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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第3章 後継候補編
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竜色の警告

「それはそうと龍灯様の新しい奥様を探さねば。」龍灯派は必死だ。

「どうだ?竜色」

龍灯の守番はすでに亡くなったので、竜色が世話役を引き継いでいる。

「取引先ですと、白鳥、ワシ、孔雀から縁談がございますが、どれも断った方がよいかと。あとは先方から打診はないものの、象とワニに候補者がおります。」

「象は竜紗の嫁ぎ先だが、どうだ?」

「嫁ぐとしたら族長の孫ですね。前婚で出産経験があり、まだ若いです。象族はワニと違って人族ともめておりませんし。」


「そういえば人族が他種族ともめるなんて初めて聞きました。」

「ああ、そういや、妻の新しい毒見役が言ってたな。人族は取引担当者が死んだから、手付金返して取引をなしにしようとしたって。」

「はぁ?」

龍希の言葉に会場は騒然となる。

「いや、ありえないでしょう。そんなことをすれば、どんな温厚な種族だって怒りますよ。ましてや蛇、ワニ、カモメ・・・野蛮な奴ら相手にそんな無茶な。」

「妻によれば、人族と他の獣人では取引のルールがかなり違うから他種族と取引する担当者は厳選していたらしい。だが、毒見役によると最近の奴隷売買は知識のない担当者ばかりでトラブルが頻発してるんだと。」

「でもそれは人族のミスなのですから、人族の長が責任をとるべき話では?すでに蛇やワニは人族の町をいくつか潰しているようですが・・・」

「やっぱりそう思うよな?でも人族の長は責任をとらないらしい。取引担当者のミスは一族とは関係ないって立場で襲われた町は切り捨てるだろうって妻は言ってたな。」

「ええ?」

みな驚いた顔で龍希を見ている。

龍希だって愛する妻の意見じゃなければ到底信じられない。

「新しい毒見役も同意見だ。現に毒見役の故郷や、その姉妹の町が獣人に襲われても、人族の長は何一つ支援も仲裁もしなかったらしい。

俺の妻が特別なんだ。人族は信用ならない。あの朱鳳の巣でけんかを売ってくるような奴らだぞ。俺たちの常識なんて通用しない。」

 龍希は絶対に人族とは取引しない。朱鳳や黄虎にぼったくられていると分かっていても毒見役を人族から直接調達することはないのだ。


「ああ、確かに。朱鳳は相当な打撃を受けたようですな。」

「あの乱暴者の雌虎ですら、朱鳳の代替わりの儀では大人しくしていたのに・・・黄虎以上に野蛮とは。」

「あの賢い奥様と同じ種族とは信じられません・・・」

「でも妙ですね。人族は他種族嫌いで有名でしたが、それは他種族との取引を異常なほど制限し、他種族との婚姻を一切禁止していたからであって、他種族に喧嘩を売って戦うなど聞いたことがありませんでした。

なのにここ数年で急に人族は奴隷売買を手広く行うようになり、トラブルが起きたら長同士の話し合いもせずに武力衝突で町がいくつも滅ぼされ・・・人族の長はなぜこんな方針転換をしたのか謎です。奥様はこのことについては何か仰っていませんか?」

竜紗は困った顔で龍希を見る。

「知らん。尋ねたこともない。妻は人族の話題になると言葉には出さないが嫌そうなんだ。だからもう面倒事を妻に持ってくるなよ!」

龍希は竜紗を睨む。

「私だって奥様にご負担をお掛けしたくはないのです。というか今回の件は龍希様がちゃんとゴリラの件を報告して下さっていれば防げたんですからね!

私は悪くありません!

それに奥様の安全を守るために人族の状況を把握したいのですが、得られる情報が少なすぎるんです!ですからどうしても奥様にご協力頂くしかないのです。」

竜紗はまた怒り出した。


「お姉様、同族を庇うために嘘をつく妻などいくらでもおります。信用なさいますな。他種族との婚姻を嫌悪する人族なら尚更わが一族に悪意をもっていない訳がありません。

それなのに一族で秘密にすべき龍灯様の件を知らせるなんて!お姉様はあの人族に騙されているのです!」竜色は興奮気味に竜紗に訴えかける。


「なんだと!」


龍希は竜色を睨み付けた。

「俺の妻を侮辱するなら容赦しないぞ!」

龍希の殺気に、回りの男たちが慌てて仲裁に入る。

「龍希様、落ち着いてください。妻たちを疑うのが女たちの役割です。お気持ちは分かりますがおさえて下さいませ。」

「龍希様はもっと警戒なさるべきです。人族の毒見役が奥様と接触することをお許しになるなんて!結託して何を企むか分かりませんよ。あんな危険な奥様は孤立させて厳重に監視すべきです!」竜色は龍希を睨み返す。

「俺の妻が何か俺達を害するようなことをしたか?お前は俺のことが嫌いだから妻にもいちゃもんつけてるだけだろうが!」

今度は竜色は顔を真っ赤にして怒った。


「はあ?拐われてきた他種族嫌いの妻があなたに、一族に悪意を抱いていない訳がないでしょう?なまじ知能が高いがゆえにうまく隠しているだけです!

それでも竜琴様が呪われた時には本性を出したではありませんか?下手すれば呪いが龍希様にも移って死ぬかもしれなかったんですよ!」


「妻が怒ったのは俺が無理やり娘と引き離そうとしたからだ!それに妻は俺を呪われた娘に近づけようとなんてしなかったぞ!

大体、俺は拐ってないって言ってるだろうが!ちゃんと妻に結婚の意思を確認して結納金を払って連れてきたんだ!」


「結婚の意思?奥様は紫竜のことを竜湖殿から聞くまで知らなかったのに?おおかた、人族のふりをして騙して手を出したのでしょう?」

「な・・・」

「竜色!いくらなんでも言い過ぎだ!龍希様は紫竜についての説明が足りなかっただけだ。人族のふりなんてできるわけがない!匂いが全く違うんだから。

なによりあの賢い奥様が龍希様に騙されるわけがない!」

今度は龍海が激怒して竜色を怒鳴る。


「そうですよ。竜色、いくらなんでも龍希様に失礼ですわ。」

「私たちの仕事は妻たちを疑い、妻を盲目的に信じないよう男たちに忠告することです。龍希様の結婚の仕方には問題がありましたが、騙したなんて言いがかりはよしなさい。」

「そうよ。龍希は隠し事はできても、あの芙蓉ちゃんを騙せるような嘘なんて思いつけないわよ。龍希のバカさ加減を知ってるでしょう?」

女たちが口々に竜色を嗜めるのを龍希は黙って聞いていた。


『あっぶねー。今回ばかりはバカ扱いされててよかったぜ。』


 龍希が人族のふりをして妻を買ったことは、妻と龍希の秘密だ。

一族に知られたら・・・無理やり離婚させられるだけでは済まない。


別作品として公開している

紫竜の花嫁の登場人物紹介

を更新しました。

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