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第16話 そうだな。最終的にこの少女、マアナに人間の社会で生きて欲しいと思っている。

 しかし、我とて殆ど考えなどない。何故なら人間社会に対しての情報が無いからだ。

 だから、目的を述べる事しかできない。


「そうだな。最終的にこの少女、マアナに人間の社会で生きて欲しいと思っている。我々ドラゴンの仲間として育てるなら個として育てる考えもあるが、人の身でそれは酷だろうからな」


 何故かマアナが少し否定的な目をした気がするが、我の言葉に返事をしたのはテンガロンだった。


「なるほど。そういう事であれば、現在ガルドランド全域は他国と小競り合いの戦争をしておりますが、モンタギュー領は比較的安全と言えます。ここモンステルの町はモンタギュー伯爵領内の中でも安全な都市と言えるでしょう。レッドドラゴンの目撃情報が発生しているとはいえ、その被害は今の所ゼロ。対応は国の方に報告し、返答待ちではありますが、市民の負担が大きくかかるような対処はしないと思います」


 次いで、ヴィエタが続く。


「他の領地でもレッドドラゴンについては情報が回っていて、モンタギュー伯爵家は割と貴族派閥で顔の効く人ですから、国王派が渋っても貴族派閥が協力してなんとかしようとするでしょうね」


 そして、意外な事にネイトも続いた。


「教会側はドラゴンを二種類に分けています。神の血を引く神竜と、そうでない邪竜。一番重要視するのは神の血統かどうかです。国王派も教会と考えを同じくする人たちです。でも、人間と違ってドラゴンは神の血統であるかどうかを判断できません。被害が出るまで静観すると思います。だから、国王派は動きが鈍いでしょうね」


 更に以外な事に、テイルもそれに続く。


「ストリートギャングとしては、こういう人外の危機に関してはあまり前向きじゃない。政府公認の暴力機関であると自負しちゃいるが、基本的には人間相手の暴力機関だ」


 そして最後に、マリーザが続いた。


「冒険者協会はあくまで住所を持つことができない者を冒険者と名付けて仕事の支援をする教会主導の国家

組織だから、勿論何もできないしね。傭兵組合、狩人組合が合同で何かするってんなら、お手伝いくらいは申し出るだろうけどね。それと、レッドドラゴンの件とは関係ないけど、マアナの嬢ちゃんがこの国で生活するなら孤児院は難しい。教会管轄の孤児院は金積むか血統がよくないと入れないし、ギャングがやってる孤児院に入ったら、生きていく事は出来るだろうけど悲惨な人生になるよ」


 マリーザの言葉に、テイルは深く頷いた。

 テイルはストリートギャングが運営する孤児院の出らしいから、マリーザの言う事が実体験としてわかるのだろう。

 しかしなるほど。いかに優れた頭脳を持つ我とて、知識という部分では知る機会がなければ得る事ができようはずもない。

 そして知識というのは深度がある。自分で見て、感じて、そうして調べた知識は時間がかかるが深く知る事ができる。それに比べて他人の得た知識を聞く事によって得る場合、浅い理解となるが、その分早く理解する事ができる。

 この二つの知識を得る手法は一長一短で、我々ドラゴンは前者、己が身で調べるという事しかしてこなかったのだ。

 だが、人間は後者、他者から情報を得るという事を当然のように行う文化なのだろう。

 注意しなくてはならないのが、先程も言ったように一長一短があるという事。浅い理解という事は勘違いや間違った理解を生みやすいので、時間をかけてもいい、もしくは時間や労力をかける価値があるという場合は自分の体験をもって調べる所だ。

 まあ、今の話題についてはそうする必要はないだろうがな。

 つまり、我が欲していた情報はある程度この短い時間で得る事ができたのだ。すなわち、少女をここに住まわせるかどうか。

 結論は出た。だが、気になる点もある。どうにも違和感としか言いようがないが、それぞれの意見が、まるでこの領地の立場、貴族派閥の立場、教会の立場、ストリートギャングの立場、冒険者協会の立場、それぞれの立場からの意見のように聞こえるのである。

 テイルがストリートギャングの立場からものを言うのは分かるのだが、他の人間はどうなのだろう。

 少々興味深いところだが、この話の本筋はそこではない。我は結論を述べる事にした。


「うむ。まずはこの町でマアナが生活できるか試してみたいと思う。ただ、我はその生活を表立って支援する事ができぬから、どうすべきかは知見がないのだが」


 それに答えたのはマリーザだった。


「この店の2階は宿なんだよ。基本的に客はいないから、好きに使いな」


 我は、マリーザに視線を向ける。


「いいのか?」


「乗り掛かった舟だ。それに、うちのお嬢の友達候補だしねえ」 


「費用は俺が持ちます。マアナさんとドラゴンさんは恩人ですので」


 テンガロンが真摯な顔で言うと、マリーザは肩を竦めた。その態度は、暗にそんなもの要らないと言いたいが、それではテンガロンが納得しないからしょうがない、と言っている様だ。

 そして、ひとつ気付いた事がある。

 こういう時、ありがとうと言える人間は、事の他凄いのだなと思ったのだ。

 気位の高そうなヴィエタも、ありがとうと言える人間だ。

 それに比べて。

 喉の奥でその言葉が詰まってしまって、何も言えないのである。

 ただ言葉を言う、それだけなのに。まったくもって、ままならぬものだ。

 我がそんな事を思っていると、マリーザは何かを思いついたのか、声を発した。


「じゃあ、今日は新しい友人の歓迎会だね!」


 そう言うと、奥に向かって「メリッサ! ギター持ってきな!」と言い、言われたメリッサはとてとてとギターを抱えてやってきた。

 そのギターなるものを受け取り、メリッサは先端の方にいくつか付いたネジのようなものを調整しながら口を開いた。


「昔ね、わたしはある一行といろんな所を回ってたんだ。旅、という程気楽なもんじゃなかったけど。そしてね、仲間が増えると酒飲んで歌を歌って、楽しかったんだよ」


 何かを懐かしむように目を細めたマリーザの視線の先は、一体何を見るのか。


「こいつはちょっと悲しい歌だけど、一番人気だった歌だよ」

 


『みらいえいごうつづくもの』


作詞作曲・不明


♪♪♪


伸ばした体は まだ小さくて

横を見渡しても おなじくらい

上を見上げたら 空が遠くて

遥か先にあるのは 眩しい太陽


届かない手 重い足 苦しい体

でも上へ上へ伸ばすんだ 光の方に


届かない 届かない どうして届かない

こんなにも求めて 眩しいのに

届かない 届かない どうして届かない

その光がないと 死んでしまうのに



伸びてきた体は 空に近づいて

横には並ぶ ものなんてない

それでも上ではまだ 空は遠い

足元を見ればそこに 仲間たち


伸ばした手の 遥か下で 苦しむ仲間達

枯れて崩れた仲間に手を 伸ばすんだ


届かない 届かない どうして届かない

仲間達は自分のせいで 苦しいのに

届かない 届かない どうして届かない

自分のせいで光を 奪ってしまうのに


神様どうかお願いします 光はいらない

だから願わくば 自分の枝を全部 切り落として欲しい 


♪♪♪

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