第3話 再会②
午後の授業が始まるチャイムが鳴り、かつて主従関係だった二人は先輩後輩の関係で再会することになった。
「お互い色々と訪ねたいことがあるけど、それは放課後にまとめて聞きましょう」
「畏まりました。それでは放課後に私が姫様のいる教室へお迎えに参ります」
「こらこら、そんな目立つ真似は厳禁よ。今の貴女は女子生徒達の憧れであるお嬢様なんだから」
傍から見れば、瞳は人気絶頂のアイドル的存在なのに対して、私は一般人でしかない。
こうして屋上で二人っきりでいるのを誰かに見られたとしても、私が無謀にも瞳に告白するために呼び出したぐらいにしか捉えないだろう。
「放課後、隣駅の商店街を入った裏路地にカラオケ屋があるわ。そこで落ち合いましょう」
「了解しました。命に代えても必ず向かいます!」
大袈裟だなぁと思いながらも、瞳は目を輝かせながら各々の教室へ戻って行った。
私が教室へ戻る頃にはクラスメイト達は次の授業の準備を進めていて、南は慌ててこちらへ手招きする。
「遅いぞ。もうすぐ先生がやって来るよ」
「ちょっと色々あってね……」
「どうせ雪のことだからトイレでSNSに夢中になって時間が経つのを忘れていたんでしょう。宿題のノートは私が写しておいたから、今度何か奢りなさいよ」
「サンキュー、さすが南様だわ。この恩は必ず返すわ」
南に遅れた経緯を説明したところで、到底信じてくれるとは思えない。
幸いにも、普段のずぼらな性格が功を奏して勘違いしてくれたので余計な言い訳を考えないで済んだのはよかった。
午後の授業中、私は窓の外を眺めながら屋上での出来事を思い出しながら、物思いに耽っていた。
(ルシスとこんな形で再会するなんて……)
前世のルシスは姫である私に尽くしてくれた可愛げがある執事だった。
私より一つ下の年齢、初めて顔合わせしたのは社交界デビューする頃で王族の礼儀作法やドレスの着こなし方まで手解きしてくれた。
身辺警護まで任されていたルシスはとても頼り甲斐があり、プライベートな悩みも彼に打ち明けて相談していたぐらいだ。
そんな彼と異世界転生後に、こうして巡り合う機会ができたのは嬉しい反面、もどかしさが私の心に付き纏っている。
私は徐にペンを持ち、ノートに前世のルシスと異世界転生後の瞳を想像しながら描いていく。
可愛げのある年下の執事と凛とした上級生の瞳を並べて見ると、全然タイプが違うし、そもそも性別が逆転しているのだ。
(同一人物なんて信じられないわよ)
あの時は時間もなかったので深く考えなかったが、冷静になって状況を整理していくと、頭がパンクしそうになってしまう。
そうしている内に時間は進んで放課後になると、私は瞳と約束した場所へ向かおうとする。