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第11話 着信

 私は無言でその場から立ち去ると、寝室に戻ってベッドの中へ潜った。


(最悪なタイミングね)


 着信が入らなければ、そっと引き返して何事もなくやり過ごせたのに。

 着信の相手を確かめると、それは幼馴染の南からのものだった。

 こんな時間に何の用事だろう。

 すぐに電話を掛け直すと、第一声は私を心配する南の声が耳に入る。


「雪! あんた今どこにいるの? あんたの部屋はずっと暗いままだし、家に帰ってないでしょう」


「南か。ええ、ちょっと先輩の家に泊まり込んでいるのよ」


「先輩? それって誰よ」


「……皆川瞳先輩よ」


「えっ? あの皆川先輩の家に雪がどうして泊まることになっているのよ!」


 南は信じられない様子で驚いた声を上げる。

 まあ、傍から見れば何の接点もない私と瞳は先輩と後輩の関係でしかない。

 経緯を説明したところで、おそらく南は納得しないだろう。


「色々とあってね。今度学校で会った時に話すから」


「こら、あんたもう忘れているわね。明日の休日は私と出かける約束をしていたでしょうに」


 そうだった。

 明日は南を労うために、一緒に出かける約束をしていた。

 詳しいことは後で連絡すると言っていたのを今になって鮮明に思い出した。

 瞳との一連の出来事に、すっかり忘れてしまっていた。


「分かった。明日は例のカラオケ屋で待ち合わせしましょう。そこで思う存分歌ってから南の気になっていたスイーツを食べに行こう」


「それはいいけど、まさか皆川先輩も一緒に?」


「いや、私一人よ」


「そう……ならいいけど」


 南は少し安心したような声で落ち着きを取り戻す。

 学校のアイドル的存在の瞳とお近付きになるために、一緒に連れて来て欲しいと言われるかと思ったが、彼女は周囲の生徒達と違って然程の興味は抱いていなかった。


「じゃあ、明日の十時に例のカラオケ屋前に集合ってことで」


「ええ、分かったわ。雪、寝坊したりして遅刻はダメだからね。それと憧れの先輩と一緒だからって迷惑かけちゃダメよ」


「南は相変わらず心配性ね。大丈夫だから、お休みなさい」


 まったく、出来の悪い子供に注意するお母さんかと思えてしまうぐらいだ。

 本当はこのまま瞳と休日を過ごして帰るつもりだったが、南との先約を優先するのが筋だ。

 瞳とはまた別の機会を設けるとしよう。


「あの、起きてらっしゃいますか?」


 瞳が寝室の扉をそっと開けて、暗闇の中で私に呼びかける。


「ごめん、あんな驚かせ方をするつもりはなかったけど、お互い不可抗力ってことで水に流そうか」


「お心遣い、ありがとうございます」


 暗くて瞳の顔は見えないが、大体どんな顔をしているか安易に想像がついてしまう。


「さあ、この話はもうお終い。早くこっちに来て一緒に寝よう」


 私は瞳をベッドに誘い込むと、先程の件はさっさと寝て忘れてしまった方がいい。


「私はソファーで寝ますので……」


「いいから! さっさとベッドに入りなさい」


 私は断ろうとする瞳に対して、半ば強制的に彼女を受け入れる態勢を整えた。

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