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第8話 場違いなモンスター

「レベル19のモンスターがどうして、ここに?」


 ユウはよく分からないまま、フウアに聞く。何か考えている。ユウのことなど眼中にないように、ずっとモンスターの死体を見ながら。

 ユウは邪魔しないようにすることにした。どんなことを考えているかは分からないが、きっとこのモンスターについて色々考えているんだろう。それを邪魔するのは悪い。


 そう思った後、辺りを見渡す。レベル19のモンスターが突然出て来た。例外が一度起きた以上、これより上のモンスターも出てくるかもしれない。もちろん、ユウはそれに敵うとは考えていない。でも、それに気づいてフウアに知らせることは出来るかもしれない。


 高レベルなモンスターに遭遇するのは怖い。けど、フウアに任せっきりというわけにもいかない。とりあえず、自分の出来そうなことは頑張ってやろう。そう思いながら、ユウは周囲を警戒する。


 そして、しばらくするとフウアが顔を上げた。


「うん、今日はもう出よう」


 フウアはそうはっきりと言う。そして、振り向き来た道を戻っていく。ユウも慌てて、その後をついていく。


 何でかフウアは言わない。歩いているが、その思考はまだ何かを考えていた。その姿を見ながら、ユウは思う。何故かは言わないが、何となくわかる。


この場は何とかなったが、それ以上のレベルが出ないとは限らない。ここには、明らかにお荷物しかなりえない低レベルの自分。まぁ、撤退が一番いい。ユウはそう考えながら、フウアについていく。


*****


「とりあえず、報告できましたね」


 ユウとフウアは冒険者ギルドを出ていた。冒険者ギルドには、今回の件を報告するために行った。初心の森と駆け出しの森は冒険者ギルドが管理している。そのため、異常があったら報告した方が良かった。


 冒険者ギルドは報告を受け、調査するそうだ。ユウはそのことにホッとしながら冒険者の街を歩いていた。


「にしても、何でいたんでしょうね」


 ユウはそう呟く。初心の森を出るまでの道では特に場違いなモンスターはいなかった。襲ってきたのは、せいぜいレベル1~3あたりのモンスター。少なくとも、レベル11以上のは出なかった。


 その問いにフウアは何も返さない。やっぱりまだ何か考えているようだ。あのモンスターを見てから、ずっとこんな感じだ。

 たぶん、何か気になったらずっと考えるタイプなんだろうなとユウは思う。まぁ、確かに気になるのもユウは分かる。なにせ、しばらくは初心の森に通う。レベル上げのためには、どうしようもない。そんな森で本来あり得ないことが起きたのだから、気になるのも分かる。


 とはいえ、このまま黙ったままなのもユウとしては気まずい。2人っきりなので、何か少しでも会話したかった。


 少しどうしようか考えた後、ユウはフウアに話しかける。


「これからどうします?」


 たぶん、ちょうどよく聞こえるくらいの大きさ。周りに迷惑が掛からない程度の声でユウはフウアに聞く。フウアは少ししたうち、はっとしたような顔でユウの方を見た。


「あっ、そうだね……。とりあえず、しばらくは初心の森へはいけないかな」

「そうですよね……」


 まぁ、うんだろうなとユウはそう思う。レベル19以上のモンスターがあの森に存在している可能性もある。自分は当たり前として、フウアさんにも手に負えないモンスターが存在しているかもしれない。

 何であのモンスターがいたか、ほかにもいる可能性はあるのか。それが分からないとあの森に入ることはできない。というか、したくないというのがユウの本音であった。


「調査が出るまでの間、どうします?」

「うーん、どうしようか」


 フウアは少し考えていた。そして、どこかぎこちない笑みを浮かべ、ユウの方を向く。


「まぁ、その間は休んでて」

「えっ、良いんですか?」

「うん。よくよく考えてたら、異世界に来たばっかりなのにずっと振り回してたしさ」


 フウアはそうどこか申し訳なさそうに言う。その様子にユウは困惑した。まぁ、確かに異世界に来てから三日間、色々やった。その間で心から休めたのはあんまりないかもしれない。でも、それは自分で選んだことだ。少なくとも、フウアが罪悪感を感じることじゃない。


