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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第3章 後継候補編
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リーラの役割

「龍希様!ありがとうございました!」

本家に着くなり、龍灯が待ち構えていた。

「お前はついでだ。でも礼は寄越せよ。」


 今月の初め、ゴリラのリーラが見つかったことでようやく龍灯はゴリラ族と話がつき、止まっていた再婚話もまとまった。来月の新年会には新しい妻を同行できるようだ。

それもこれも龍希のおかげだが、龍灯のためにした訳じゃない。妻のジャスミン茶と子どもたちのリンリン棒のついでだ。


 孔究はなかなか優秀だ。龍希が返事をした翌々日にはリーラを生きたままゴリラ族に引き渡し、穏便に世代交代をしたと思いきや、族長就任から1週間もたたないうちに前族長一派を粛正した。

 今日は、孔雀の新族長の就任式だった。龍希は1時間ほど顔を出しただけだったが、あの孔雀たちの驚いた顔を見るに効果は十二分だったようだ。龍希の後ろ楯を得た孔究に逆らう孔雀はもういないだろう。

 それに孔究は帰り際に、孔雀の取引先たちの前でこれ見よがしに龍希にジャスミン茶とリンリン棒を渡してきたので、そのうちシリュウ香に頼らなくても孔雀族はやっていけると期待したい。

 それよりもようやく妻が欲しがっていたお茶と子どもたちのリンリン棒も手に入った。息子のリンリン棒は壊れるたびに妻やカカたちが直していたのだが、先週ついに棒が折れて使い物にならなくなった。すると息子は娘のリンリン棒を奪おうとして喧嘩ばかりしていたので・・・まあ大騒ぎだった。

妻は珍しく息子を怒鳴っていたが、2歳を超えたころから息子はわがままを言って俺も妻も手を焼いている。来月1歳になる娘も段々自己主張が強くなってきて・・・子育てってこうも大変なのか!


「龍灯様!あ、龍希様もこちらにいらっしゃいましたか!族長がお呼びです、すぐに執務室に!」族長執事の(だん)が慌てた様子で飛んできた。

龍希は龍灯と執務室に向かった。



~族長執務室~

「はあ?なにやってんだ!」

龍希は竜湖と竜色を睨む。

2人はゴリラ族から引渡しを受けたリーラを昨日から尋問中だったが・・・先ほど死なせてしまったというのだ。

ろくな情報も引き出せていないのに・・・

「睨まないでよ。拷問の加減を間違えたわけじゃないわ。急に泡を吹いて倒れたのよ。」

「下着から何かを出して口に入れたと思ったら倒れて・・・即死でした。」

2人とも悔しそうに唇を噛んでいる。

「どこまで聞き出せたんだ?」族長も不愉快そうに2人を睨んでいる。

「ほとんどあの虎と同じ話でした。あのゴリラが雪光花の山で何者かに殺された叔母の仇を探していたところ、雌の人族が声をかけてきたと。その人族に唆されて、リーラの異母姉は龍灯の妻として紫竜に嫁入りして龍灯に睡眠薬を飲ませ、リーラは紫竜に恨みを持つ他種族の勧誘をしていたそうですよ。」

「なんで人族の睡眠薬を使ったんだ?」

「龍希様の奥様の言うとおりでした。人族の毒は手に入らなかったので、睡眠薬の大量摂取で時間をかけて衰弱させる方法しかなかったと。紫竜に人族の睡眠薬が利くのか実験も兼ねていたそうです。」竜色は悔しそうだ。


「しかし、黄虎が捕まえた人族は雄ではなかったですか?」龍灯が首を傾げる。

「ええ、そうよ。リーラに接触してきたのはそれとは別の雌だったらしいわ。奴らは一人一人が違う役割を担っているそうよ。今年の春に黄虎に雄の人族が捕まったから、人族の雌がその役割を引き継いで、リーラに勧誘役をやらせるようになったって。でもリーラの勧誘は失敗続きで、さらに異母姉の悪事がばれてゴリラ族から追われるようになり、焦ってワニ領に急いでいたところを孔雀に捕まったそうよ。」竜湖は肩を竦める。

「孔雀はゴリラを保護してたのか?」龍希は孔究を信用した訳じゃない。

「孔雀族の意見は真っ二つに割れていたらしいわ。前族長たちはリーラをワニに引き合わせようとしたらしいけど、今の族長一派はゴリラ族に引き渡せと強硬に反対して、リーラは軟禁状態が続いていたらしいわ。

そこに偶然、あんたが訪ねてきたもんだから、前族長派は紫竜に気づかれたんじゃないかって及び腰になったって。あんたは相変わらず運がいいわね。」

「悪かったですね。でもそれならゴリラとワニは接触していなかったってことですか?」

「リーラとワニはね。でもワニの奥様には接触したはずだって。」


「いや、龍海殿の妻にどうやって接触を・・・あ!あー!まさか!」龍灯は突然大声をあげた。

「うるせ・・・なんだよ?どうした?」隣にいた龍希は思わず耳を手で覆った。

いつもは冷静な龍灯がこんな大声をあげるなんて珍しい。

「思い出しました。再婚してすぐ、本家で元妻が龍海殿の妻と2人で話をしたことが・・・先輩妻からのアドバイスが欲しいとかなんとかで」

「ありましたね。でも本家の侍女(かんし)が居ましたから、悪巧みをしたら報告があがってくるはずです。あの時はそんな話しはなかったですね。」竜色は龍灯の肩を叩いて慰めている。

「ん?じゃあリーラってゴリラが龍海の妻に接触した訳じゃないのか?」

「ええ、接触したのは元妻よ。その目的が何かをさらに詳しく聞き出そうとしたところ、突然何かを飲み込んで・・・」

「結局、収穫なしかよ。」龍希はがっかりした。

「失礼ね。虎の話に信憑性が出てきたじゃない。悔しいけど。」竜湖は不愉快そうに眉をひそめる。

「なんにせよ、ゴリラの件はこれで終わりにするしかないですね。」龍灯の言葉に龍希たちは頷くしかなかった。


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