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第6話:封印の断片と頂点への兆し


朝の光がカーテン越しに差し込み、

街は静かに目覚めていた。

ゆきみはベッドの上で深呼吸し、昨日のAランク手前のダンジョンを思い返す。

黒コートの少年との心理戦、視聴者のコメント、たかしとの連携。


「封印された力…少しだけ反応した」

小さく呟き、剣型アプリを握り直す。

あの微かな振動――それは、異世界で培った力の断片が

現代でも引き出せる可能性を示していた。


大輝はPCの前で分析を続けていた。

「姉ちゃん、昨日の戦闘データから見ると、

特定の条件で封印が部分的に解除される可能性がある」

画面に映し出される戦闘ログを指差しながら、大輝は説明する。


「異世界での戦闘の記憶、戦略の閃き、

そして心理的緊張…これらがトリガーになるんだ」

ゆきみは深く頷き、今日のダンジョン攻略への決意を固める。


たかしも準備を整え、真剣な表情で言った。

「今日の挑戦は本物のAランク。慎重に行こう。

油断すれば命に関わる。頭を使って突破するんだ」

ゆきみは微笑む。封印されていても、戦略と頭脳で挑むことはできる。


二人は都心郊外の廃工場地帯へ向かう。

光の渦がゆらめき、冷たい空気が街の喧騒を遮断する。

入口には黒コートの少年の姿もあった。

互いに視線を交わすが、言葉は交わさない。


「…今日もライバルね」

小さく呟き、ゆきみは胸を引き締める。

彼女の目には、異世界での勇者としての戦いと

現代でのランキング争いが重なって映っていた。


ダンジョン内は暗く、湿った石畳が軋む。

壁には古代文字と魔力の残滓が微かに漂う。

空間全体に張り詰めた緊張感が満ちていた。


「まずは階層構造を確認する」

ゆきみは慎重に周囲を見渡し、罠やモンスターの気配を探る。

たかしは後方で警戒し、戦術を組み立てる。

配信カメラ越しの視聴者は息をのんで二人の行動を見守っていた。


最初の部屋で、中型モンスターが襲いかかる。

封印された力では直接戦うことは困難だ。

ゆきみはモンスターの動きを読み、地形と罠を駆使して誘導する。


「左に誘導、罠を使うわ」

たかしが迅速に動き、二人は連携して敵を制御する。

視聴者からは絶賛コメントが流れ、配信ポイントが急増する。

「頭脳戦が光る!」「さすが異世界経験者!」


奥の階層では、複雑な罠とパズルが待っていた。

床の圧力盤、壁の浮かぶ紋章、天井からの落下物。

「冷静に…一つずつ確認して」

ゆきみは異世界で培った観察力を活かす。


罠を回避し、パズルを解き進む過程で、

剣型アプリが再び微かな振動を示す。

「…来た、封印の断片が反応している」

ゆきみの胸が高鳴る。ほんのわずかだが、

力の一部が現代でも引き出せる兆しだった。


深層に進むと、ボス級モンスターが待ち構えていた。

黒コートの少年も同時に部屋に入る。

三つ巴の戦いが始まる。

力任せでは勝てない。頭脳と心理戦、罠と地形の駆け引きが試される。


「右から誘導! 罠を活かして!」

ゆきみの指示で、たかしが動く。

モンスターは意図通り罠にかかり、黒コートの少年も動きを制限される。

視聴者は画面越しに息をのむ。


戦闘中、剣型アプリが振動し、微かな光が刃に宿る。

封印された力の断片が反応したのだ。

「…これなら、力を少し使える」

ゆきみは小さく息を吐き、頭脳と断片的な力を融合させる。


モンスターを倒し、二人は勝利を手にする。

配信ポイントも大幅に増加し、ランキングは上位圏に躍り出る。

黒コートの少年も、一歩遅れて報告を送信していた。

「やはり…強敵だけど、希望が見える」


ダンジョン出口へ歩きながら、ゆきみは心に刻む。

封印された力は完全ではないが、少しずつ引き出せる。

異世界での経験と現代の戦術、視聴者の声が、

彼女の戦いを支えているのだ。


外の光が二人を包み、街のネオンが入口を照らす。

封印勇者・逢坂ゆきみの挑戦は、

現代でのランキング上位争いの本格化へと進んでいく。


「弱くても、諦めない」

胸に刻まれた決意が、現代での戦いを力強く押し進めていた。


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