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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第3章 後継候補編
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2年ぶりの新年会

 1月の雪の降る中、龍希は妻子を連れて紫竜本家での新年会に来ていた。

今日の妻の着物は薄ピンクの地に金や銀色の雪の結晶が刺繡されたもので、昨年末に龍希が贈った真珠のイヤリングと帯留めとよく似合っている。それに雪光花の髪留めと指輪も。

 早く新しい指輪ができないかな・・・龍希は思い出してため息をついた。


 3日前、リュウレイ山でシリュウ石を採っていた龍希は結婚指輪を外すのを忘れて雷を出してしまい、結婚指輪は・・・灰になってしまった。金だろうがダイヤモンドだろうが紫竜の雷には耐えられなかった。

 妻は笑って許してくれたが・・・人族製ではまた壊してしまいそうなので思い切って藍亀の甲羅で指輪を新調することにした。藍亀の甲羅は高価だが、指輪2つサイズなら龍希でも手が届く。

そう思って藍亀の族長に連絡したら、昨日族長の遣いで亀黄ききが枇杷亭を訪ねてきて、指輪2つをプレゼントすると言う。

亀に借りを作る気はないが、カモメの件で藍亀の責任は不問とし、カモメに嫁いでいた藍亀の眷族たちを助けてくれたことの礼だと言うので・・・まあ受け取ることにした。亀黄は指輪のサイズを測り、妻から好みのデザインを聞き取って帰っていった。 



~新年会会場~

 龍希の席次は相変わらず、族長に次ぐ位置だ。後継候補の中で唯一、子どもが2人、うち一人は跡継ぎなのでまあ仕方ないが・・・

 6月には龍算に子どもが産まれる・・・はずだ。今日は欠席しているが、妻の体調が悪いとは聞いていないので順調だと信じたい。


 龍栄にも早く息子ができてくれないかな・・・龍栄派の奴らやあの熊がうるさいだろうに。


 そういや龍灯は・・・ん?あいつは一人で座ってるな。象族の新妻を連れてくると言っていたのに・・・まあいいか。

あいつがゴリラの礼で寄越した梅酒は旨かったなぁ。妻と子どもたちは梅ジュースを喜んでたし。


 お、龍緑の席次が上がってる。あいつは年明けすぐに自分の巣に移って独り立ちした。新しい巣は睡蓮亭すいれんていと名付けたらしい。庭に新しく池を3つも作ったそうだ。

ワニ族から生まれて、5歳頃までワニの子の姿で水の中で過ごしていた龍緑らしいな。

 先週の一族会議で龍緑の担当先も決まったし・・・あいつも後継候補になってもおかしくないほどの実力があるのに・・・なんで族長はそうしないんだろう?


「龍希様、奥様。明けましておめでとうございます。」

やってきたのは竜紗と竜冠だ。

こいつらはすっかり妻と仲良しだな。妻も楽しそうだ。

「龍希様、奥様。龍灯様の件では大変お世話になりました。遅ればせながら、お礼の品でございます。」

「まあ!」竜紗が差し出した箱の中身を見て、妻は笑顔になる。

「素敵。象族の象牙細工ですか?」

「さすが奥様!はい。夫に頼んで作ってもらいました。苺の髪飾りは姫様に。マンゴーと向日葵のブローチは若様に。芙蓉の花のかんざしは奥様に。龍希様には枇杷の実と芙蓉の葉のブローチです。」

「子どもたちの分までありがとうございます。見て、龍陽、竜琴。あなたたちの誕生の実よ。」

妻はとても嬉しそうだ。

あ~笑顔の妻は今日も可愛いなあ。



 あー忌々しい。

竜色りゅうしは竜紗が龍希夫婦に挨拶しているのを見て心の中で舌打ちした。

 なんでお姉様はあんな奴に・・・力が強いだけで何年も結婚せずにフラフラしてた一族一の変わりものだったのに・・・

あいつが婚前交渉なんてやらかした時には後継候補から外す絶好の機会だと思ったのに・・・

妻が懐妊していたせいで処分保留となり・・・息子が産まれてしまったために不処分で終わってしまった。


龍栄様ったら!あの方が龍希の処分を強く求めてくだされば、族長だって無視はできなかっただろうに・・・あっさり不処分で終わらすことに同意するなんて!!

