小さな星のペンダント
青年は恋をしていた。
最初はただの友達という意識で、特に恋心というのには無関心だった。
だが、一緒に大学のゼミや講義で話してるうちに、男友達では感じない恋心というものを感じはじめたのであった。
いや、男友達でも感じる人はいるかもしれないが。
季節も夏になり始めており、大学二年生になった青年は、今の自分の気持ちを明日にでも伝えようと考えた。勇気がいる行動だが、青年は今すぐにでもこのモヤモヤした感情を晴らしたかったのだ。
その日は本当に暑く蒸していた。
公園では蝉がけたたましく鳴いており、道を歩く人々は汗だくだく汗のように流れている。
青年はそんな暑い日に、女の子向けの雑貨屋さんに一人で来た。
彼は女の子に告るなら、プレゼントがいると考えた。そこで、このお店に彼女が喜んでくれそうなプレゼントを探しに来ているのであった。
「おっ、これがそれかな」
青年は小さな星がついた小さなペンダントを手に取った。
そのペンダントは大学できいた噂によると、このお店では一番の人気商品であり、近所では女の子を中心に人気商品として有名であった。
その人気の秘訣として星全体にラメがかけられており、暗闇でライトを照らすと輝くのであり、それが小学生から大学生までの女子の間で人気となり、小さな星のペンダントとして有名となったのである。
青年もこの話を聞きつけて、その商品を探しに来たのであった。
迷うことなく店でその商品を買い、すぐに帰路についたのであった。
青年は家に着くといなや、二階にある自分の部屋に入ると、扇風機の電源を入れて机の上に置いてあるピンクの包装紙を手に取るのであった。
彼はラッピングの仕方が書かれた紙を見ながら作業を始めた。
「えい……、こうか?」
包装紙は何回もやり直したり、扇風機の風でぐちゃぐちゃになりかけていたが、汚い部分は内側に挟みこんだりハサミで切り取るなどの工夫をして、多少ではあるが、見栄えだけは良くなっていった。
それは上手いとも下手とも言えないラッピングだったが、青年は満足だった。
本来ならばお店でやってもらえば早い話なのであるが、青年は手作りの方が真心がこもっていいと思い、自分で用意しようと思ったのである。
「これならきっと喜んでくれるはずだ」
青年は一通の手紙をラッピングに挟み込み、うきうきしながらリビングへ向かうのであった。
誰もいなくなった静かで暗い部屋の机の上には、準備されたプレゼントがぽつんと置かれていた。
「どうする、これに細工をするか?」
「いや、今ここでするのは不自然だ。やるなら明日の朝にやろう」
人がいないはずの部屋に謎の会話が響いた。
その声はリビングにいる青年の耳には聞こえず、謎の声も次第にしなくなったのであった。
次の日、青年は大学へと向かった。
その手に持っているカバンの中には、教科書の他に昨日買ったプレゼントが入っていた。
青年は、道路の向かい側にある正門で、明るい笑顔でこちらに手を振っている女の人に気付いた。
「あっ、恵美子さ~ん」
青年は彼女に手を振り返し、急いで彼女の元へと向かおうと思った。
彼女こそが、青年の友人である中村恵美子だ。容姿は綺麗よりも可愛いといった感じで、ゼミの女子からの人気度も高かった。彼女と青年の知り合った経緯については、またの機会にお伝えするとしよう。
なぜなら突然、青年に悲劇が起こったからだ。
きっと、彼女しか見ていなかったのが原因だったのであろう。
青年は道路にある石につまづいて転んだのであった。
その転び方はとてもカッコいいともいえず――
いや、転んだことにカッコいいなんてないであろう。
きれいに青年は後ろの固いコンクリートに向かって倒れていった。
そして強く後頭部を打ち、そのまま目の前が真っ暗になった――
その時、鞄の中からも割れた音が聞こえた。きっと星のペンダントが倒れ込んだ衝撃で割れたのであろう。それは青年の恋が終わったのを告げるかのようだった。
青年は薄れゆく意識の中で思った。
なぜ、こんなところで――
倒れた青年の周りにまた謎の会話が響いた。
「死んだのか?」
「そうだ、彼は死んだ。どう責任とるつもりなんだよ」
「とりあえず、閻魔のところに連れて行こう。ああ……まさか、閻魔の所に魂を持っていくことになるとはな……俺の命も終わりかもな」