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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第24章 豊編
739/764

窃盗犯

~紫竜本家 応接室~

11月のある日、芙蓉は夫の頼みでシュンとモカを連れて応接室に来ていた。


三輪とユリも各々の侍女を連れて来ている。



何事だろうか?



「奥様方、ご足労頂きありがとうございます~」


竜礼と夫はすでに部屋で待っていた。

芙蓉たちが席につくと、龍緑と龍景が大きな箱を抱えて入ってきた。



「実はですね、2日前、睡蓮亭の奥様が本家の裏庭の温室で、龍結のおくるみを見つけてくださいまして~」


「え!?」


声をあげて驚いたのはユリだけど、芙蓉も驚いていた。


まさか芙蓉が贈った刺繍のおくるみだろうか?



「三輪さん、ありがとう。

芙蓉、ごめんなさい。実は本家に来た時、息子が失くしたみたいで・・・」


「ううん。気にしないわ。でも、なんで裏庭の温室に?」


芙蓉の疑問に、竜礼が続ける。



「いえ、龍結のせいではないかもしれません。昨日、龍景と龍韻が温室を調べたところ、奥様方の匂いがついた品がいくつも地面から出てきたのです~

泥がついてお見苦しいですが、侍女たちとともにご確認いただけませんか?」



「え!?」

「ええ!?」


芙蓉は三輪とユリと顔を見合わせた。

意味が分からない。



龍緑と龍景が、芙蓉たちから一番離れたテーブルの上に箱の中身を出した。

全体的に汚い。泥のついた布もある。



「奥様、我らが先に見て参ります。」

怪訝な顔をしてシュンとモカがテーブルに向かい、三輪とユリの侍女が続く。



「あ!」


シュンが早速声をあげた。


「この帽子はまさか!」


シュンがモカに見せているのは泥だらけの麦わら帽子?




「これは・・・おそらく。夏に奥様がお召しになった帽子です。なんでここに?私は確かにクローゼットに・・・」


モカは帽子を受け取って色んな角度から確認している。



「あ!」

今度は三輪の犬の侍女が声をあげた。


「こ、これは奥様のポーチです!なんでここに!?」


「え?どれ?」

三輪が侍女に寄って行った。


「・・・あ~!!そうかも。でも、これは・・・もう何年も使った記憶がないわ。」


三輪にも見覚えがあるらしい。



それから侍女たちによる仕分け作業が始まった。


芙蓉の帽子と三輪のポーチ

は特徴的だったけど、


泥がついて変色している特徴のないハンカチ、何かの瓶の蓋が多数、化粧ブラシなどで、侍女たちでも覚えがなく、龍緑と龍景は、芙蓉の匂いがわずかにするとか言うけど、さすがに芙蓉にも分からなかった。


正直、化粧瓶やブラシなんて沢山ありすぎて侍女たちに管理を任せているので、区別なんてつかない。



「これはユリの匂いがついてるんだよね。」


龍景がハンカチっぽい布を差し出したけど、ユリのフクロウの侍女は首を横にふった。



「これは違います。こんなハンカチは見たことがありません。奥様のハンカチにするならもっと豪華な刺繍があるものに致します。」


「刺繍のハンカチ?でも、私の匂いがついてるのよね?」


ユリは龍景の持つハンカチを覗き込んだ。



「奥様!?そんな汚いハンカチに近づかれては!?」


フクロウの侍女が慌てるけど、ユリは気にしていない。


「触らないから、見るくらいいいでしょ?

