いが発生して、暴動、火事、喧嘩が13件も寄せられていた。人間の考えなんて所詮こんなもんではないのか?ともかく現金が何もしないで手に入る。1日働いて1万円なんて貰えない人がどの位居るのか?考えて見ただけでも分かる淋しい時代である。

 その日のPM5:00には会社へ戻った。私はなんだか脱力かんと睡眠不足から体調がいまいちであった。「ご苦労さん、大変だったでしょ?」中里が労いの言葉をかけてくれた。向田課長の話では、利益還元セールにおける対策として、今後はどの様な事件または出来事が起きても、T社として全力で解決すると言える様な特別対策をこうじていた。全国の販売負担をT社が引き受けると言う、スゴク当り前と言える対処の仕方である。それに着いては、私は今更ながらと個人的に思うところがあった。

 警備室で仮眠を取って居ると、大声の主である宮本係長がやって来た。「上村、やっと判ったんだブレーキホースの傷跡が」そういうと続けざまに「あれはスタンガンを使用したのだ」と話すと実演をしてくれた。スタンガンの先端部分を加工し、ちょうどホースがはさめる様凹を作った器具だった。宮本係長がホースをはさみ約10秒位で、例のホースとまったく同じ様に完成したのである。それはスタンガンの高圧電流によりホース内部が溶解して、ホース内部から薄くなってしまう事が原因であった。また生産技術に置いて昨日収容した車輌10台からブレーキホースを外し、耐久テストを行っている最中で、まだ結果が出ていなかった。

 それにしても遅い。カラスからのメール連絡が無い。皆第2回目の保釈車輌の発表を持ち望んでいた。1部の人達が帰ったPM10:00頃、とんでもないメールが入ったのである。(今日は不正が見受けられた。振り出しに戻る)とだけのメールであった。不正がある!カラスは全国で実施した利益還元セールを見ているのか?

 今更ながらビックリしたのは副社長を含む我々だけではなかった。それにしても全販売店が100名の入場者へ対して、トラブル無で配った訳ではなかった。私が立ち寄った高崎販売店にしても色々な問題が特出し、配った時間が遅くなり次の日に要り込んでいた。カラスはその様なハプニングなどは関係なく、事実だけを考えての今回の仕打ちなのではないか。

 血も涙もないと言う事であれば、今後は慎重に対応しなくては成らないと言うことだ。ただ心配なのは悪戯に日数だけが延びても車は大丈夫か?その事が心残りでまんじりとも出来ない夜を過ごしたのであった。

 翌朝<4月27日>、黒岩係長が私達の出社を待っていた。話は元社員の3名を調査しているのだが聞いて欲しいと、待っていた様である。会議室へは何時ものメンバーが集められ、黒岩係長の話す言葉に耳を傾けた。「村井俊治だが、退社後大学へ戻り研究員として働いていた」続けて「聞き込みをして見たのだが、仕事に熱中していて中々ことを得られない」と話す、本人はパソコンには優れた才能を発揮するが、自動車に関してはまるで無知であり、会社を3月で辞める事に成ったのも、その辺にあったのかも知れないと話していた。

 「今野誠一は会社を辞めると、新潟県のダム工事現場に移り住み、その場所を離れた事が無い状態であった」居場所は朝日連峰の山奥で、町まで出るのに約3時間位かかったと黒岩係長が話した。「次は烏 京平でありますが、都内の運送会社へ勤めて居ります」と言うと続けて話し出した。「1番怪しい方です、仕事がら居場所が不特定であります」仕事の上、日本中を走り廻って居る訳で、カラスを演じるとした場合1番近いかも知れません。

 黒岩係長は尚も話を続ける。「昨日の話だが、やっこさんの会社に行って見た」と話し出す。烏 京平の勤務先の会社は、湊運送と言い築地の近くにあった。訪問して見ると京平は朝青森から帰ったばかりで、会社は休み日に成っていた。住まいは会社の寮に住んで居るとの事であったので、黒岩は早速出向いて見たが不在であった。

 管理人に京平を尋ねると近くのパチンコへ出掛けているらしく、良く行く店を聴き黒岩も出向いて見た。大通りを抜けると向かい小路に大きな看板があった。パチンコ将軍築地店と言い、店は繁盛しているらしく大勢の客がひしめいていた。中に入った黒岩は総務課より預かった写真を手に、ひとりひとり顔を確かめては確認を始めた。