 そう思っていると、フウアは続けるように言う。


「だから、ユウは宿で休んでて」


 フウアはどうするんだ。ユウはその言葉を聞き、そう思う。フウアが自分を気遣っているのはユウも分かる。でも、フウアはどうするつもりなんだ。


 そう聞こうとした瞬間、フウアはユウの言葉をかぶせるように言う。


「お願い」


 必死の様子にユウは思わず頷いた。もちろん、色々聞きたいことはあった。でも、出来なかった。あまりにその様子が必死だったから。

 ユウの様子を見て、フウアは安心したような顔をしている。そして、罪悪感に埋もれたような顔をしながらこう呟いた。


「ごめんね」


*****


 ユウは宿のベッドで寝転んでいた。部屋は結構綺麗だ。1人用の個室で、トイレと風呂がついている。テレビとかはないけど、まぁ快適には過ごせる。

 ちなみに、この部屋もフウアが金を出した。宿をとった時、金は無かったため仕方がなかったとはいえ、やっぱり申し訳ないなとユウは思う。


本当に何から何まで任せっきりだった。たぶん、フウアがいなかったら、自分はきっと死んでいた。それに、レベル上げの時もフウアがそばにいなかったら出来なかった。これまでは、全て彼女のおかげだ。


だから、そんな謝る必要なんてないのに。


『ごめんね』


 冒険者の街で言われた言葉が脳裏に過る。どこか幼げな声。それが、罪悪感に潰れたような顔とともに浮かんでくる。

 

 何で、そんな顔をするんだろうとユウは思う。何一つ悪くないのに、何でそんな顔をするんだろう。


 そう思いながら、ユウはずっとベットの上で転がっていた。空は暗く、もう深夜といえる時刻。そんな時間になっても、ユウは眠ることが出来なかった。


 ふと、窓の外を見る。何もないのが分かっていたが、ちょっとした気晴らしに見たくなった。何も変哲のない光景を見つつ、ユウはある人物を見た。


「フウア⁉」


 夜の冒険者の街をフウアが歩いていた。誰かと一緒にいる様子はない。淡々と、どこかに向かっていた。ユウは思わず窓を開け、大声で呼ぶ。が、それにも反応はない。


 ユウは急いで、支度をして、武器を持ち、部屋を飛び出した。フウアがどこに向かっているかは分からない。でも、こんな夜遅くに1人なんて危ない。そう思い、ユウは宿を出る。さっきいた場所にフウアはいない。が、歩いていた方向は覚えていた。その方向へとユウは走っていく。


 しばらく走ったら、フウアの後ろ姿が見えた。


「おーい、フウアさん」


 ユウはもう一度、大声で叫ぶ。が、やっぱり聞こえていない。何か考え事をしているんだろうとユウは思う。フウアが何か考え事をしている最中だと、どうも周りが見えない一面があった。


 とりあえず、何とか追いつこう。ユウはそう思っていた時だった。フウアが森へと入っていたのである。


「えっ」


 あの森は暗くて見えづらいけど、間違いなく初心の森だった。何で、入ってんだとユウは思う。ただでさえ、どんなモンスターが出るか分からないのに、夜なんてもっと危ないだろう。


 ユウはフウアの後を追うように入ろうとする。もちろん、夜の森なんて怖い。怖くないわけがない。でも、それ同じくらいフウアの事が心配だった。


 ユウは駆けだそうとする。その時だった。


「おーい、ユウ。何やってんだ」


 聞いたことがある声がした。慌てて振り向くと、そこにはガタイのいい冒険者がいた。ブーゼンである。


「あっ、ブーゼンさん」

「こんな夜遅くに森に入るとか危ないだろ」

「まぁ、そうなんですけど……」


 正論にユウはその通りだと思う。実際、ユウとしてもよっぽどのことじゃなければ近づきたくなかった。今も足が震えそうなほどには怖い。

 でも、フウアのことも心配だった。


「なんかあったのか?」


 心配そうにブーゼンが聞いていくる。ユウはそういえばと思う。この人、確か現在最強の冒険者だったと。それを思い出し、ユウは相談することにした。


「フウアがあの森に入ったんです」

「マジかよ」

「危ないですし、一緒に戻りたかったんです」


 何でフウアが初心の森に入ったかまではユウも分からない。なので、こういう説明しか出来なかった。とはいえ、ブーゼンは納得したようだ。


「よし、わかった。俺が初心の森に行って連れ戻してくる。ユウは戻ってろ」

「えっ、でも……」


 ユウはフウアの事が心配だった。初心の森に入ることは怖いが、このまま戻るのも不安だった。


「お前さん、まだレベル3だろ? そんなんじゃ、モンスターに食べられちまう。夜は特に活発になってるから余計にだ」


 その言葉にユウは言葉が詰まる。どうやら、レベル3には無事になれたようだが、それでもまだまだだったようだ。まぁ、当たり前だよなとユウは思う。どんなレベルのモンスターがいるかも分からない現状、レベル3とか行けない。


「分かりました……」

「まぁ、安心しろ。あの嬢ちゃんを見つけて、すぐに戻ってくる」

「フウアのこと、よろしくお願いします」


 ユウがそういうと、ブーゼンは応と言わんばかりに手を振っている。ユウはその姿が森に入ってくのを不安げに見つめた後、宿へと戻っていった。


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