第11話 任務同行②
冒険者の街に一番に近い街、ヴァルキ。外見は特に何ともない街だったが、ちょっと様子が変だなとユウは街の中を歩いて思った。
たぶん、この世界における普通の一般人が暮らしているのだろうが、外に人がいなさすぎるのだ。これが夜だったら、さほど違和感はない。でも、今は夕方だ。あまりにも人がいな過ぎる。
「おそらく、モンスターの影響じゃないかな。この街はあまりモンスターとは縁がなかった。それが最近になって急に現れたんだ。少なくとも、慣れてる冒険者の街とは違うよ」
その話を聞き、ユウは確かにと思う。目と目の先にある初心の森がおかしくなったと聞いても、冒険者の街の人々は特に慌てた様子は無かった。街の人の大半が冒険者か元冒険者というのもあるのだろう。対するこの街の人はごく普通の一般人だ。そう考えると、当たり前なのかもしれない。
「じゃあ、さっそく森の方へ行こうか」
「分かりました」
ユウたちは街の中を通り、森へと行く。森は初心の森とさほど変わらない雰囲気だった。が、規模は聞いていた通り、初心の森よりも狭い。
コオルを先頭に、ユウ達は森の中を進んで行く。暗くて怖いが、それでも初心の森よりはまだマシだなとユウは思う。だって、モンスターが出てこないからだ。
「モンスター、出てきませんね……」
「元は出ない所だったからな。最近現れたの以外はいないのかもしれない」
コオルはそう呟き、地図を見て何かを確認する。そして、見終えた後、顔を上げユウ達の方を見た。
「うん。ここら辺でさっき言ったメンバーで別れよう」
「わっ、別れるんですか……?」
「あぁ。モンスターはそれぞれ現れた場所が違くてね。ユウとマエはここから右へ、僕とアーキは左の方に行く」
結構最後の方まで一緒に行くと思っていたユウは内心慌てる。が、そんなユウを安心させるようにマエは肩を叩き微笑んだ。
「了解したわ。ユウ君、一緒に頑張りましょう」
「はっ、はい」
ユウは震えながらも頷く。そうだ、頑張ろう。先輩冒険者もいるんだ、案外何とかなるかもしれない。怖いが、そう思うことで何とか心を落ち着かせる。
「じゃあ、倒し終えたらここで集合だ」
「オッケー。気を付けてね」
「あぁ。そっちもね」
ユウ達はコオルとアーキと別れた。そのまま、レベル7のモンスターが目撃されたであろうを場所を目指す。
「じゃあ、こっちで戦うモンスターについて説明するね」
「はっ、はっ、はい」
「大丈夫。そう怯えなくても、私がいるわ」
「そっ、そうですね」
安心するようにそう言うが、それでも声が震える。だが、それでも何とかなると言い聞かせながらユウは説明を聞いていく。
「今回目撃されたモンスターはレベル7。体形はこのレベルではまぁまぁ珍しくて2mは超えてるらしいわ」
「2mですかぁ……」
「とはいえ、レベル7よ。たぶん、能力自体はそこまででもないわ」
「でも、よくレベル7だと分かりましたね」
前に聞いた所、レベルは見たい対象より高ければ、見たいと思えば見れるらしい。あれはあくまで人間の話だったけど、もしかしてモンスターにも通用するのだろうか。今後のためにも、ユウは思った。
「あぁ。目撃したのは親子でね。父親がレベル9だったから分かったの。ただ、娘がいたみたいだから逃げたみたいだけどね」
「それが良いですね」
「そう、適格な判断よ。さて、私たちも街を救うために頑張らなきゃね」
「でっ、ですね……」
ユウは震えながらも、頷いた。突然いないはずのモンスターが現れた。街の人は怖いだろうし、何より生活を送る上での支障も出る。だから、何か起きる前に何としなくても退治しなきゃいけない。
だから、ユウは怖くても頑張ろうと思う。
「そのモンスターのは、巨大鼠だそうよ」
「巨大鼠とは一体……?」
「一応、鼠の姿をしているんだけど本来のよりも馬鹿デカくてね。しかも、凶暴。まぁ、門スターだから当たり前なんだけど。このモンスターは魔法も使える」
「魔法ですか……」
今までユウがまともに対峙した敵は、レベル1~2だった。低レベルも低レベルなので、魔法というのは使ってこなかった。だから、今回のが始めての魔法戦である。
ユウはふと、初めてあったモンスターである風猪を思い出す。あれもおそらく魔法見たいなのを使っていた。ようは、あれに似たようなのと対峙するのである。
風猪に会い、死にかけたことを思い出し、ユウは思わず顔を顰めた。
「あら大丈夫よ。魔法といっても、レベル7の魔法だもの。大したものじゃない」
「そうなんですか……」
「今回の巨大鼠が使う魔法。纏衣雷だ。身体に雷を纏わせ、周囲に電気を放つ」
それじゃあ、接近戦は大分厳しくないかとユウは思う。剣で斬ろうとしたら、電気に当たって死にそうだ。
「それって、遠距離からの攻撃の方がいいってことですか?」
