第10話 任務同行①
冒険者を目指している人達がレベルを上げるにはどうするか? その大半は初心の森でモンスターを狩ることだそうだ。初心の森にモンスターがあふれて、冒険者の街に来ないようにする対策にもなるし、推奨されている。
が、レベル上げれるのはそれだけじゃない。推奨されているのは、もう1つある。それは、冒険者たちの任務に同行して経験を積むことだった。
「すみません、今回はよろしくお願いします」
「ユウ君だっけ? そんな改めなくて大丈夫だよ」
ブーゼンの紹介でユウはある冒険者たちの任務に同行することになった。少し畏まってユウが言うと、緑髪の青年がやや笑みを浮かべながらそういう。
「私たちもつい最近まで冒険者見習いだったもんね~」
「そうっすね。ユウ殿、一緒に頑張るっす」
「あっ、はい」
ユウが同行するのは三人組の冒険者パーティーだ。緑髪の青年はこのパーティーのリーダーでコオルと言う。そのそばにいるのは、長髪の女性、マエと盾を持っている若い男性、アーキ。ブーゼン曰く、三人とも幼馴染らしい。
「じゃあ、準備は大丈夫?」
「はい」
ユウは初心の森と同じ装備だ。一応、ブーゼンにもこれで大丈夫だろうかと聞いたが、特に問題ないそうなのでこれにした。ユウの装備を見たアーキが感心するように言う。
「めっちゃくちゃ、しっかりしてるっすね」
「そうですか?」
「そうよ。私たちより良いじゃない。冒険者見習いの私たちなんて碌な装備無かったの」
「あの時はお金が無かったからな」
俺もフウアが買ってくれなかったら、同じようなもんです、とユウは内心思う。装備の全てがフウアが買ってくれた。ユウの財産は、昨日倒したモンスターを売って出た銀貨55枚だ。正直、何が買えるのか分からない。
「まぁ、とりあえず行こうか。森の道を通っていこう」
コオルはそう言った後、石造りの道を歩いていく。森の道とは、初心の森と駆け出しの森の中間にある整備された道のことだ。冒険者は初心の森か駆け出しの森を抜けてくるのだが、一般人や商人などはこの道を使う。
「モンスターとか大丈夫なんですか?」
「あぁ、大丈夫よ。ここモンスター避けの魔法がかけられているの」
「モンスター避けの魔法? そんなのあるんですか?」
「そうみたい。ただ、千年前にいた人がかけた魔法だから、詳しい詳細は分かってないんだけどね」
マエはユウにこう語る。この道自体、約千年前に作られたそうだ。それまで、道自体が無かったそうだが、商人や一般人にとって困難でしかなかった。そこで、当時いた魔法使いが道を作り、モンスター避けの魔法をこの道にかけた。
それ以降、一般人や商人は冒険者の街に用がある時はこの道を使うらしい。
ここが2つの森の狭間とは思えないなとユウは思う。石造りの道は千年前に作られたと思えないほど物凄く整備されており、現代日本にも劣らない綺麗かつとても歩きやすい。そして、道の脇には歩いていても退屈しないようにするためか、たくさんの花が植えられている。
この道を作った人はたぶん、優しい人だろうなとユウは歩いて思った。
「凄いですね、その人。1つの道を作ったって」
「よね~。なんて人だっけ」
「ほら、伝説の冒険者一行の誰かだったっすよ。たぶん、どっかの本に載ってると思うっす」
「そうなんですか」
ユウはこの世界の歴史について詳しく知りたかった。まぁ、しらばくは暮らすし、ある程度のことは知っておきたかった。
本って銀貨何枚必要なんだろう。ユウはそう考えながら、道を通る。初心の森や駆け出しの森を歩いた時とは嘘のように、モンスターは現れてこない。
「本当にモンスター出ないですね……」
「初心の森とは全く違うっすよね。わかりますよ、その気持ち。俺も初めて通った時、感動しましたから」
ユウの言葉にアーキは同調したように言う。その様子を見て、ユウは思う。何と言うか、親しみやすい人達だなと。何と言うか、もう少し厳しい人達が来るんじゃないかとも思っていたが、かなり感じのいい人たちでホッとした。
「まっ、ここは安全だし歩きながら今回の任務について話そうか」
「そうね。ユウ君は始めてよね?」
「はい」
「じゃあ、任務とかについて色々説明するよ。まず、そもそも任務は依頼された物をこなすことだ。依頼主は色々だね。冒険者ギルドから直接のもある」
