生まれた意味
僕はもぎ取られた左目に包帯を巻き、この場所を今日限りて去ろうと決意していた。
あの珠から孵った者は間違いなく零達を守る王になるだろう。
その王は、僕など比べ物にならないし僕の使命はここまで、いやあとひとつあるか、それを成して僕は終われる。
朝になると、騒がしくなるだろうから、朝になる前に去らないといけない。
僕は静かに人魚達が住む館を後にして、仲間たちには今日で解散する様に言って、島を後に船に乗ろうとしていた。
「どこに行くつもりですか?」
零が小さな男の子の手をつなぎ、僕の前に現れた。
もう、こんなに成長したのか、もう安心だな。
「役立たずは静かに去ります、お幸せに。」
零は大粒の涙を流しながら、
「あなたのお陰でしょ。私達がここにいられるのは。」
僕は頸を振って、
「樹って人の力ですよ。今の僕には何も出来ない。若き王についてあげて下さい。それじゃ。」
僕は、これ以上話すと辛くなると思ったので強引に
船を出し、魔王城に向かった。
零は、僕が出ていった後、岸壁で泣き崩れているようだった。
『零、行こう。私達は、あの者の最期を見なければいけない義務を負っているようだ。』
「最期は、嫌ですけど。はい、行きましょう。」
僕は、魔王の玉座に向かい魔王のところまで行った。
「ん?どうした、今日は何用だ。」
「参りましょう。冥府まで。」
魔王が目を細め、眉間に皺を寄せ、
「わしを倒すというのか?」
「僕にはそんなだいそれたことは出来ません、一緒に行こうと言ってるのです。」
僕は黒化し、消えようとしている体を全身全霊で動かし、魔王にしがみついた。
「な、何をする。は、離せ!くっ…冥府の奴等か。」
どうやら、上手く行ったみたいだ。
冥府の人たちが捕まえてくれた。
「さよなら、零。ぼくは楽しかった。君に笑った顔が見たかったけど、それは贅沢だね。」
僕が静かに目を閉じようとすると、
「待って!ハルカ!」
零が泣きながら走ってきた。
「零、ありがとう。もう十分だ。僕は魔王と行くから。」
「あなたは、何のために、何のために生まれてきたの。」
零の涙を拭いながら、
「僕は、君に合うために君が希望を持って生きていけるよう生まれてきた、君の礫(石の踏み台)になれたならば、僕の生まれた意味は合ったんだ。」
魔王が僕の体を掴み、冥府に引き摺り込んだ。
「さよなら、零。君が好きだった。」
冥府に引き摺り込まれ、僕の体は藻屑と消えた。
「は、ハルカ〜!!」