「まぁ、そうね。でも、君遠距離攻撃持ってるの?」
「持ってないです」
魔法剣士というクラスは魔法と剣術、どちらも得意とする。もっとも、剣術においては剣士に、魔法では魔法使いに及ばないのだが。がそれでも、ただ魔法適正があるよりははるかに出来るそう言うクラスだ。
なので、習得する魔法次第では遠距離にも対応できる。
だが、ユウには現状魔法がない。闇魔法しか使えない状態のため、この先魔法が使えるかも怪しい。つまり、近接戦闘一色となる。
「今回の事はなるべく君のサポートに徹してって言われてるのよね」
「そうなんですか……」
「ほら、貴方のパーティーの仲間になるフウアちゃんも魔法使いのクラスでしょう? まだ共闘は出来ないけど、その練習にもなるじゃない」
確かにとユウは思う。フウアとはまだ一緒に戦闘はしていない。というか、自分の実力的に出来る状態でもない。だけど、同じクラスならその練習になるかもしれない。
「とりあえず、共闘するし私のステータス見せようか」
マエさんはそう言うと、ステータスを見せた。もうこの世界に来てから何度も見たゲーム画面のような画像が出てくる。
*****
・マエ
レベル:14
クラス:魔法使い
基礎ステータス
HP:10 耐久:5 力:5 速さ:7 魔力:22
クラスステータス
火魔法:30 水魔法:5 土魔法:0 風魔法:15 光魔法:0 闇魔法:0
スキル
・なし
魔法
・『火炎砲』
レベル:29
詠唱:「荒ぶり、怒り、嘆く破壊の象徴よ。我が砲丸となり、敵を焼き殺せ」
ランク:C
概要
炎の砲丸を形成し、敵を燃やす魔法。まぁまぁ火力があるが、魔力消費が激しい。ただし、このレベルでは中堅以上のモンスターには効かない。
・『風傷槍』
レベル:13
詠唱:「穿て、刻め」
ランク:D
概要
風の槍を形成する魔法。ただし、普通の風槍とは違い、当たった敵に持続的な風ダメージを与える。そこまで火力は出ないが、長期的な戦闘に役に立つ。
補正
・魔法使い補正
概要
魔法使いのクラスにつく補正。魔力に+の補正がつき、クラスステータスに各属性の魔法欄が出来る
・火魔法補正
概要
火魔法が得意になる補正。クラスステータスの火魔法に+の補正がつく
*****
ユウはざっと確認していく。補正の後には装備も表示されていた。魔法使いのクラスのため、当たり前ではあるが魔法がある。この先、魔法が生えるかも分からないユウはいいなと内心思う。
「私は攻撃主体の魔法使いなの」
「攻撃主体とかあるんですか?」
「まぁ、魔法使いによるけどね。ほら、アンタのパーティーになる予定のフウアいるでしょ?」
「あっ、はい」
「彼女はびっくりするほどの万能タイプよ。彼女と私たち、冒険者になったのはそこまで変わらないから一回、ステータスを見たことあるんだけどね。あそこまで、万能なのは正直珍しいんじゃないかな。ブーゼンさんもそう言ってた」
「そうなんですか」
正直、ユウはこの世界の魔法についてよく分からないので、実感が分からない。ただ、初めてフウアのステータスの魔法欄を見た時、色々な魔法があるなと思った。レベルとかランクはそこまででもなかったが、治癒できる奴とか攻撃系とか防御系とかいろいろあった。
「もちろん、ほかの魔法使いが偏りまくってるっていうわけじゃないの。ただ、クラスステータスの欄に色んな魔法があったでしょ。出来る魔法とか得意な魔法はあれで決まるの。例えば、私は火魔法の補正がついてるの。だから、火魔法が得意って感じ。君は闇魔法だっけ? 闇魔法って何が出来るのかしら」
知りません、それは俺が聞きたい。ユウは内心、そう思う。もう少し火魔法とか分かりやすい魔法系統が得意なのが良かった。ユウは内心常々、そう考えている。
「あれって、まぁまぁあるじゃない? しかも、属性によってある程度出来ることも違ってくるの。だからか、全部出来る人はもちろんだけど、闇以外出来る人もいなくてね。だから、珍しいの」
「なるほど」
やっぱフウアって凄いんだなと思い、そういえばとユウは思う。会って間もないから、当たり前ではあるがフウアの事何も知らないなと。知っているのは、ステータスと優しい人であることだ。それ以外は何も知らない。
マエが冒険者になったのはそこまで変わらないと言っていないのを思い出す。なら、自分よりフウアのことを知っているかもしれない。何か聞けないかな、ユウがそう思っていた時だった。
「ついたわよ。遭遇場所」
マエのその言葉にユウは恐怖で身体が震える。ついに、レベル7のモンスターと相対するのか。震える身体を何とか抑え、つばを飲み込む。剣を握りしめ、前を見た。そこにあったのは小さな小屋だった。どうやら、ここがモンスターがいた場所らしい。