ユウはその説明を聞き、ふと考える。今、フウアを含めた色んな冒険者がやっている初心の森の調査も冒険者ギルドからなのだろうかと。とはいえ、説明を中断するわけにもいかないので心に留めておく。
「その中でもランクってのがあるんだ。S~Fまである。まぁ、一番難易度が高いのがS、一番低いのがF。名目上はどの冒険者でも受けることが出来るんだけど、まぁ適してないと止められるね」
「適しているってどんな風に決められるんですか?」
「主に2つ。1つは冒険者ランク。冒険者になったら階級があるけど、それで。もう1つは冒険者自身のレベル。私たちは全員レベル10代で冒険者としては低いし、ランクも一番下だから、受けれる任務のランクはFなんだ」
「なるほど」
ちなみにとコオルが言うには、現在色んな冒険者がやっている初心の森の調査は、ランクでいう所のC~E相当らしい。もっとも、いるモンスターのレベルが詳しく分かっていないので、何とも言えないようだが。
「どんな任務なんですか?」
「モンスター退治だ」
「ひえっ」
コオルの言葉にユウは思わず、そう言葉を漏らす。もちろん、任務だし簡単には行かないのは分かっていた。モンスターと戦うことになりそうな予感もしていた。が、それでもユウは怖かった。
そんなユウの気持ちが心底分かるように、アーキがユウの肩に手をかける。
「分かるぜ。モンスターって最初の頃は怖いっすよね。俺もそうだったっす」
「あんた、初めてモンスターに遭遇した時泣いてたもんね」
「そういうマエもコオルに抱き着いて泣いていたっすね」
アーキのその言葉に、マエがうっとなる。幼馴染らしい会話にユウは羨ましくなる。自分にはそういう会話が出来る人はいないから。
「大丈夫、初めては怖いけどすぐに慣れる。それに今回のモンスターは基本的にそこまでのじゃない。レベル10代の僕たちでも倒せる奴だよ」
慰めてくれるのは、嬉しいがユウとしてはやはり不安だった。彼らは全員レベル10代、対して自分はレベル3。さすがにレベルが違い過ぎて、彼らの言う倒せるが本当か不安なのだ。
とはいえ、ここまで来た以上、逃げるというわけにもいかない。やるしかない、やるしかないのだ。ユウはそう覚悟を決める。
「今回のモンスターは主に二つ。1つは、レベル12のモンスターはこれは僕とアーキが。もう1つはレベル7のモンスター。これは、ユウ君が主体でやってもらう」
「レベル7ですか……」
レベル7。コオルとアーキが戦うモンスターのレベルよりはマシだが、それでもユウにとってはかなり高い。今までは自分と同格か下しか戦っていなかった。が、今回は自身より上と戦う。
心臓がバクバクする。異世界に来て、初めて自分より強いのとまともに戦う。そのことがユウは怖くて仕方ない。
「基本は君が戦うが、ヤバそうなときはマエがサポートする。だから、大丈夫だ」
「わっ、わっ、わかりましっ、た。が、がんば、ります」
「声がめちゃくちゃ震えてるっすよね」
アーキにそう指摘されるが、それも仕方ない話だった。モンスターと戦う覚悟は決めたが、それでもユウは怖かった。覚悟を決めようと、怖いものは怖い。
「任務の場所は冒険者の街に一番近い街、その隣にある小さな森だ。元々はモンスターがいない場所だったらしいが、最近さっき言った二体のモンスターが現れたらしい」
「それって突然?」
「あぁ、突然だ。少なくとも、モンスターが発生するような兆候は見られなかったそうだ」
「それって……」
初心の森と何か関係あるんじゃないかとユウは言いかける。もちろん、何か証拠があったわけじゃない。でも、近くで似たようなことがそう簡単に起きる物なのだろうかとも思った。コオルもその考えに同調するように頷く。
「あぁ。初心の森の件と何か関係があるかもしれない。無理にとは言わないが何か発見したら、教えてくれ」
「わかりました」
「さぁ、そろそろ森の道を抜ける。そしたら、依頼が来た街だ」
コオルの言葉にユウは気を引き締める。震えそうになる腕を何とか抑えようとしながらも考える。もし、これで何か見つけたらフウアのためにもなるんじゃないか。もちろん、本当になるかは分からない。けど、頑張ろう。ユウはそう気を引き締め、コオル達と共に任務へと行く。