思い出しても腹が立つ。

 龍灯の新妻は・・・紫竜の臭いにやられて10分で休憩室に逃げて行った。あの様子では今日はもう戻ってこないわね。家柄は文句ないけど、象の妊娠期間は2年弱もある・・・それに龍灯は後継候補のくせに龍希派に入ってる。

ゴリラの件でますます龍希を頼りにして「一生ついていく」なんてふざけたことぬかしてたから期待できない。


 あ~やっぱり頼りになるのは龍栄様しかいない!


早く次の子ができないかしら。あの白猫は妊娠すれば次もちゃんと出産するだろう。竜湖が2度も子を殺した白猫を処分しないと言った時には気でも狂ったのかと思ったけど・・・あいつの読みは外れたことがないのよね~

なのになんであんな馬鹿息子にも肩入れするのよ!

 姉上だって龍希のことが大嫌いで、人族の妻をあんなに警戒してたのに・・・もしかして龍希派に?そんなはずない。姉上は中立な立場だったはず・・・龍栄様寄りの。


 なにもかもあの人族の妻が悪いのよ!


龍希は一体どんな手を使って拐ってきたのかしら?

人族のふりして騙した・・・いや無理があるわね。我ながらあの時はどうかしてたわ。

毒見役に買った人族の奴隷たちはすぐに死んでしまう。紫竜に、獣人の使用人たちに怯えて自殺してしまうのだ・・・だが人族とはそういう生き物のはずだ。知能は高くても獣人の中では最弱の生き物・・・

なのにあの妻は・・・金で買った奴隷じゃない。

拐われてきた妻にしては紫竜に対して悪さをしない。子を産んで、夫を支えて・・・まあ今のところはだけど。



「ちょっと竜色!すごい顔になってるわよ」

「竜夢様。ちょっと考え事を・・・」

「そう?てっきり龍希様を睨んでるのかと思った。」

竜夢がニヤリと笑う。

「嫌ですわ。そんなことしませんよ」竜色は笑顔を作る。

竜夢は竜色の隣に座った。そこは竜紗の席だが、姉はまだ龍希の妻と談笑中だ。

「龍緑はどの派閥にも入らないって。中立でいるらしいわよ、今は。」

「龍海が龍希派に引き入れると思っていましたが、やはり呪いの件で?」

「ん~どうなのかしら?恨んでる様子はないけど。

それよりも竜冠は正式に龍希派に入っちゃったわ。」

竜夢はそう言って肩をすくめる。

「嘘!?だって息子が生まれた時の情けない姿に失望したってあんなに・・・」

「ねえ。なのに竜琴様の件で見直したらしいわよ。あの妻のことも気に入ったみたい。あの龍希様相手に一歩も引かなかった肝の据わりっぷりに。」

「見直すって・・・竜冠は死にかけたのに?」

「あれは族長が悪いわよ。なのに後始末をしたのは龍栄様と龍希様だったもの。」

「なのに、なんで龍希派に?龍栄様だって立派に・・・」

「それ、本気で聞いてる?」

「・・・」

竜色は苦い顔になる。



リンリン

リーンリーン

竜の子たちが振り回して遊んでいる鈴の音だ。

なつかし・・・昔、龍希が同じようにあのリンリン棒を振り回して遊んでた。

 この孔雀の匂いも久々に嗅いだ。

竜色は、龍希の母である孔雀のことは嫌いじゃなかった。夫のことは嫌悪していても、族長の妻として母としての役割は立派に果たしていた。

なのに龍希は・・・孔雀の母から品のよさも賢さも遺伝しなかったくせに!

竜琴の件といい孔雀の件といい決断力だけは認めざるを得ない。

あ~忌々しい!


竜色はロックの檸檬酒を一気飲みした。


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