 パチンコ店の奥ほどにスロットマシーンのコーナがあった。京平は身体が大柄で細身の好青年である。コーナの中程に確かに京平がいた。黒岩は姿を見せない様にして、しばらくは観察を始める事にした。午後5時頃に若い女性が京平を尋ねて来て、何やら話し込んでいる様だ。京平は席を立つと若い女性と連れらって店を出て行った。

 後で聞いたのだが若い女性とは、雨宮由香と言い26才で外見的に中々の美人系である。見たところ女優の堀北真希さんとも似ていた。由香は京平の腕にぶら下がり肩を寄せ合って歩いて行く、どう見ても二人の関係はただならぬものと黒岩は感じ取った。

 しばらく歩くと近くコーヒーショップへ入って行った。黒岩は近くで二人の出て来るのを待つ事として、物陰からふたりの会話ぶりを見守っていた。約10分位して京平だけが先に出て、そのあと由香が出て来ると京平と反対方向へ歩き出した。

 黒岩はともかく京平の後を追う事にして、急いで京平が歩いて行った道へ走った。パチンコ将軍の近くで京平を見つけると、尚もしつこく追跡する事にした。その後二人ともパチンコ将軍から一歩も離れず午後11時を迎える事に成った。黒岩は署に電話してみると、カラスからのメールが午後10時に入っていた。 しかし京平は私と一緒にいた。それなら誰がメールを打ったのか?京平はパチンコ店へ戻って、由香がメールを打ったのでは無いのか!黒岩は由香の働いている店[パブ、メルヘン]へ出向いて見た。メルヘンはママと由香の二人で働いている店で、他には常連の客が2~3人カウンターで飲んでいた。

黒岩はカウンターの端に座ると「すいません、ビールを下さい」と少し急いで頼んだ「あ~ら、こちら始めてね」ママが挨拶を交しながらやって来る。「はい、初めてなんです」答えると苦笑をかわした。1、2杯飲んだ後..由香に向かって、「いい一寸話すけど聞いてくれない」と話し出したのだ。「今ね、T社で現金1万円くれるよ!」と得意そうに話し出したのである。

 「1万円ですか?何でです?」と由香が聞き直した。すぐさま黒岩は「利益還元セールと言って毎日100名の方に、1万円づつ配って居るんだ」説明すると「それって誰でも貰えるの!私し並んで見ようかしら?」ママが横から口を出した。すると店の客までが自分も並んで見たいと言い、ママの話に同調する始末である。「由香ちゃん、明日わたしと一緒行かない」とママが誘をかけると「ママ嫌よ、皆に見られちゃう」と由香が答えた。

 少し間をおいて黒岩は由香に、店には今日何時頃に出たのか質問した。「どうして?私し何にかしたのかな?」由香は口を遂げて聞きなおした。「ママこの人、私のこと調べているみたい!」と続けざまに少し強張った声で呼だ。これ以上話しても変に絡まれるだけで、かえって疑われると思った。

 店を出ると黒岩は少し反省して居た、由香にあんなふうに聞き出すべきでは無かった。もつとソフトタッチで話すべきであり、これからもあの店へ出入りしたいのだが、自分が刑事であることを知られてしまい後悔したのである。しかし京平と由香の関係はただの仲間ではないと確信を得ていた。またカラスと特定出来ないが、もっとも近い存在であると黒岩は確信したのである。

 けたたましくドアをノックする音で我々は、黒岩の話から現場に戻った感覚であった。「すみません、メールが届きました」里中があわてふためいて会議室へ入って来た。「里中さん、内容は如何ですか」と副社長の中島が尋ねた。「はい、10台の登録ナンバーが発表され、2回目分と思います」と里中は話した。そのひと言で我々は現場へと、急いで駆け出したのである。企画室は戦場の様ないでたちで、四方八歩へ電話がなされていた。

 「はい、群馬7763ですね」大声で担当の者が話していた。本日解放された車輌ナンバーは中央の掲示板に大きく書かれ、担当者を決めお客様へ照会を行って居る最中である。那覇、岡山、群馬、京都、水戸、いわき、宮城、青森、品川、湘南、合計10台であった。



長い小説なので飽きないで読んでください!?

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