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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第2章 夫婦編
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竜琴

「ああ!竜琴様、やっと触れることができます!」竜冠と竜紗は大泣きしながら赤子姿の娘を抱っこしている。

「若様!また大きくなられて!雷気をお食べになりますか?」龍海たちは龍陽を代わる代わる抱っこしながら泣いている。

龍陽は本家でもずっと妻のそばに居たので、男たちが近づくことを龍希が許さなかったのだ。


 龍希もまた泣きそうだ。やっと妻が触れることを許してくれた。それだけじゃない子どもたちに向けるのと同じ優しい眼差しで龍希を見てくれるようになった。

すぐにでも妻と2人きりになりたいが本家にいる間は・・・明日にでも自分の巣に戻りたい。

 だが、商売のたて直し、娘と姪の転変祝い、神殿の巫女の後任に・・・やることが多すぎる。



「奥様!」白猫が近づいてきた。

すぐ後ろに娘を抱いた龍栄もいる。

「龍栄様、奥様、ご無沙汰しております。」妻は龍栄夫妻ににこりと微笑みかける。

「奥様!おくるみをありがとうございます。直接お礼をとずっと思っておりました。竜縁もとても気に入っております。」

白猫がそう言うと龍栄はおくるみから顔だけ出している子猫・・・竜縁を妻に見せている。

「まあ!なんてかわいらしい姫様!」

妻のあれは作り笑顔じゃない。

『そういえば妻はあの白猫が嫌いじゃなかったっけ?まあ今は違うみたいだからいいか・・・』

「龍希様。」竜冠が娘を抱いてやってきた。

「ああ、芙蓉。竜琴を龍栄殿たちに紹介してもいいか?」

「はい。あなた。」

「人族の子はこんな姿をしているのですね!それに竜縁と同じくらい大きい。夫の言っていたとおりですわ。」白猫は興味津々に娘を見ている。

「そういえば竜キン様のキンはどんな字なのですか?」龍栄が尋ねる。


「楽器のことですわ。美しい音色を奏でる琴のように場を和ませ、時には感動すらさせる・・・そんな魅力的な姫君になられます。」


竜冠が答えた。

そういえば・・・龍希も初めて聞いた。

 髪は龍希と同じだが、顔は妻に似ている・・・この子も着物が似合うだろうな・・・龍希は愛おしげに娘の額をなでた。



~客間~

 この日の夜、子どもたちが寝てから、龍希は久々に妻と同衾した。

「もう子どもたちが起きてしまいますよ。」妻はそう言いながらも甘えるように龍希の身体に密着する。

 愛おしそうに龍希を見る瞳も優しい声も久々に触る滑らかな肌も全てが堪らない。

何よりもやっと夫扱いしてくれるようになったことが嬉しくて仕方ない。

龍希は唇を重ね舌を絡めると右手を妻の太ももの間に滑り込ませる。


「ん・・・んん」


すぐに妻の口から甘い吐息が漏れてきた。

それに・・・これならすぐにいれても大丈夫そうだ。

龍希は唇をゆっくりと離すと上体を起こした。

妻がくるりと身体を回してうつ伏せになる。

「ん?ああ・・・」

そういえば、本家に来た時はいつもこうだった。

妻が声を抑えるのは残念だが、子どもたちが起きると面倒だから仕方ない。

 夜明け前に娘が泣いて起きるまで、2人で何度も愛し合った。



~大広間~

 竜琴の転変から2日後、紫竜一族の会議が開かれた。

龍希も龍栄もまだ本家に留まっているが、妻たちは会議に参加できないので、子どもと客間で待ってもらっている。

今夜の竜縁と竜琴の転変祝いは一緒に参加する予定だ。

 今年の1月からシリュウ香の取引は完全にストップしていた。誰もシリュウ香を作る余裕なんてなかった。

取引先からの注文は相当溜まっている・・・


「今回は取引先の変更はないから、各自、溜まっている自分の注文分をこなしてくれ。龍緑は成獣したから本来は担当の取引先を持たせるところだが、病み上がりの上、これから自分の巣を探す必要がある。秋ごろまではシリュウ石採取とほかのサポートに回ってくれ。」族長が龍緑を見る。

「畏まりました。皆様、ご心配ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」龍緑は立ち上がって頭を下げた。