聞いてたらクローゼットの中から盗まれた物もあるらしいし。」


「そんな失態あり得ません!私はちゃんと管理しております!」


「は!?独立した巣と違って本家には不届者(ふとどきもの)が多いんです!」

フクロウ侍女の言葉にモカが怒って反論する。


「睡蓮亭はそちらよりも使用人が多いので。奥様のお持ち物もね。侍女一人では管理しきれませんわ。」

三輪の犬の侍女も参戦してきた。



「はあ!?そんなこと言い訳に・・・」



「シューセ、これ、私のハンカチだわ。リュウカの部屋に置いてたの。」



再反論するフクロウ侍女を、ユリが遮った。


「え!?奥様!?そんなはずは!?」


「シューセは知らないわ。これは私が結婚前にもらったの。芙蓉から。」


「え!?」


驚いたのはフクロウ侍女だけじゃない。



「確かそうよね!?藍亀の島に行く時に、芙蓉が若様に持たせてくれた・・・」


ユリが汚れたハンカチを芙蓉に見せてくれた。

泥で汚れて糸の色も分からないけど、芙蓉は自分の刺繍は分かる。


これはユリの言うとおり、あの時ユリのために刺繍したハンカチだ。



「うん。あの時に贈ったものだわ。間違いない。」


「え!?じゃあリュウカの部屋から盗まれたのか!?」

龍景は青い顔だ。


「たぶん、そう。使うのは勿体ないから部屋の棚にしまってたはずよ。」



「私のポーチもずっと部屋にしまっていたはずなのに・・・」

三輪もリュウカの部屋から盗まれたらしい。



「・・・つまりこれは全部盗品か?だが、睡蓮亭や朝顔亭で盗まれた物がなんで本家の温室に?」


初めて夫が喋った。


「さすがに同じ犯人とは思えないですが、盗品を隠したというよりは捨てたと理解した方がよさそうですね。」


龍緑の言う通りだ。



「でも、盗むなら宝石とかドレスとかじゃない?」


「ユリの言うとおりね。転売が目的じゃなさそうだし、なんでこんな物を盗んだのかしら?」


芙蓉は訳が分からない。

芙蓉の刺繍したおくるみもハンカチも転売価値なんてないのに。



「・・・もしかしてどれも芙蓉に関係する物?」



ユリの指摘する通りかもしれない。



「あ!でも、私の香水瓶とポーチは違います。」


「え!?香水瓶?三輪さん、どれのこと?」


芙蓉も疑問に思ったことをユリが聞いてくれた。



三輪は、龍結のおくるみを見つけたきっかけになった香水瓶のことを話してくれた。



「なるほどね。でも、芙蓉も使ってた香水なら、族長じゃなく芙蓉から貰ったって勘違いした可能性はあるわね。」


「でも、ポーチは芙蓉さんとは全くの無関係です。あれは結婚前に私が自分で買ったもので、安物ですから。」


「なら、三輪さんと、私とでは犯人が違うのかしら?私の方は芙蓉から貰った物が盗まれてるから、他の妻の仕業かなって。」


ユリの言う通りかもしれない。

でも同じ獣人が、本家、睡蓮亭、朝顔亭の盗みをすべてしたとは思えない。



「でも、おくるみはともかく、私がユリにハンカチを贈ったことを知ってる獣人なんて限られてるはずだけど・・・」


「芙蓉の言う通りね。シューセすら知らなかったんだもの。」


「あ~いや、あのハンカチには族長と奥様の匂いがついてたから、ハンカチの匂いを嗅げば分かると思う。」


龍景が意外なことを言い出した。



「・・・それなら、三輪が結婚前に持っていた香水瓶とポーチも・・・夫の匂いがついてたはずだから、狙われたのかも。」



「確かに・・・芙蓉の言う通りかも。」


「でも、私の子どもたちが貰ったおくるみは盗まれていません。なぜでしょう?」


三輪の疑問ももっともだ。

それに


「私は竜縁様や龍応様にもおくるみやハンカチを贈ってるけど、そちらは盗まれてないわよね?」


芙蓉の問いかけに夫は頷いた。



「じゃあ、私たち3人を狙った嫌がらせ?にしては盗んだものが地味すぎない!?」


ユリの言う通り、嫌がらせとするのも違和感がある。



「もしも、盗みをしたのが同じ獣人なら、相当限られてきますよね!?」


「芙蓉の言う通りだ。睡蓮亭と朝顔亭のリュウカの部屋に侵入できる獣人なんて・・・本家にいるか?」


夫の問いかけに龍緑と龍景は首を横にふった。



「あの・・・お話し中に申し訳ありません。どうしてもお伝えしたいことが・・・」


ユリのフクロウの侍女が恐る恐る声をかけてきた。


「言ってみろ。」

夫が許可した。


「畏れながら、奥様の結婚前からの持ち物をリュウカの部屋にお運びしたのは、私です。

族長の匂いがついたハンカチを覚えていないはずはございません。」


「・・・ユリ、最後にハンカチを見たのはいつ?」


シューセの言葉に嘘はなかったようで、龍景が尋ねた。


「えーと、勿体ないから一度も使わずに部屋の棚に置いてたはずなの。リュウカの部屋に移動する時はシューセに任せてたから、いつと言われても・・・」


「じゃあ、結婚前に盗まれてた可能性もある?」


「あるかも・・・」


「リュウカの部屋から盗まれたとは限らないってこと?なら話は変わってくるかも。三輪の香水瓶も結婚前に盗まれたみたいだし・・・」


「でも、三輪さんのポーチは結婚後はリュウカの部屋に置いてたのよね?」


「確か・・・そうよね?クーラ?」


「あ、いえ。畏れながら、奥様のお荷物の一部は別の衣装部屋に・・・このポーチは、特に、その、奥様がお使いになるべき物ではないので・・・」


三輪の犬の侍女は気まずそうに答えた。



「衣装部屋としても、侍女以外は入れないでしょ?」


「いえ、睡蓮亭では掃除係と洗濯係は許されております。」


「結婚前は、ユリは朝顔亭の客間に居たので、朝顔亭の掃除係も洗濯係も出入りできましたね。」


龍景が補足する。



「念のため、お前らの使用人から話を聞くか?」


「どうでしょう・・・睡蓮亭(うち)の掃除係も洗濯係もよく入れ替わってますので・・・」


龍緑は嫌そうだ。


朝顔亭(うち)は逆にずっと同じです。睡蓮亭に出入りする使用人はいませんし、本家の奥様のお部屋に近づける立場にはありません。」

龍景も嫌なようだ。



「私の帽子を盗んだのは誰かしら?侍女たちに話をきいてみる?」


カカさんたちを疑いたくはないけど、芙蓉の帽子が一番手がかりが残っていそうだ。



「確かにな。ちょっと行ってくる。芙蓉はまだここにいるか?」


「うん。待ってる。」


「分かった。お前ら、芙蓉に近づきすぎるなよ。」


夫は龍緑と龍景に釘を刺して部屋から出ていった。

2人は芙蓉に何の興味もないのに・・・芙蓉は呆れたけど、昔の夫なら2人を部屋から追い出しているだろうから、かなりましにはなった。



「侍女の盗みなんてカカさんが許すとは・・・」

三輪はよく知っている。


「カカさんたちじゃないわ。でも人手不足で新しい侍女が出たり入ったりしてるの。」


カカは厳しいので、すぐに辞めていった侍女ばかりだけど、帽子が失くなったのは最近なので特定できるかもしれない。

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