世界を廻る船
船の仕事についてから、航海士とは花形なんだと知った。
給与の面でも破格で、一度旅に出たらお金を使う場所もなく高級はたまる一方だった。
そこで世界に向かうにあたって買おうと思っていたものがあった。
それは、カメラだ。
初めていく場所を収めておかなくてはいけない気がしたからだ。
世間ではなるべく小型になるほど良い、とするカメラが主流だったが
一は当時で200万?20万?したプロ用のものを買った。肩から提げて大きな荷物になる代物だ。もって行くのも一苦労だが映像は当時の一番の技術で残したかった。
一枚とって違いはすぐ分かった。
たとえばトンネルをカメラで押さえたとき、ただの黒なのか、石が積まれ徐々に細く長く出口に向かっていく様が見える、くらい出せる色自体が違う。
当時から良い物は良いと決断する力があったのだ。
周りから「イチの目は嘘をつかない、鑑定士より正確だ」とほめられる事もしばしば。
これも、大当たりだった。
ひとつの航海で取りためた写真は飛ぶように売れた。大きな商社のカレンダーに使用されたこともある。
コンクールに出展するとプロが応募しちゃだめだと注意を受けた。
取り方も魅せ方もなんとなくこうしたほうがいいとわかり、やはり父親の地か、自分には絵的なセンスが備わっているとおもった。
日本がまだ海外にいってはならない時代。
世界はもっと野蛮で危険で残酷だった。
国や政府は暴力と支配で満ちており、その国ごとに必ずルールが存在した。
危険な場所
マラリア海峡
ココはかなりのキケンスポットで船は止まらず進み続けなくてはならない。
海が浅いので海藻や、藻くずにつかまって海賊たちが身を潜めながら船を狙っている。
こちらも拳銃を持ち、船に近づき上ろうとする異物を叩き落さなくてはならない。人だと分かっているがなりふりかまかわず、攻撃、熱湯をかける。
南米のある国では国ぐるみで窃盗が行われている。
まずは国の外交官にワイロを渡し、荷物を半分おろし、海岸で待つ盗賊たちにわけなくてはならない。反抗すれば船ごと襲われ、皆殺しだ。
ある国が文化の革命最中であれば17時以降は外出禁止。
撃ち殺されても仕方ない。もっているのが、カメラだと分かると没収されるか、破壊される。ひどい場合スパイとしてつかまる恐れもある。
船を下りてもキケンはたくさんだ。
大きなカメラは宝だとおもわれ狙われる。
常に片手をあけ武器を構えていなくてはならない。
一度油断して両手に二種のカメラを持っていたときにモノ剥ぎにあったときは、高価でないほうのカメラを武器にしたので、相手の頭をかち割るとどうじに破損する羽目になった。
ある船員が天然記念物のピュ-マを購入・船に乗せたが、木の檻だったために逃げ出した。貨物内に隠れてしまい、夜になると出てきて襲われるので船員は外に出れなくなった。結局みんなで追い出して最終的にイチがピューマを檻に入れる役目を頼まれ、右手のひらを少し噛まれる事になった。
捕まえ方は羽交い絞めにして目をつぶし、紐で結んだ。
世界の貝を集めていて、潜水して取りにもぐったら頭上をサメが泳いでいて身動きが取れなくなる。
息を潜めていると暗い影が出来たので振り返ったら目がでかくてオデコが出ている不気味な魚が現れズットこちらを見ていたことに驚きおぼれそうになった。
森で写真に夢中になっていたら、うなり声がしたので探し狼?と出会い目をつぶし、木の棒をのどの奥に突っ込む、など死闘をへて命からがら逃げ帰った。