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現代の武人は仮想世界を無双する  作者: カンナトウジ
2章:集いし戦士と龍の群
40/120

大陸横断マラソン開始


日本時間13:00ごろ


イプトラル西門方面に向かって街中で大規模な地響きがしていた。

「な、なんだあ?」

「ちょっ、なんかこっちに突っ込んできてる!?」

「え?プレイヤー!?」


NPCかプレイヤーか、地響きの方に目をやるとそこにはプレイヤーがいた。

「済まない!門から退いてくれー!」

「なるべく気をつけますけど避けてくださーーーーーい!」

「ソレじゃあお先でゴザル!」

「「「「ミストハイドォ!」」」」


1人西門の上を飛び越えたのを皮切りに続々とプレイヤー達が西門から出て行った。

「な、なんだったんだアレ?」




俺たちは今走っている。


目的地はイプトラルから遠く、西端に位置するというリゾート都市『サンルタ』までだ。


なぜこんなことをしているかだって?

ソレは、俺たちのクラン『WIRDS』結成祝い扱いで、仙女ババアが俺たちのプレイスキルを知るために企画したことだ。

『そうじゃのう1人1人に記録媒体を付けておくとして、とりあえずイプトラルからサンルタまで走れ』

とこんな感じのことを言ってスタートさせた。ほぼほぼ門下生の集まり故皆すぐに対応できたが、ウチの弟弟子達とかは出遅れたようだ。


まあ俺は出遅れていないんだけど。


では、ここでこのレースのルールを教えよう。


まず、移動手段は己の足のみ。ここの面々にそんなことする奴はいないと思うが、各都市などを繋いでいる『ギルレア黄金鉄道』とかいう鉄道やバイクなどの自動車、馬系モンスターなどの騎乗も許されていない。


次に、期間は1週間。正直そこまで要することもないと思うが、リアルで用事がある者達のために多めに用意されている。実際イプトラルからサンルタって直線距離で1200kmくらいらしいから、そこまでかかるはずもない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


最後に、武器は基本的にインベントリに収納ということだ。戦闘に入った際、どれだけ早く武器を取り出せるかというところに着目し、インベントリに入ってる状態からやれと言われた。コレ位置とスワイプの感覚覚えておかねえと、道中で死ぬやつだ。


ということで現在、西イプトラル平原はヌーの大移動並みの地響きを起こしながら西へ西へと進んでいる。


「お先に行くでゴザル!」

「ヤッパあいつ速いな」

「そりゃああの子忍者だからな」

今1番前を走っているのは、ミストハイド。忍者だからこその身軽さもあるが、リアルでスピードメインの鍛え方をしているだけに、メチャクチャ早い。ただ直線を突っ切るだけなら、十数時間もかけずに着くだろう。


次点でA2。ゲーム内でもこの愛称を使っているようだが、いつもよりも速い。リアルは大柄でガッチリしている反面、コッチでは女性アバターで細身になっているからか空気抵抗がいつもより少ないのかもしれない。


