表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第3章 後継候補編
84/725

出産祝い

「イヤだ!絶対にイヤだ!」

龍灯の話が落ち着いたところで龍賢がろくでもないことを言い出した。

「そう申されましても。黄虎族長の出産ですから、黄虎の谷に出向くのは致し方ありません。先方は龍希様をご指名です。龍陽様、竜琴様のお祝いにかなりの品を贈ってきたのですから、龍希様からも相応のお返しは必要ですし。」

「お返しはいい!なんだって用意するさ。だが虎の巣には行かない。あんな場所に妻子を連れていけるか!」

「ならば龍希様お一人で・・・」

「ああ!ふざけんな!往復3日はかかるんだぞ。妻と一晩だって離れないからな!」

「ええ・・・」

皆、頭を抱えてしまった。


「では、お子さまたちは本家にお預けになり、奥様だけお連れになっては?」

「俺はそれでもいいけど、妻は子どもたちと離れたがらない。」

「しかし・・・いくらなんでも黄虎に説明がつきませんよ。」

「たった3日です。お一人で、ね。」

「嫌だ!」

「龍希。1人で行くのか妻子を連れて行くのか二択よ。どっちか選びなさい!」見かねた竜湖が叱りつける。

「どっちも嫌です!龍賢、お前も担当者なんだから行ってこいよ!」

「無理を仰る。あの族長ですよ!私が行ったって追い返されるに決まっています。こんな老いぼれに虎の巣でけんかする体力はございませんからね!」

龍賢はそう言うと困った顔で龍栄を見る。

「・・・奥様とお子様たちの護衛兼世話役として何人かお連れになっては?龍希殿がいらっしゃればご家族の安全は心配ありませんが、紫竜の後継候補筆頭の遠征ですから、連れが使用人だけでは格好がつきません。」

「おお!さすが龍栄様!」

「というとるが、どうだ龍希?」族長が半笑いで龍希を見る。

龍栄にそう言われては龍希が拒否できないことを分かっているのだ。

「・・・龍栄殿がそう仰るなら。」龍希は渋い顔で龍栄を見る。

「決まりね!奥様と姫様のお供は、竜紗と竜冠を推薦します。」竜湖の提案に2人は笑いながら頷いた。


面白がっているに違いない。


「男は・・・担当の龍賢は確定として、あとは若い方がいいな。龍灯か龍緑はどうだ?」

「嫌です。龍算にします。」

妻のいない2人など冗談ではない。特に龍緑は二度と妻には近づけさせてなるものか。

「今回は龍栄様ではなく私ですか?」龍算はニヤリと笑って龍希を見る。

「龍栄殿は次の子作りにお忙しいからな。」

龍栄との遠征はもうごめんだ。

「それならば龍栄様も妻子をお連れになれば・・・」

「嫌です!」

龍栄は食い気味に拒否した。

「だそうだ。龍算、お前の妻はどうする?」

「巣に置いていきます!」

族長の問いに龍算は即答した。

 龍栄と同じく妻と離れるよりも虎の巣に連れていく方が嫌なようだ。龍希だってどっちも嫌なのに・・・龍栄の奴!

「決まりだな。至急、虎と日程調整せい。」

午前中から続いた会議がようやく終わった。



 10月になり、風が少しずつ寒くなってきた頃、芙蓉は夫に連れられて枇杷亭の庭に出ていた。

「来週、黄虎の谷まで行くから馬車を新調したんだ。龍陽は大分大きくなったし、竜琴も1人で座れるようになったからな。」

新しい馬車は前よりも大きくなっている。今までは4人乗りだったが、新しい馬車は大人が6人ゆったり座れる大きさだ。外の装飾も内装もさらに豪華になっている。

「芙蓉、座り心地はどうだ?気に入らなければすぐ交換するからな!」

夫はそう言うが、ふかふかで座り心地は前以上だ。

というよりも故郷ではロバの引く荷車の固い木の板に直接座っていたので、馬車なんて贅沢すぎて文句があるわけがない。

「ふかふかでとても快適です。」芙蓉がにっこりと微笑むと夫は満足そうな顔になった。

「本当に私や子どもたちもご一緒してよいのですか?今回は黄虎族長のご出産のお祝いなのですよね?私たちはお仕事のお邪魔では?」

「子どもたちは本家に預けてもいいけど、俺は芙蓉が一緒じゃないと行かないからな!」夫は拗ねたような顔になる。


 子どもたちをあの恐ろしい女族長に会わせるのは嫌だ、以前、息子は嫌そうだったし、娘もきっと・・・

でも子どもたちと3日も離れるなんて・・・そっちの方がつらい。9ヶ月になったばかりの娘は芙蓉が見えなくなるとすぐに泣いて転変するのだ。


「あなたがそう仰るならご一緒します。子どもたちも一緒に。」

「そうか!やっぱり芙蓉は最高の妻だ。」

夫が愛おしそうに芙蓉の髪を撫でるので、芙蓉は恥ずかしくなって目を伏せてしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