初めてのダンジョン 初めてのユニークモンスター
こういうダンジョンに入った場合最初に何を思うのか、周りの風景を見てさすがゲーム世界と思うものや素材や敵を求めて心躍らせるのだろう。だが、俺は違う。いやそういうのを思う気持ちはあるかもしれないが、今は生き残ることを優先したい。
なぜなら
「思いっきり投げすぎだろあの仙女ババアがーーーー!!!」
何人の首根っこ掴んで右ストレートでぶん投げてんのかね?下投げなら分かるけどまさかのピッチャー投げだよ!おかげで今逆さまで飛んでいってるよ!しかも目前20メートルくらいの位置にめちゃくちゃ鋭利な岩肌が見えてきた。
普通の人ならコレ真っ二つよ。だが飛んでいっているのは俺、刀があればコレくらい受け流せる。
ギャイィィンと刀と岩肌が接触した拍子に跳ね上がることでうまく着地する。
そして見えるのは、赤に寄った桃色の光源で彩られた空間、空から段階的に花開くように生えている桃色の鉱石。なるほど、桜は雨に花粉が流されないように下向きになっているというが、そのように天井にぶら下がっているから桜なのか。見た目だけなら梅とかのほうが近いぞ。
「いかにもファンタジーって感じの光源だな」
そう思いつつ進んでいく。しばらくすると地面の方にもいくつかの鉱石が生えているところに出る。
「あ、仙女ババアに投げ込まれたから鶴嘴とか持ってきてないんですけど~」
正直鉱石採掘とかしたい気持ちはあったので、ガッカリして鉱石を通り過ぎようとすると、ボコッボコボコボコッと鉱石が隆起する。
「ああコレ鉱石に擬態しているモンスターか」
地面の中から顔を出したのは、鉱石を無視すれば膝下くらいの大きさしかなく、二足歩行で背中にさっきの鉱石を乗せた恐竜のようなモンスターだ。まあ小さいんだけど。
「ちょっと可愛げあるなコイツ。ホーれこっちおいでー」
アギャァァァッと鳴き声を上げながら走ってくる。狙いはちゃんと俺に向いてるがそこまで早くない、鉱石を向けているだけあって結構なダメージにはなりそうだが、ラクラク避けられる。
それとコイツの攻略方法は足だな。鉱石を乗せた体を支えるには十分ガッチリしているが、それでも二足歩行で恐竜のような骨格故に前のめりな体勢になっている。なので足をかけてみると簡単に転んだ。しかも横転しているっぽいので今なら簡単に倒せる。
「コイツ背は硬そうなのに腹は柔らかそうだな」
そう言いながら刃を突き立てると簡単に刺し込めて倒せた。
ヨシッ!コレくらいの敵ならある程度無視でも問題ないか。早くユニークモンスターの居場所の手がかりを見つけないと。
ハイ無視しすぎて今ヤバいところです。
あの鉱石に擬態しているモンスターめっちゃ連携力あるんですけどー。なんか避けた先に別個体が飛んでくるとか、ぶつかりそうになってもうまく避けるどころか片方を俺に向けるとかいう連携仕掛けてくるんですけど。
ハッキリ言おう、コイツら群れると序盤はメンドイ。
さらにはこの洞窟に、モンスターはコイツら1種類だけというわけでもないのだ。なんかザ・ゴブリンって感じなのに、武器がここの鉱石削って作りました的な感じのなんかチョット贅沢な斧を振るっているのだ。ゴブリンなら大人しく木の棍棒とかを振っておいて欲しいね。
まあ襲われすぎて回避専念でジャンプしてたら高い位置に横穴が見つかった。そこらに生えてる鉱石や地形の問題もあるだろうけど、高い位置にあるから注意して確認しないと見えない可能性がデカイな。
「地形的な心理操作とかのものだろうな」
そもそもそこ自体登るための階段とかそれに値するものがない。登攀系のスキルとかもあるらしいが、これは優しくない設計だろ。
敵を避けながら飛び込みその一本道を進むと、さっきの空間よりも暗い空間に出た。
いや、ただ暗いのではなく、1点にのみ光が差し込んでいるフィールドのようだ。そしてその光に差し込まれているのは、
「鬼の面を付けた鬼?」
子供の頃、仙女ババアに教えられた鬼というのは肌が人の色とは違い、人よりもガッチリとした筋骨を持っているというものだが、今目の前にいる奴はまさしくそういう鬼だ。そのはずなのに鬼の面を付けている。
あれか?東北に伝わるナマハゲとかいうやつか?いやあれは、確か神の使いとかだったはず。
俺が、そう思いながらも前に進むとこちらに気付いたのか相手が立ち上がる。膝下に置いてあった刀を鞘から抜き、こちらに構える。
「汝、角を折られる覚悟はあるか」
ユニークモンスター〈角折の黒桜童子〉
やった!刀をドロップしてくれるかも。
石に擬態していたモンスターは見た目的にはイベクエにありそうな特殊な小型バサルモス亜種って感じ。
〈黒桜晶の洞窟〉
読みはこくおうしょうのどうくつ。絶対読みずらいと思ったのでここで言っておく。
ここでとれる国桜晶が一部の中堅装備やデザイン面が優秀なため、リリース最初期は人気があったダンジョン。今は、他にデザインも性能も優秀な装備が流行っているため割と過疎っている。
ここに行くプレイヤーとかユニークモンスター探しとか初心者の探索とかくらいでしょう。