第15話 意外な展開
最後まで歌い切った二人は達成感と共に、妙な空気が包み込んでいた。
歌ってスッキリした筈が、この胸騒ぎは何だろうか。
「あれって恋人同士で歌うのが定番じゃん。いつものと違うからビックリしたよ」
私は平静を装いながら、椅子に腰を下ろす。
からかっているのか、最近は宿題とか見せてもらったりと南には色々と借りがあるので、甘え切った私に対して怒っているのか。
どちらにせよ、今までの南ではありえない行動だ。
「たまにはいいでしょ。同じ選曲ばかりだと飽きるからね」
「それはまあ……たしかにそうだけとさ」
素っ気ない返事をする南。
彼女が私に怒っているのはその言動で何となく察しが付いた。
やはり、ここ最近は南を頼り切って甘えていたのが原因だろうか。
「喉も良い具合にスッキリしたし、そろそろ皆川先輩と泊まるきっかけについて話して欲しいな」
南は改めて私と瞳について訊ねる。
その件は歌に熱中して忘れてくれるだろうと考えていたが、読みが甘かった。
また歌わせて気を紛らわすことはできそうにないし、南がそれをさせてくれる雰囲気ではない。
正直に異世界転生したことを踏まえてありのままを話したところで信じてくれる筈もないし、ふざけているのかと逆に南の怒りを買うことになるかもしれない。
(困ったな……)
何て答えたらいいのか悩んでいると、南は痺れを切らして私に詰め寄る。
「雪は皆川先輩みたいな女性が好みなの?」
「好みって……」
「たしかに女性を虜にするクールな立ち振る舞いは魅力的かもしれない。私も遠目からカッコいいなと思ったぐらいで、雪がお近付きになりたい気持ちも分からなくはない。それだけに、どんな手段を使って泊まったのか。私なりに一晩考えてみたけど、恋する魔法でも使ったぐらいしか思い付かなかった」
どうやら、私と瞳のことで南は相当モヤモヤしていたようだ。
異世界転生が魔法の類なら間違っていないような気もするが、ここは敢えてそれを利用させてもらおう。
「そうそう! 先輩におまじないの魔法をかけたら私に夢中になったの。半信半疑だったけど、成功してよかったわ」
「へぇ……おまじないの魔法ねぇ」
南は懐疑的な目でこちらを窺う。
やはり信じてもらえないかと諦めて他の言い訳を考えようとした時だ。
「その魔法をさ……私にも使ってくれないかな?」
南は頬を赤く染めながら、意外な展開に私は言葉を失ってしまう。