出発、いざ中央都市へ
「ではまずはコチラを」
そう渡されたのは、『鍛治台付き再生のテント・改』と名付けられた他とは違い、重厚な赤いテントだった。
「鍛冶台と煙突など増やしておるものがある分少々重いだろうが問題ないだろう」
まあ確かに。インベントリに入っているアイテムの重さは何も感じずに行動できる。リアルだったら、バックパックに荷物詰め込みまくって敵と戦うことになる。あれ?意外とその状況あり得るぞ。
「ソレと娘をよろしく頼む」
「ああ任せろ」
「ソレじゃあ早く契約して」
〈センジュをファミリアにしますか はい/いいえ ※注:ファミリアは一体しか連れて行けません。他に連れている際はその場で別れることになります。〉
注意書きまで出てきたが、おあいにくさま俺にはファミリアがいない。
すかさずはいを押す。
「ウン。じゃあ移動はよろしく」
「ン、ちょ待っ!??」
いきなり俺の方に飛び込んできた。
咄嗟に構えようとすると、センジュはみるみる小さくなっていき、親指くらいの小ささになって俺の肩に乗った。
「こ、コレってホビットの使う」
「縮小化でゴザルね。その子の連れ歩き形態はそうなるのでゴザルか」
そう後ろについていたミストが言う。
ファミリアの連れ歩き形態。
プレイヤーとファミリアが、共に移動する際ファミリアを収納することができる形態だ。通常は、魔法陣を展開してその中に入るような演出となるが、コイツの場合はホビットが使う縮小化という能力で連れ歩き形態になるようだ。
「じゃあ私は掴まってるから移動よろしくね」
「ウーン喋り出してるけどこれホントに連れ歩き形態?」
「ファミリア登録直後は自動で連れ歩き形態になるはずでゴザルからコレがそのはずでゴザルけど、まさか喋りもするとは」
ヤッパリ驚くよね。
俺も事前情報である程度の情報を掴んでおり、レアパターン的なのをいくつか知っているが、連れ歩き形態でも喋れる事例は知らない。というかそもそも顔出せる形態ではないのだが
まあこの状況でしゃべれないというのもおかしなものだが
「もうユニークさまさまってことで良いか」
「そうでゴザル。さっさと出発して仙女サマと合流するでゴザルよ!」
そう今の俺たちの目的は、仙女ババアの後を追い、中央都市『イプトラル』へ行くことだ。
なんでも、イプトラルはこのゲームの中心となる都市であり、プレイヤーが跋扈している場所であり、ほとんどの職業ギルドの本部やクラン申請所など、プレイヤーに必要不可欠となる施設が数多く存在している。そこでクラン申請をした仙女ババアが待っているため、さっさと行こうという話になったのだ。
それにしても
「行きは列車に乗ってたからこっから歩きってのはちょっと億劫だな」
「まあココからイプトラルも歩きで2時間以上するでゴザルからね〜」
コレ移動だけで1日を消化するプレイヤーとか絶対いるでしょ。
「だがしかーし!」
いきなりミストが自分の影に手を突っ込む。
「えーっと~コレコレ〜、ットオォォォ〜!」
なんか仰々しく取り出したソレは、大型のバイクだった。
「お前バイクとか持ってたのか」
「うーんそうでござるけど」
なんかチョット苦々しい表情をしだす。
「もしかしてコレ免許必要なヤツ?」
「イヤ必要はないでゴザルけど」
ただぁ、とミストは表情を変えずに
「リアル寄りのせいで運転経験のあるなしが如実に出かねないでゴザルよ」
ああそう言うやつね。この世界は基本的にどれもリアルの法則性に準拠した動きをする。
つまるところ、運転免許とかを持っていないプレイヤーみたいなノウハウを知らない者は、動かすのも困難であるということが分かる。
「分かったよ。俺が運転してやるよ」
ミストは年齢的にも取れていないが、俺は大型と大型二輪の免許を持っている。問題なく運転ができる身だ。
「ソレならありがたいでゴザルけど、もういっそオダイカンサマに渡すでゴザル」
「え、いいの?」
まあ使えるなら今後も使いたいとは思ったけど、正直ソレはソレで
「なんかこの服も仙女ババアから貰ったから、なんか女子から道具貢いでもらってるだけのダメ人間感がしてくるんだが」
「どっちかというと要らんものを貰ってくれる親切な人とか?」
ウーン、この話はやめておこう。
とここで、センジュが
「イプトラルって歩きだと2時間以上かかるの?」
と尋ねてきた。
「まあ最短ルートならって話でゴザルね」
「最短ルートって何かめんどいものでもあるのか?」
今のところ最短ルートは、この火山を下って北西に行くルートであり、その道中は森を突き抜けることが可能である。
「最短ルートを突き抜けるための森がチョット問題でして」
その森『灰被りの森』もモンスター以外には、あまり脅威と思えるものはなさそうに思えたが、
「ルートとなる『灰被りの森』はPKフィールドとも言われているでゴザルよ」
おおっとぉ、話が変わってきたぞ!
「ぴーけえ?」
「プレイヤーキルって言ってな、お前達風にいえば冒険者を別の冒険者が故意に殺すことだ」
「え、そこになんの意味が?」
まあ知らなければこの反応もする。
「そういうのを楽しむ輩ってのもいるんだよ」
アイテムを盗むため、ただ倒すため、理由は様々だが、このゲームはPKが1コンテンツとして普及している。
「PKフィールドというのはそういう連中が好き勝手に暴れるようになったフィールドでゴザル」
つまるところ、灰被りの森は今やモンスターだけでなく、プレイヤーにも注意しなければならないフィールドということだ。
「なんと恐ろしい!」
対人なんて他の敵が明確に存在していれば、余計無縁なものになるだろう。
けどまあ
「ある程度は大丈夫だろ」
「ワタシチャン達は対人も結構得意でゴザルからね!」
「じゃあなんでいちいち言うの?」
現実じゃあ、基本敵は人間だもの。
対人の方がノウハウがある。
「まあ若干めんどくさいってだけで、直行でなんとかなるでしょ」
「まあ知っておいた方がいいというだけでゴザルしね」
「へーなるほど?」
サテ、準備はもう済ませた。
「そんじゃあ出発だ!」
「おおーーー!!」
「お、おおーーー」
よするに
普通のファミリア持ちは一般トレーナーでハバキリはサ〇シみたいなパターンってことですよ
それはそれとして次回からPvPの幕開けです。
ここで用意した大型バイク、設定がガチで練られてないんだけど、耐久がかなりあって頑張れば3人乗りができると思っていただければ。




