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春虫秋草  作者: 親不知
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1.5話

ーーー山上 真 ーーーーーーーーーー


 家の裏で薪を割っていた。

神葬の事を考えていた。あの時、動けなかった自分。毅然としていた弟。いつからあんなに強くなったのだろうか。いつも、自分の後ろにいたのに。

 そんな事を考えていた。


 「真!」

 

 声の方を向くと、陽子が立っていた。

「何か、暗い顔してるわね。どうしたのよ。まだ、神葬の事悩んでいるの?」


 陽子には、神葬の事は分からなかったと伝えてある。

 だが、大人は、子供を殺していたのでなく、居なくなってしまう子供を毎年探しに出ていたのだという事にした。

 霧は自然現象で、原因は分からず、結局大人も真たちも、現段階では超常現象がこの村では起こっているという事にするしか無かったという事にしてある。

 そして、見つからなかった時は、山頂の拝殿で祈って帰って来るのだと。

 子供達には余計な心配を掛けぬよう、霧の中眠らせたままにしておいているのだと。

 だから、大人たちは敵では無かったと。


 「しょうがないじゃない。また、来年頑張りましょうよ。少なくとも、大人たちは信用しても大丈夫って分かっただけでも大きな収穫じゃない。」


 「別に、そんな事で悩んでた訳じゃねえよ。」


 「へー、やっぱ悩んではいるんだ。どれ、お姉さんに話して見なさいよ。」

 陽子は、明るい調子で話すが、真は静かな声で、


 「創ってさ、いつからあんなに強くなった?」

 呟やいた。


 「あんなに元々強かったのか?」


 「あんただって十分強かったじゃない。」


 「俺はな、お前が止めた時、ちょっと揺らいだんだよ。」


 「え?」


 「村の大人たち全員が敵だったら、もしかしたら本当に不味いことになるかもしれない。もしかしたら、創や、お前を守れないかもしれないって。

 だから、もう1年準備をするべきかもしれないって。」


 「何よ。随分真らしくないわね。確かに私も、創があんな事言うとは思わなかったけど、真が言いそうな言葉だったし。

 でも、結果、あんたも行ったんだし。私からすれば2人とも強いわよ。」

 

 陽子はその後の事を知らない。確かに、あの出来事だけだったならば、真も、そこまで考えなかっただろう。

 だが、その後、累と対峙した創は、本当に創なのかと思うほど、立派な立ち振る舞いだった。

 真が黙って考えていると、何気なく、陽子は言った。


 「でも、まあ、真は割と昔からそんな感じじゃない?」


 真は考え事をやめ、陽子の方を向く。

 

 「昔から、先の事をずっと考えてて、、行動力はあるし、突発的にも見えるけど、実はずっと考えながら動いてて、強くなったのも、実はこの村の風習と戦うことになるかもしれないからって、備えてたんでしょ?」

 陽子は黙ったままの真をみながら話し続ける。


 「あんた達兄弟って、表に見せる性格と、本当の内面が結構反対なのよ。真は気性が粗く、突発的に見せてるけど、実は裏で色々と下準備して、常に色んな事が不安だから、そのために頑張る。

 逆に創は真面目な優等生見たいな感じだけど、意外と楽観的で、思いついたまま、自分の中の可能性だったり、周りの事を前向きに信じてる。そこに、小細工はなく、大胆なのよね。

 だから、あんた達兄弟って、2人でいると凄いのよ。何か、他の人が出来ないことを、補い合いながらやり遂げてしまう様な気がする。

 今回の事だって、他の人達はやろうともしなかったんだし。」


 真は暫く黙ったあと、ニヤッと笑う。

 

「ははっ。そうか。そうだな。何か、お前のお陰で、俺のやるべき事が分かったような気がするぜ。ありがとうな。」


 「ありがとう?はー本当に何かおかしいわよ真。貴方がありがとうなんて。何か、ちょっと雰囲気変わったかもね。

 何かちょっと柔らかくなった。」


「俺は、お前達を守ってやれるって思ってた。でもな、そんな力は本当は無かった。」

 真は卑下するでもなく、清々しそうに言う。


「え?何よ真、本当にどうしたのよ。私、そんな真、見たくないわよ。」


「俺はさ。このまんまじゃダメなんだよ。自分の弱さを知って。それでも、前に進まなきゃなんねえ。だからもう、虚勢は辞めだ。

 俺は弱いし、臆病だ。だけど、そのかわり、守ってやるんじゃなくて、支えるさ、お前らに寄りかかりながら、寄りかからせてもやれるように。」


「真、本当に変わったね。今までだったら、絶対そんな事言わなかった。本当はもっと何か合ったの?貴方をそこまで変えるくらいの出来事が。」


「いや、心の底から、神葬を終わらせたいって思ったのさ。そう思ったら、もっと俺も成長しなきゃならねえ。このまんまじゃ駄目だって、本気で思ったんだよ。」


「何か、私だけ置いてかれるみたい。いっつもそう。貴方達兄弟はいつも、気づいたら遠くにいる。この前だってそう。いつか私の前から居なくなってしまいそうで、怖い。」

 陽子は鎮魂祭の夜の事を思い出し、顔を伏せる。また、泣きそうな顔で。


「ははっ。」

 笑う真に、不意を突かれ、意外そうな顔で真の方を向く。


「お前はそうあってくれよ。こうやって、俺達が帰る所であってくれれば、俺等はどんなに遠くにいても、見失わず戻って来れる。

 俺はいつも、お前のいる場所に戻るんだって。思いながら、安心して遠くを目指せる。」


「絶対、帰ってきてよ。」


「ああ。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 


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