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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第7章 巴衛編
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ゴーライの話

 9月の終わり、龍景と龍算はカラス本家に来ていた。

4日前、カラス族が水洞町の解放軍の巣を襲撃したらしい。

当然、約束が違うと抗議したのだが、カラス族長は、


紫竜族長からはワシの雛を連れ去った()()の情報提供を依頼され、

龍景にはゴリラが話せる状態になったら知らせるとの約束をしただけで、

今回の襲撃先にワシの雛を連れ去った人族がいるなんて情報はないし、ゴリラはまだ話ができないから約束違反なんてない


とかぬかしやがった!

 そして昨日、そのゴリラがようやく言葉を発するようになったが買うか?との連絡があった。

カラス族は初めからゴリラの話には用がなかったわけだ。騙された!くそ!


「すみません、龍算様。俺のせいでこんな・・・」

「そう落ち込むなよ。お前だけのミスじゃない。ワシの雛を売ったのが人族じゃなかったと分かった後も、カラス相手に要望を修正しなかった族長も悪いよ。

それにゴリラから有益な情報が出てくるかもしれないしね。」龍算はそう言って龍景の背中をポンポンと叩いた。



~紫竜本家 族長執務室~ 

「んで2日前にカラスから買ったゴリラから話は聞き出せたか?」龍希は龍算と龍景に尋ねる。

「はい。結論から言いますと、ゴリラは解放軍の仲間ではありません。ただ、知らずに手伝いをさせられていたそうです。」龍算はそう言って、ゴーライという名のゴリラから聞き出した話の報告を始めた。


 ゴーライは、5歳の時に母親と死別し、その後、父親が龍希様とその奥様に喧嘩を売って、雪光花の山で返り討ちにされたと分かった後、ゴリラ族長の判断でゴリラ領から永久追放となりましたが、それに同情したゴリラ商人に匿われ、近くの人族町に住む革加工商人に雇われたそうです。仕事内容はその人族商人のボディーガードや雑用だったそうです。

ゴーライは17歳で成獣になった後もその人族の下で働いていたそうです。今年の夏前、人族の商人からワシの雛を渡され、殺して埋めて来いと命じられたのですが、自身の経験から雛を殺すのは忍びないと、かつて自分を助けてくれたゴリラ商人に託したそうです。

 その後、一足先に水洞町に向かって出発していた人族の商人を追いかけたのですが、カラス領に入ったところでカラスたちに監視・尾行されていることに気づき、ゴーライは理由が分からなかったものの、先回りしてジャガー領で人族の商人と合流しようとカラスを撒いてジャガー領に入ったそうです。

おそらくゴーライについていたワシの雛の匂いにカラスどもが気づいたのでしょう。

 そしてジャガー領のある山で、紫竜の匂いがついた雌カバに会ったというのです。


「なに!?もしかしてワシに誘拐された龍景の元妻か?」龍希は思わず大声が出た。

「いえ。残念ながら、龍雲の元妻カバのようです。先代カバ族長の娘で、ヌーに嫁いでいたところを誘拐されてきた。」

「なんだ。そういや、カバの希望でジャガー領に放してやったな。」龍希はがっかりした。

龍算は報告を再開する。


 山で偶然出会った龍雲の元妻カバから、

「ゴーライにはワシと人族の匂いがついているが、その匂いを落としてからジャガーの町に入った方がいい。」

と助言されたというのです。ゴーライがその理由を尋ねると、カバは、

「春先に雌竜が産んだ熊の子の死体がジャガー領で発見され、紫竜の依頼でジャガー族は熊の子を誘拐したワシと人族を探している、ゴーライがその仲間だと誤解されたら大変だ。」

と教えたそうです。

 ゴーライは驚愕したそうです。というのも、春先に人族の商人の命令で、熊の子の死体を見知らぬ人族の雄たちとジャガー領の山に埋めたそうで・・・ただゴーライはそれが雌竜の子だとも、ワシと人族が誘拐したことも知らなかったそうです。これは嘘ではなかったです。

 ゴーライは父親の仇うちをする気もなければ、紫竜うちに喧嘩を売るつもりも毛頭なかったそうで、ジャガー領の町で人族の商人と合流すると、その人族を問い質したそうです。すると、その人族は

「今年の初めから解放軍と名乗る人族たちと取引を始め、解放軍たちは獣人が買った人族の奴隷を解放をしている。あの熊の子も人族の奴隷を買った獣人の子どもだ。」

と答えたそうです。

 その人族は紫竜うちのことは知らなかったそうですが、ゴーライは紫竜うちに喧嘩を売った人族の手伝いをしてしまったと焦り、その人族の商人を殺して、水洞町で人族の商人が会う予定だった解放軍たちも殺そうと、単身、水洞町に向かったそうです。

 町の外の森で解放軍の人族の1人と出会い、町の中に案内してもらおうとしたところで森の中に潜んでいたカラスたちに襲われ、意識を失い、目を覚ますと紫竜うちに引き渡すと言われて、自殺を図ってまた意識を失い、次に目覚めたら自殺防止に身体を拘束されていて、私と龍景に引き渡されたので観念したそうです。

 ゴーライは水洞町の中のことは知らないそうなので、カラスどもが襲った町の中にある解放軍の巣は、一緒に襲われた人族から聞き出したのでしょう。



「なんだ、そりゃ?」龍希は拍子抜けした。

「なるほど、ゴリラの回復がやけに遅いと思っていたら自殺未遂をしていたとは・・・」一緒に聞いていた龍海は呆れている。

「てかなんでそんなに怯えてんだ?解放軍のことを知らずに、人族の商人に利用されたって話に嘘はないんだろ?」龍希は訳が分からない。

「龍希様に喧嘩を売ったゴリラの息子ですから、信じてもらえないと思ったそうです。」龍算は困った顔で答える。


「ええ!?てか俺、ゴリラの雛の処分までは求めてねえぞ。確か・・・」


「はい。龍希様のゴリラ事件については、雛はおろか成獣していたゴリラの家族についても、ゴリラ族に何も求めておりません。ゴーライの家族を処刑したのはゴリラ族長の独断です。ただ、ゴーライは相当、龍希様に怯えています。

まあ、同じく奥様に手をだそうとしたカモメは族滅させましたからね。龍希様は獣人たちからは相当恐れられているのですよ。」

「カモメは例外だ!妻は死ぬとこだったんだ!」龍希は藍亀の島でのカモメ事件を思い出して怒りに震えた。


「まあまあ、族長。しかし、ゴリラの話からも解放軍の手がかりはなしか・・・」龍海は族長を宥めながらため息をつく。

「あ、いえ。ゴーライはゴリラ領近くの人族町にある解放軍のアジトを知っているそうです。

そこには、解放軍の人族たちだけでなく、イーロというワシが拐ってきたと言う雌マムシと雌カバがいたそうです。」

龍算の報告に龍希たちは驚いた。

「雌マムシと雌カバ!?まさかワシに拐われた龍灯の元妻と龍景の元妻か?」

「その可能性はあります。」

「よし!龍算、龍景!そのアジトに行ってこい!今度は皆殺しにするなよ!」龍希は2人に命じる。

「今度は雷は使いません。族長の執事たちがしたように人族の手足を折って生け捕りにしてきます。」龍算はそう言って、龍景と部屋を出ていった。


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