バレました
「なにコレ?」
なんかエリシア王女を護送しにイプトラルに降り立ったら数分と掛からず囲い込まれた。
こうなるんだったら、軍族艦を動かしておけば良かった。アレ真下の半径500メートル圏内にしか降り立てないんだよね。
移動は艦長が操縦しなければ、大量にエネルギーを消費してしまうらしい。艦長には、騎手の職業レベルを50にしたうえで、艦長の職業のヤツから推薦を受ける必要があるのだが、なりたての俺には長い道のりだ。
てことでイプトラルからスタートして、ゼーリィンまで電車で行こうとしたら囲まれた。
「先を急いでいるんだが」
「お前が道場破りだな?」
………ああ広まってんのか
「それがどういう意味かで答えが変わるけど」
「ならこうすれば良い!」
いきなり背後から斬りかかった。
「なっ!?」
「ああこの剣は確か………陽狛のゲロの人!」
「どういう覚え方してんだよクソ!やっぱ道場破りだ!!!」
斬り掛かりに反る癖が、覚えている範囲の彼に一致した。なんか挑みに行ったら、玄関口で吐いてたんだよなこの人。
「チッ、指で跳ね上げた刀で受け止めたのは分かるんだが、なんで鍔迫り合い出来てんだよ!」
「そりゃあおめえ指で押さえているからだろ」
「何言って………えええええぇぇぇ!?」
軽く指で指示してやれば、引かれた。
まあ抜き身の刀身の先をつまんでいるだけだからね。
それだけで鍔迫り合いを成立させていたが、驚きとともに力が抜けてくれたので軽く下がる。
「あと真剣で鍔迫り合いとかやめてくれよー。ソレ簡単に刃こぼれするから」
「ちょっと待て!ツッコミが追いつかねえん」
「ピャア!」
言い切る前に、目の前の男が頭を撃ち抜かれた。
しかも俺にも当たるところだった。
あと安全のために、エリシアの頭を下げさせたけど、舌噛んだりとかしてないよな?
「ありゃりゃ、さっき以上に囲まれとる」
なんかデジャブだねーこの感覚。
戦場でこんな感じに囲まれたっけ。
「よお道場破り。テメエを殺す」
わあシンプルな殺害宣言。
「俺なんかお前たちに悪いことしたかねえ?」
「しらばっくれてんじゃねえぞ!!!」
「テメエのせいで俺らの道場は丸潰れだ!」
「私の姉さんが腑抜けたのはあんたのせいよ!」
「先輩が引き篭もって出てこなくなったんだぞ!あんなに強かったのに!」
あーめちゃくちゃ怨嗟蔓延ってるな〜
「イヤ俺に負けたところで別に弱いわけじゃあないんだしサッサと強くなれば良いだろうに、諦めている時点でそいつらの問題だってことになぜ気づかんのかね〜」
「テメエッ!!!」
「殺す!」
「ハイそこザンネーン」
「かはっ」
殺気ビンビン過ぎてステルスの意味無くなってんじゃんw。
流石にココで殺しちゃうと不味いから、鞘で喉元小突いた程度だけど
「ちょっと街壊す気かよ」
なんか爆弾抱えていたので思わず蹴り上げた。
そのついで片足を拘束された。
「不味いな」
コイツら破壊行為を進んでやるような奴らだ。このままじゃあ被害が広がる。
「馬鹿が!隣にNPCいんだぞ!」
「テメエを殺るのにソレで躊躇えるか!」
うんヤバい。どう見ても威力の高い斧スキルを発動させているやつが近付いてる。
拘束に長けているヤツと、一撃に重きを置いているヤツ。確実に倒すための構成過ぎて面倒くさい。
まあでも
「ホイ」
「なっ!?」
刀の鞘を飛ばして振り上げた斧を落とさせた。古今東西において、技を放つための準備段階のうちに得物を小突けば案外簡単に落とせるものなのだ。
「じゃあ悪いけどこの子送らなきゃなんでバイバーイ」
「チョッ、待っ!」
待てない待てない。強引に足の拘束を破壊して、エリシアを抱えて跳び出す。
「ちょっと!顔出ちゃう」
「頑張って隠………っ!!!」
咄嗟に着地地点に刀を投げ、踏み台にする。
瞬間、本来ならば着地したとき頭の高さになる位置を拳撃が横切った。
「随分なご挨拶じゃないか」
「済まんな。ツレが湧き立ってるせいでついついやっちまったよキリ」
あーコイツ知ってるわ〜。見た目悪魔族っていう角と黒めの肌が特徴の種族だったりで判別つかんが、さっきの技は知っている。
「ジンちゃんジャーン!」
李金龍。
Gil-Dという名のプレイヤーの正体。
まあ仙女ババアの血縁者だ。
因みにここで恨みを持ってる連中について
・道場丸つぶれしたとこ
普通に借金で潰れたのでハバキリ全然悪くない
・姉が腑抜けたとこ
実は姉がハバキリに一目ぼれしたことへの恨み
・先輩が引き篭もったとこ
別にその先輩さんハバキリと戦ってない
周りが負けたのをいいことに引きこもって動画投稿で歌ってみたとかやってる