「竜冠の仕事はどうします?」


竜湖が尋ねる。

「ん・・・もう巫女の役目は果たせぬのか?」

「次の子ができるまでは分かりません。竜縁様はもう喋り始めていますので、来年には竜神様のお声が聞こえるかもしれません。ですので、私は竜縁様の後継者教育を始めたいと思います。」

「分かった。頼んだぞ。」

「はい。龍栄様、竜縁様はこれから鶯亭と神殿の往復が始まりますが、奥様から離すとまだ動揺は大きいですか?」

「いえ、昨年の内に離乳しましたし、今はもう自分で一通りのことができます。白猫族は生後10ヶ月前後で親離れするのが普通らしく、日帰りから始めれば竜縁も妻も大丈夫だと思います。」 


『まじで!?』


龍希は驚いた。

 龍希の息子は1歳をすぎてからやっと離乳し、今年の夏には2歳になるのにまだ妻にべったりで、妻を見失うとすぐに転変するのに・・・


同じ胎生でもこうも違うのか!?


「竜琴様はどうです?お身体は竜縁様と同じくらいですが・・・」龍賢が尋ねる。

「奥様によれば、人族の子がある程度しゃべれるようになるのは3歳頃からで、母親と離れて一日神殿で過ごすことができるようになるのは10歳を超えるだろうとのことです。」

竜冠の答えに龍希は白目をむきそうになった。


『そんなにかかるのか?』


一族の皆も驚いている。

「白猫族が早すぎるのよ。まあ、だからあの熊が推薦したんだけど。あんたも龍希を見習って早く次の子作りなさい。」竜湖がにこりと龍栄を見る。


 相変わらず叔母は耳が早い。別に隠す気もないが。

龍希は次の子を急いでる訳じゃない。

龍栄に早く息子が生まれてほしい。


ただ、やっと妻が愛情を向けてくれるようになったのだ。求めずにはいられない。



 それに・・・父は今回の件で族長としての信頼を失った。龍陽を大切に思ってくれるのはいい、だがその理由が問題だ。

龍陽が産まれたからって、妻たちや取引先の失った信頼が戻る訳がないのに・・・父は相変わらず何も分かってないのだ。

母もこんなふうに失望して傷ついたのだろうか?



「龍希様!聞いておられますか?」

龍海の声だ。

「聞いてない。」

「でしょうね。龍栄様、すみませんがもう一度お願いいたします。」

「え!すみません。今度はちゃんと聞きます。」龍希は慌てて龍栄を見る。

藍亀(あいき)の族長が竜縁の転変祝いに島にご招待下さったのですが、お2人目が産まれたら龍希殿のお子さまたちの祝いもすると約束したので一緒に来てほしいと申しております。」


「藍亀の島に?そんな約束した覚えはないです。」


「朱鳳の代替りの際に藍亀族長が提案しておりましたね。龍希様がノーと仰らなかったので約束したことになったのでは?」龍海が龍希を見る。

「はぁ?知るか!向こうが会いたいのは龍栄殿の子だろ。」

「黄虎からも招待が来ておりましたね。龍希様はこちらに行かれますか?」

龍賢のせいで嫌なことを思い出した。


「・・・亀の先約があるからと断ろう。」


虎より亀の方がましだ。それに妻とまだ海には行ったことがない。

「畏まりました。では藍亀と日程調整いたします。妻も喜びます。」龍栄は嬉しそうに笑う。



~大広間~

 その晩の宴会は龍陽の時よりも賑やかだった。

今回は竜冠も参加し、龍流もリュウレイ山から出てきて、一族勢揃いだった。

驚いたことに妻たちの出席率もよかった。

 龍希の妻に続いて白猫も出産し竜の子が3人になったことで獣人の妻たちは今後の身の振り方を探っているらしい。

 後継候補の龍算、龍灯にもいい加減、子ができてもらわないと困る。龍算は鹿と再婚して一年以上経ったのだから、もう妻に執着してるはずだ。

龍灯の再婚ももうすぐだ。


だが、それよりも龍緑だ。

龍希のいない時に妻に接触するなんて

それもよりによって妻についた龍希の匂いが薄れている時に!


早く龍緑に結婚してもらわなければ。

妻に変な気を起こされては困る。

龍希はまた頭を抱えた。


『あーめんどくせえ!妻のことだけ考えていたいのに!』


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