剣士は仮想世界に飛び込む
キャラクリ回だー
~次の日~
じいちゃんの手配したタクシーや新幹線に乗っている間に、DEF(ディアレスト・エピック・フロンティアの略)について調べると
、
「結構な人気ゲームだった」
調べた範囲内のことであるが、1年ほど前に開発されたVRゲーム用の新しいゲームエンジンの実験という名目で出されたゲームだが、それで大ヒットしているのだ。
なんでもそのゲームエンジンは、ただグラフィックがいい、リアルとほぼ同然のように動ける部分といい、NPCの受け答えがリアルの人々との受け答えとあまり変わらないレベルのAIの精度となど今までVRゲーム業界でどれか一つしか発達させることまでしかできなかったという課題を期待以上の出来を以て作られているらしい。
だがこのゲームの最大のポイントは、ユニークモンスターやユニーク武器が多いことだ。使用しているゲームエンジンに合わせて、AI自動生成を活用して世界観に合わせて半自動的にユニークを生み出せるというものだ。
「いったいどれだけ学習させたんだろうか」
さらにこのゲームのキャッチフレーズが、
〈主役となり、英雄譚を紡ぎだせ〉
というものであり、運営側がプレイヤーに対してガチの挑戦を行っているらしい。定期的に出るユニーク以外に、運営の用意しているシリーズユニークと言われているものや、ファミリアというプレイヤーをサポートしてくれるお供キャラ、壮大な世界観、定期的なイベントなど、ほぼ無限と言っていい要素が組み込まれている。
「お客さん、目的地に着きましたよ」
とタクシーでついた先は、俺が引き継いだマンションだこうして実際に見るのは初だったが…
「改めてみたけど結構いい物件じゃねーか!?」
20階建てで、1部屋めちゃくちゃ広いし、1階にはカフェテリア、外の広場部分も軽い公園として扱えるくらいには広い。
あまり確認していなかったが家賃いくらしてんだ?
「ま、まあそれは一旦お金の問題は保留にしてとりあえず大家の部屋を確認しますか」
それで確認したが、大家の部屋だとしても広い。知識がないということもあるが、1人で住むには広すぎる。3人くらいと一緒に暮らしているくらいがちょうどいい感じだ。その部屋のリビング部分に置き配らしきダンボールと手紙らしきものが置いてある。
普通ならばここに入る鍵は、俺の手元にしかないし明らかに侵入していないとリビングに置き配できないはずだが…
「そういうことができる知り合いいるんだよな~」
そんなことを思い出しつつ、ダンボールに置かれている手紙を確認する。
〈これを読んでおるということは、無事に引き継ぎ手続きが済んでマンションに着いたってことじゃな。昼飯後にプレイヤーの最初に訪れる町「ゲールファ」に儂はおるゆえ、これだけ説明しておれば、儂を見つけることはできよう。〉
普通ならば説明が足らなさすぎるどころか、そもそも相手に対する情報が何一つ送られてねーよって言いそうなところだが、
「多分あの方法を使うんだろうなー」
なんとなく理解している俺がいる。仙女ババアだからこその芸当とも言えるが、あれをやるのか。
周りへの被害度外視だろうに。
ともかく今は、昼飯時を少し過ぎている。早く飯を食べ、ついでに軽くシャワーを浴びて布団を敷き、ゲームを接続する。
「さて、あまり仙女ババアを待たせると殺されかねないだろうし、早速プレイしますか」
ゴーグル型のゲームデバイスをつけて起動すると、瞬間意識が引っ張られるような感覚とともに、視界が暗くなり、〈ディアレスト・エピック・フロンティア〉のロゴが現れる。すぐさま明るくなると目の前にキャラクター製作画面が、現れる。
まず、基本的な人間の素体として裸(下着は着用している)の自分の姿と、種族、性別の画面が出ている。
種族はともかく…性別は入れ替えるとどうなるんだ?
やってみた…肉体が変わるだけで顔に変化はない。俺は割と中性的な顔立ちだったけど、ゴリゴリのオッサンとかが性別変えた時はどうなるんだろ。
まあ俺は男でやるとして、種族の方だがこの時点でいっぱいある。エルフ、獣人、ドワーフ、魔人といういかにもファンタジーなものからアンドロイドというSFチックなやつまである。種族によるステータスの違いは無さそうだし、後からでも変更できるっぽいし、人間のまま行くことにしよう。
次に、細かなキャラクタークリエイションだ。目の形とかテンプレがいくつかと、垂れ方とかを細かく変えられるようだ。俺自身そんなにキャラクリに自信もないからあまり変える気は無いが、流石に目の色と髪型は変えよう。目は気分的に赤みのある紫で、髪型はリアルは短髪なので思い切って長髪にしようと思ったが、戦闘中髪が邪魔になるのも嫌だし短めのポニーテールに。自画自賛だが、意外と似合ってる。髪色はこの際黒のままでいいか。
次は職業だが、見た感じその職業だけでなく最初に装備する武器という部分でも分けているらしくめちゃくちゃ多い。ここは無難に、軽戦士の刀使いで行こう。というか刀と剣が明確に分けられているとか、結構細かいな。運営に武器に理解のあるやつでもいるのだろうか。
最後に名前と色調などのオプション設定だが、名前の方はあまり思いつかない。今まで、オンラインゲームとはあまり関わりのない生活を送ってきた身だ。
ゆえにいいネーミングセンスが思いつかないので自身の名前である「羽馬村 桐谷」からもじって
〈ハバキリ〉と設定した。
さて、もう一つ設定しておくことがある。それは、オプション設定の1番下に他とは違い赤いフォントで表示されている、アドベンチャーモードというものだ。
「仙女ババアが興味を持ったのはこれのせいだな」
アドベンチャーモードとは、プレイヤーの運動能力がステータス依存ではなくなり、現実の自分自身の運動能力が反映されるモード。
ゲームを調べていた時に見つけたものだが、かなり不評だった。なぜなら、このゲームはレベル制。つまりレベル一つ上がるだけで強くなる使用なのだ。さらには、スキルで軽快に動けるものもある。それによりトッププレイヤーでもあれば、現実のアスリート選手と天地の差が出る。とてもじゃないが、使えたものではないと酷評であった。
「まあそれがアスリートだのという領域の話ならばな」
と不敵に笑いながら、アドベンチャーモードをオンにする。
これでキャラクリは終わり。いよいよゲームスタートだ。