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最終話になります。

お付き合いありがとうございました。

 目が覚めたら、そこはワイバーンの背ではなく、海辺の砂浜だった。


「また海やねえ……さっきのお姉さん、どこ行ってしもたんやろ?」


 ボケーっとした目であたりをきょろきょろ見回すニャー子。

 僕もなんとか意識を覚醒させ、周辺の状況を確認する。


「お、おい、ニャー子……」

「うん?」


 僕は浜辺に今いる位置から、目の前にそびえる建物を見て大声を上げた。


「ここ、和歌山の海だ! あそこにあるのは白浜のホテルだよ! 帰って来たんだ、僕たち、関西に帰って来たんだよ!!!」

「え、え~? あ、ホンマや~。スマホの電波が戻っとるわ。現在位置、南紀白浜や~」

「帰れる、帰れるんだ、僕たち一緒に、奈良に帰れるんだよ!」


 思わず力いっぱい、ニャー子を抱きしめた。


「こっから奈良まで、大変やで~?」

「構わないさ、ニャー子と一緒なら!」

「も~、恥ずかしいことばっかり言うし……責任、とってや?」

「取るよ、ばっちり取りまくるよ」

「……子供ができたら、お絵かきとか教えてあげてくれるん?」


 い、いきなり飛躍した発言だな……。

 ニャー子的には一緒にいる、責任を取る=結婚して子供を作るということなんだろうか?

 まあ、僕もこの際、覚悟は完全に決まってるけどね。


「そ、そりゃもう、得意分野だよ」

「そっかー、せやったら子どもができる前に、一緒にコミケ、行こうな?」

「別にいいけど……ニャー子、そう言うの好きなのか?」

「あたしな、漫画のことに夢中になってるときのごろちゃんが、いっちゃん好きやねん。目がキラキラしとってな、笑顔がまぶしくってな」

「……ニャー子」

「あたし、そこまで自分が夢中になれるもんってあらへんかったから、昔っからごろちゃんが羨ましかってん。ごろちゃんは絵が上手くてええなあって、得意なことがあってええなあって、嫉妬みたいなん持ってたんやね。せやから、早く手に職つけたい、一人前になりたいって思って保育士になったんや……」


 心臓を掴まれたような思いだった。

 世間知らずでのんびりしているけれど、芯が強くてしっかりした女の子なんだとニャー子のことを決めつけていた。

 でもニャー子だって、僕と同じように悩んでいたんじゃないか。

 自分が何者でもないということに、悔しさを抱えていたんじゃないか。


「ニャー子、改めて言うよ。お前が好きだ。大好きだ。愛してる」

「うん、あたしもやで。ごろちゃんとずっと一緒にいたい」

「僕の絵を好きだって言ってくれたよね。これからもきっと、ニャー子のために描きつづけるよ。子供が生まれたら、子供が喜ぶような絵をたくさん描くよ」

「頼もしいパパやなあ。最高やん。いい物件ゲットしたわ~」

「うっさいよこいつ」


 一緒に、二人で一人前になって行こう。

 僕一人ではできないことでも、ニャー子とならきっとやり遂げられる。

 ニャー子と手を握り合って、浜辺から街中へ出る。

 僕たちの家がある、奈良に帰るために。

 これから僕たちが一緒に生きていく、故郷の街へ戻るために。


「とりあえず、こっから奈良に戻るにはどうしたらええんかな」

「……バスか列車で、また難波に一度行かなきゃならないんじゃないか?」

「それで近鉄乗って、また生駒のトンネルでわけわからんようになってもうたりして♪」


 不吉なことを言うなよ……。


「大丈夫だよ、二人一緒ならなんとでもなるさ」

「せやな。あたしもごろちゃんがいてくれれば、それでええし」


 この人がいてくれれば、それでいい。

 どこで何をして生きていても、僕はこれから先、胸を張ってそう答えられるだろう。

 でも、とりあえず今は、まず真っ先に。

 どこか、ふかふかのベッドを確保して、ニャー子と目いっぱいイチャイチャしたいなあ、なんて思ってしまうのだった。

 

 (完)


少しでもティンと来たら、ブクマ、いいね、評価を頂けると泣いて喜びます。

連載中の大長編もよろしく。


バイト先は後宮、胸に抱える目的は復讐 ~泣き虫れおなの絶叫昂国日誌・第一部~

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