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第1話 プロローグ

TS百合です。

他作品のTS百合作品も更新が遅めですが、宜しくお願いします。

 あの人はいつも笑顔が似合っている。

 廊下ですれ違う度に、いつも女子生徒達に囲まれて(きら)びやかな雰囲気の人気者だ。

 そんな人と同じ学校に通っている私は平凡な女子高生、咲田雪(さきたゆき)

 いや、正確には華やかな人生を歩んだことのあるお姫様だった。


(退屈だ……)


 世間で異世界転生と呼ばれる単語が漫画やアニメを通じて浸透し、私はその異世界転生者に該当している。

 それを他人に打ち明けたところで、中二病を発症した女子高生とかネタ扱いされて真面目に信じてくれる者はいないだろう。

 社交界デビューで綺麗なドレスを纏っていたのも遥か昔の懐かしい記憶になりつつ、現在は一般家庭の女子高生デビューしたところだ。


「雪……」


 後ろの席から小声で喋るのは友人の皆川南(みなかわみなみ)

 家が近所で幼稚園から一緒に過ごしてきた幼馴染の女の子だ。


「うーん、どうしたの?」


 私は気のない返事で後ろに振り返ると、南は慌てた様子で前を指差している。

 呑気な私はイマイチ状況が掴めていないと、数秒後に南が言いたかったことは理解できた。


「咲田さん! 教科書の七十二ページを読んでください」


 どうやら、教壇に立っている先生が私を指名していたようだ。

 姫である私を指名するなんて、いい度胸だと言いたいところだが、今は普通の女子高生。

 軽く溜息をついて、私は教科書を開こうとすると、窓辺の校庭から女子高生達の声援らしき声が聞こえてくる。


(例のお嬢様か)


 その正体はすぐに分かった。

 才色兼備のお嬢様で女子生徒達から絶対的な人気と支持を得ている来栖瞳(くるすひとみ)

 かつてはあんな風に私も家臣や貴族の連中に取り囲まれていたのに、この落差はなんだろう。

 異世界転生するなら、もっと高貴な立場の人間に生まれたかったと嘆いていた時もあったが、幼馴染の南と一緒に楽しい時間を過ごせたのは悪くなかった。

 授業が終わり、昼休みを南と席を合わせながら昼食を一緒に過ごそうとしていた。


「南のお弁当いいなぁ。そのタコさんウインナーと私の玉子焼き交換しない?」


「いいよ、はいどうぞ」


 素直に交換に応じる南は私にタコさんウインナーを差し出すと、それを一口で口にしながら美味しさに浸る。


「雪は幼稚園の頃から、そのタコさんウインナー好きだよね」


「まあねぇ。昔はこんな珍しい物なかったし」


 前世でタコさんウインナーなんて洒落たものはなかったし、初めて目にして口にした時のあの衝撃は今でも忘れられない良い思い出だ。


「昔って、私達が幼稚園にいた頃からあるでしょうに」


「細かいことは気にしない。はい、玉子焼きどうぞ」


 私は南に玉子焼きを差し出すと、付き合いの長い幼馴染の南は相変わらずだなと思いながら玉子焼きを口にする。

 この緩い女子トークは嫌いじゃないし、何かと束縛の多かった前世での環境では叶わなかった体験だろう。


「そうだ、一つ頼みごとがあるんだけど」


「宿題を写させてくれってこと以外ならいいよ」


「うっ……」


 私の心を読み取ったのか、南は見事に私の頼みごとを的中させる。

 伊達に長く幼馴染を過ごしているだけあって、私の手の内は読み切っている訳だ。

 しかし、次の授業に提出する宿題を忘れてしまった私に頼れるのは彼女しかいない。


「南様、一生のお願いでございます。どうか宿題を写させてくださいませ」


「雪の一生のお願いはこれで何回目だったか」


「ほらほら、玉子焼きを追加してあげるからさ」


 南は呆れつつも、お構いなしに私は機嫌を損ねないように玉子焼きを南に提供する。

 こんなやり取りは今に始まったことではないので、南は溜息をつきながらも宿題のノートを貸してくれた。


「サンキュー、南は私を救ってくれる女神様だよ」


「まったく、調子の良い子なんだから」


 やれやれと言わんばかりに南はお弁当を摘まみつつ、私は南の頭を撫でて見せる。

 照れくさそうに顔を赤く染める南は周りの目もあるからと言って制止するが、まんざらでもない様子だ。


「よしよし、ちょっとトイレに行ってくるね。南も一緒に行く?」


「私はパス。早く行ってきな」


 先程とは打って変わり素っ気ない態度で南は見送り、私は上機嫌で廊下へ繰り出す。

 宿題の件もどうにかなったし、可愛らしい幼馴染の顔も拝見できたので大変満足している。

 そんな浮かれている私が職員室を通り過ぎようとした時、一人の生徒が職員室から出て来たところに鉢合わせてぶつかってしまった。

 その拍子に、私は床へ倒れてしまいそうになったが、抱き抱えるように受け止めてくれた。


「君、大丈夫?」


 心配そうに声を掛けてくれたのは、今し方ぶつかった相手であり、絶大な人気を誇る来栖瞳だった。

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