でその次が俺だよ。クッソ、普段ならA2にはギリ勝てるはずなんだけど。

ちなみにその後ろは、全員仙女ババアの門下生。


で更にその後ろに、出遅れたウチの弟弟子と足の遅い方のレアが続いている。

まあボスモンスターとかがいるわけでもないフィールドなんてすぐに越えられる。


次のフィールドである『マルディール磁回地帯』とかいうメッチャカラフルで足場が安定してないフィールドに突入する。

なんか昔にあったとか言う戦争の影響で特殊な磁場を放つ鉱石が基本的な足場や岩壁などの環境として成り立っているフィールドらしい。


——————重要なことは鉱石地帯のフィールドだということ。

「ちょっと止まってハバキリ!そこらの鉱石欲しいんだけど!!!」

俺の襟元に張り付き、そのまま付いてきたセンジュがありえんくらい興奮している。

お前さっきまで俺たちの熱気に当てられて目を回していたと言うのに。


「とりあえずお前の目と耳が飾りであることの証明にはなったな!!!今何が起こってるのか分かっていないようで!!!」

「そんなことはどうだっていいわ!!!()()()()()()!!!」

分かってて死地に飛び込みたいと仰るか。いや死地に飛び込んだのは俺たちだけど。


「いつも思うけどコイツらどうやって泳いでいるの!?」

「クソ鮫どもがア!!」

「あっぶな足持っていかれるところだった!」

えー現在、俺たちが一気に飛び込んだせいで、そこかしこから鮫みたいなモンスターが飛び出している。


飛び込む時は音沙汰なかったのに、大量に地面から飛び出すとか地盤沈下待ったなしだと思うけど、対してそんなことはなかった。イヤもしかしたらもう起きているのかもだけど。

「もうなんて言うか、鮫映画に入れるかも分かんない事態になってきたな」


この環境に適しているのか、そこらの鉱石に似た色味の体に、磁場に干渉して空中を泳ぐように移動しているのか。だけど蛇足か?って思うくらいにヒレの代わりに足が生えているんだよね。


もしかしてアイツら鮫じゃなくて蛙だったりする?

「まあだけど悪いな。俺たち鮫映画で喰われるモブじゃねえから」


断末魔は聞こえないが、ソレと同じくらい鮫どもが吹っ飛ばされる。

「オラァ!」

「ちょっと危ないでゴザル!」

「ウーンここだと私の呪術ッテ相性良くないネ」

打撃斬撃銃撃、果ては魔術や魔法の発動した独特の効果音など、あちこちで攻撃が鳴り響く。


「まあコレくらい問題ないよな」

自身に迫り来る鮫に一刀を投じて真っ二つにする。


「インベントリからの取り出し、もうちょい時間絞れたな」


反省などもしつつ前進していると、進行方向から一際デカい鮫が現れた。

「うっわサイズだけならホライドラスターに負けてないな!」


だが、ユニークでもフィールドボスでもないっぽいただのデカブツ。

はっきり言って余裕としか思えない。


それにこっちには数十人の実力者の集まりだ。


まあそんなことよりも

こんなデカブツが、進行方向に現れているんだもの。

誰だって思うよ。

「邪魔!」×大人数

ほぼ同タイミングで言われたその言葉と共に数十人のプレイヤーがデカブツに飛びかかった。




一方普通にここで素材回収とかレベリングしていたであろう一般プレイヤー達は、皆仲良くリスポーンしていた。


本来ならモンスタートレインされたことへの怒りやらなんやらが、芽生えるだろう部分だが、ソレよりも共通した感情を胸に秘めていた。


「なんであんなにいっぱい」


数十体のモンスターをトレインしていたとかならわかる。だが数十人のプレイヤーが、モンスターを倒しながら進行する勢いに巻き込まれるという、意味のわからない体験に呆気に囚われていたのだった。


1200kmって陸上選手の最大時速で大体60km。これを持続できても、20時間はかかる。日本時間13時から行って何事もなければ早朝に着くってことはそれよりも速いという計算になる。数十人が同じレベルで走れば、そりゃあ地響きもヤバいことになる。


磁回鮫(マルディールシャーク)

乳白色に虹色がかった磁回鉱石に補色関係のカラーリングの鮫。

普段は、そこらの鉱石に擬態しているため、見分ける術がなく踏んでしまうなどすると、むしゃむしゃされる。しかも出てきた勢いで近くの個体もいくつかはい出てくる。

ヒレがブレード、鼻先がドリルとなっているため、鉱石を多分に含む地中を潜行することができる。さらに磁回鉱石の持つ特殊な磁場を利用して空中を泳ぐように飛べる。

因みに通常個体がメス、大型個体がオスであり、オスは体力も攻撃力も高いはずだったのだが、今回大多数のプレイヤーの突進により、実質一撃キルとなった。

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