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エピローグ3

ようやく終わりました。

あとがきありますので、よろしければ。

 ドアを開けるとそこで待っていたイースターの肩を叩き、一緒に歩いていくヴァン。彼らの後を慌てて追う。振り返って部屋の中にいるマカロンの顔を見る勇気はなく、後ろ手に扉を閉める。


 足早につかつかとしばらく歩いてから、ヴァンは歩みを緩めて、


「とりあえず、ある程度は聞き出せた」


 と、囁くくらいの声でイースターに言う。


「詳しくは、ココアがメモを取っている……ココア、情報を隠匿するなよ。ちゃんと、探偵士に渡せ」


「分かってますよ、それくらい……でも、いくつかは記事にさせてもらいますよ」


 一応念を押しておく。


「相談の上、ですね。これからもヴァンさんやココアさんとはいい関係でいたいものですから、ある程度は大目に見ましょう」


 堅物そうな見た目に反して、イースターはそう言ってくれる。


「ああ、それはもちろん、はい」


「じゃあ、俺は帰る。今回分かったことをもとに徹底的に捜査したら、また見つかるものもあるでしょ。捜査が進展したら教えて。まあ、どうしても駄目だったらまたマカロンと会ってもいいし。嫌だけど」


 あれ、と思わず疑問が口をついて出る。


「ヴァンさん、大体マカロンさんから聞き出せることは全部分かったって――」


「嘘に決まってるでしょ、そんなの」


 振り返って気弱に笑うヴァンの顔は、ついさっきまでのものとは違いぐっしょりと汗に濡れている。


「いやあ、疲れた」


 と、壁にもたれかかる。


「あっちからあんなゲームを提案するくらいだ。自信があったんでしょ、直感に。全部見透かされるんじゃないかとビビり続けてたよ。いやあ、もう二度としたくない」


 僕だけでなく、イースターもそのヴァンの様子に目を丸くしている。


「え、じゃあ、ヴァンさん、まだまだセイバーや脚本家については、色々と分からないことだらけってことですか?」


「そりゃそうでしょ。本当なら、根掘り葉掘りマカロンから聞き出したいよ。どういう経緯でセイバーになったのか、とか、今回の事件で脚本家の罠に気付いたのはどの時点なのか、とかさ。脚本家に繋がることは何でも訊きたいけど、あれ以上はダメだ。メッキが剥がれて、こっちの弱みを見つけられる。そうなったら、あいつからはもう情報は出てこない。逆に、こっちの情報を引き出されて終わりだ。でしょ?」


「実際、担当のうちの探偵士がそうなって手に負えなくなりました。そのためにヴァンさんをお呼びしたのですから。あの女、相当に頭が切れるうえに、野生動物並みに直感に優れている。厄介な相手です」


「でしょ? だから、とりあえず俺は役目は果たした。停滞している捜査を進める突破口は見つけた。十分でしょ?」


「ええ」


 最初から、そういうことで二人の間では話がついていたらしい。取り残された気分だ。


「じゃあ。約束通り、報酬として何か分かったら俺にも教えてよね。あとは二人で話しておいて。俺は先に帰る」


 相当疲れたのか、力ない足取りで歩みを再開するヴァン。その後ろ姿を見送り、さてイースターにまずはメモを写してもらおうか――と考えていたところで、不意に疑問が湧いてくる。

 これまでずっと隠居していた、あくまでも元名探偵であるヴァン・ホームズが、どうしてそこまでセイバー、そして脚本家(ニャン?)を気にするのか。さっきのやりとりからすると、その情報を得るためにわざわざここまで来て捜査の協力をしたらしいが。

 単なる、好奇心なのだろうか? だがその割には、かつての事件でニャンの名前が出てきた時にここまで妙な反応はしていなかった。だとすると、問題なのはニャンではなく。


「ヴァンさんって――」


 だから、何の気なしに、本当に何の気なしにその背中に問いかける。


「――セイバーと何か因縁でもあるんですか?」


 何の気もなかったから、その質問を受けて足を止めたヴァンの背中が、奇妙な威圧感を放つことに戸惑う。


「ずっと――その質問をマカロンにされるんじゃあないかと、怯えていたよ。嘘をついたらバレるだろうから、もしそれを訊かれたその瞬間逃げ出そうと決めていた」


 ゆっくりと、表情のない顔が振り向いてくる。


「俺はセイバーに興味がある。ああ、多分、反応からして、『あのセイバー』はマカロンじゃあない。それが分かっただけでも大収穫だ」


 あのセイバー?


「最初のセイバーだよ。公にはなっていない、セイバーが起こした最初の事件。それに俺はちょっとした因縁があってね」


「最初の事件を捜査したの、ヴァンさんとか?」


「違うよ」


 無表情のまま、疲れた目でこちらを見てくるヴァンは、ゆっくりと自分の顔を触る。


「そんな恰好いいものじゃなくて、俺は被害者だよ」


「え? 何を盗まれたんですか?」


 その質問には一瞬の間がある。ヴァンは自分の顔を触っていた指を、ゆっくりと眼帯に這わせて、


「眼球」

さて、今回の話は読者の皆様からのお題を使ったシリーズです。

最後なので使ったお題を発表します。


屋上で転落死体等の状況とは逆の死因の死体

美術館の絵が少しずつ変化

ワープや転移を使った叙述トリック

対決もの

殺人がない事件

誰が変身ヒーローの正体か

ココアが男子禁制の場所に潜入

旅情サスペンス。風景と食べ物


このあたりです。無理矢理入れたり、かなり拡大解釈したお題もあるのですが、ご勘弁いただければ。ちなみにどうでした、難易度は今回優しかったですか??



さて、次回の話は、残りのお題を全て使用して話を作ろうと思います。以前いただいたお題は全て活動報告か何かに書いていますので、見比べるとどんなお題を使うか=どんな話になるか想像がつかれるかもしれません。



それはそうと、これをご覧になっている方の中にはご存知の方が多いかもしれませんが、本作は書籍化します。よろしくお願いいたします。

で、やっぱり売れて欲しいので、販促として重要なことは、発売日になろう版の名探偵、つまりこれを投稿中、しかも物語的に盛り上がっているタイミングであることかなあ、と愚考しております。発売が10月なんで、逆算すると8月中旬には次の問題を投稿開始……となると一か月ちょいでプロット作成+書き溜めをしておかなければならないことになります。私の執筆速度からするとなかなか忙しいですね。


ということでしばらく片里は潜ってそのあたり(特にプロット作成)に没頭しようと思います。


いやあ、そうなるとまた新作を投稿はできないですねえ。ずうっと新作を投稿してない……一応、思いついて書き溜めていますが我ながらあまりにもくだらなすぎて眠らせている「異世界で基礎から学ぶ英語」というのがあるのはあるんで、落ち着いたらそのあたりを投稿しようかなあとは思っているのですが。


とにもかくにも、今回も皆様、読んでいただいた方も感想を書いていただいた方も、そして挑戦に参加していただいた方も、ありがとうございました。よろしければまた。

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